教員推薦図書展示コーナー
2023-07-03 12:10 | by 岡田(主担) |
7月に入り、一学期もそろそろ終わりです。学校生活に慣れてきた新一年生は「新」が頭から取れ、2・3年生も9月の文化祭の準備にクラス全員で動き出してきています。生活の中に「附高生として、どんな本を読んだらいいのかな?」という気持ちが出てくる頃です。本校の図書館は授業との協働、生徒のリクエストの充実を目指して選書を行なっています。職員会議でも司書教諭から全教員へ、推薦図書の積極的な参加を依頼しております。必ずしも、担当の教科や専門性だけにこだわらず選書をしてもらい「必要な本を必要な生徒へ」をスローガンに推薦図書を募ります。今回はそんな教員推薦コーナーを紹介します。
教員推薦図書
『フィンチの嘴』ジョナサン・ワイナー 2001 早川書房 ISBN:4-15-050260-9 488.99ワ 原タイトル:The beak of the finch ピュリッツァー賞(1995年)
『生物進化を考える』木村 資生 1988 岩波書店 ISBN:4-00-430019-3 497.5
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上記の二冊は「特別講座 生物の進化と多様性 東京大学名誉教授 伊藤元己氏」を開催の際に関連書籍として推薦されました。本校は行事が多いので事前学習としての選書にも力を入れています。
『猿橋勝子』清水洋美 2021 汐文社 ISBN:978-4-8113-2737-2 289.1サ
音楽授業でのブックトークで第五福竜丸を取り上げています。ビキニ環礁の水爆実験で降った「死の灰」を分析し、核兵器実験の放射能汚染に警鐘を鳴らした女性科学者して理科と音楽との教科横断の資料となりました。
『新・動物記7』豊田 有 2023 東京大学学術出版会 ISBN:978-4-8140-0451-5 782シ7
全シリーズでの継続購入依頼を受けています。現地調査の面白さや難しさを、動物研究者のリアルな視点を通して楽しく読めます。生物学のみではなく現地の文化や生活を学ぶことのできる本です。本校では地理の探究型学習の資料としても活用しています。
『人文地理学事典』人文地理学会 2013 丸善出版 ISBN:978-4-621-08687-2 290.36シ
地理は図書館授業で探究型の学習を毎年行います。各自で決めたテーマの定義をきちんと理解するなどネットでは調べられない専門的な内容になっています。
『政治的なものの概念』 カール・シュミット 2022 岩波書店 ISBN:978-4-00-340302-0 311シ
先日図書館授業に来た教員から「教科書の文中に複数引用として出ているので購入してほしい」と依頼を受けました。教科書の内容からの推薦は教員ならではのもので、司書としては大変ありがたい情報です。
『翻訳できない世界のことば』エラ・フランシス・サンダース 2016 創元社 804サ
英語科は常に英語圏以外の国への複数の視点を持ちながら英語教育を行なっています。翻訳できない世界中の言葉が詰まった本です。
『20カ国語ペラペラ』種田 輝豊 2022 筑摩書房 ISBN:978-4-480-43818-8 807タ
以下のような推薦文をいただきました。
「私が中学校の時に出会った本です。この本に出会って、言語の世界に憧れました。著者と同じ留学機関で高校留学をし、筆者と同じ大学に入学しました。とっくに廃版になっていたのですが、昨年復刻されて本屋で見た時には嬉しくて涙が出ました。語学に関心がある人もない人もぜひ手に取って欲しい本です。」
語学に興味のある生徒が、夏休みの長期貸し出し図書として早速借りて行きました。
『三島由紀夫論』平野啓一郎 2023 新潮社 ISBN:978-4-10-426010-2 910.26ヒ
印刷室で作業中に、英語の教員から「新しい三島由紀夫の本が出ましたよ。三島由紀夫を違う側面から解読できると思います」と推薦を受けた本です。三島由紀夫は全集も所蔵していますので、合わせて活用してほしいと思っています。
『よむうつわ』ロバート キャンベル 2022 淡交社 ISBN:978-4-473-04514-0 791.5キ
「本を読んでよかったので是非生徒に勧めたい」との言葉と一緒に紹介してもらった本です。本校は高校では珍しく、美術以外に工芸の授業も同時に行なっています。日本の工芸を深く理解できる一冊です。
以上は教員推薦図書の一部ですが、多様な資料が様々な観点から選ばれた事がよく分かります。高校図書館の難しさは専門性のみにとらわれてはいけない点だと日頃から感じています。仮に専門だけでいいのであれば「この本の関連教科は本校にはありません」で選書から除くことも可能かもしれません。専門性の高い大学に入る前の高校だからこその選書の難しさが、学校図書館にはあります。学校に関わる多くの人の視点を生かす事が、学校図書館を育て、資料を構築しているいるのだと改めて理解できます。
(東京学芸大学附属校高等学校 岡田和美)