企画展示『視覚障害いまむかし』

2023-06-09 11:34 | by 長友(主担) |

 今月は横浜市の第一あざみ野小学校の学校司書の近江弥穂子さんに、企画展示『視覚障害いまむかし』について紹介していただきました。

 横浜市では国語は光村教育図書の教科書を採用していますが、3年前の教科書改訂で4年生の「だれもがかかわりあえるように」という単元がなくなってしまいました。この単元があるころは、4年生以上は「点字」も「ルイ・ブライユ」もみんなが知っていることでしたが、今の高学年は「ルイ・ブライユ」を知っている児童がとても少なく、同時に点字や手話に関する図書資料もあまり動かない状況でした。別件でご縁のあった鶴見大学の元木先生とたまたまそんなお話をしたことがきっかけとなり、視覚障害について子どもたちに知ってもらいたいと『鶴見大学文学部元木研究室と有志一同』のみなさんと一緒に今回学校図書館で「視覚障害いまむかし」という企画展示を行うこととなりました。
 展示期間は10日ほどでしたが、そのうち1日だけ元木先生と有志の学生さん3人が3Dプリンターをもって当校にいらして授業に入ってくださいました。詳細については授業事例(A0427)のほうに掲載していただいています。

1,視覚障害に関する年表

 学校図書館廊下には元木先生が作成してくださった視覚障害に関する年表を掲示しました。小学生にはちょっと難しい内容でしたが、それぞれの出来事を①学校・教育について ②点字図書館について ③公共図書館について という視点で色分けしてみよう!とすることで、年表を読んで色分けにチャレンジしてくれました。


2,展示した図書資料などとその紹介・クイズ

(左から
国語四上かがやき(2013年から導入された光村図書の国語の教科書)
復刻版尋常小學國語読本巻八(1933年から導入された現在の小4に相当する学年用)
新訂中等國語讀本巻二(1906年から導入された現在の中学2年に相当する学年用)
点字タイプライター
点訳本『指と耳で読む』新書
点字図書館 録音図書郵送用ケース)


 図書館内では、鶴見大学文学部元木研究室と有志一同のみなさんが選書してくれた図書資料と、公共図書館から点字つきさわる絵本を中心に教職員貸し出しして、展示しました。それぞれの本を読んで答えられるクイズを鶴見大学文学部元木研究室と有志一同のみなさんが作成してくれました。このクイズは、なんとなく本を開いてみようという気持ちを促すのに効果があったと思います。

 また点字つきさわる絵本は自校の蔵書にほとんどなかったこともあり、こちらは子どもたちに大人気でした。同じタイトルの絵本と点字さわる絵本や、同じタイトルの文庫本と大活字本を並べて展示できたので、児童が比較しながら楽しむ姿もみられました。特に点字つきさわる絵本については、企画展示終了後も、読みたいという児童の要望が多かったので、自校でも購入したところ、予約がたくさん入っている状態です。

3,山内図書館視覚障がい者向けサービス
 また、横浜市立山内図書館での視覚障がい者向けのサービスについてポスター展示もしました。
 当校の児童は歩いていける距離に横浜市立山内図書館があります。
 実際に、こちらでお借りした点字キットを、学校図書館で使ってみた後に、個人で山内図書館に借りにいった児童もいました。

















4,3Dプリンター作成物

 鶴見大学文学部元木研究室と有志一同のみなさんがルイ・ブライユの棺が納められているパリ・パンテオンを中心にパリの建築物などを、それから当校を中心とした2キロ四方の地図を3Ⅾプリンターで作成してくださいました。左側の写真は2年生が、建築物に番号をつけて、適当に並べ替えて、目を瞑って触ってそれが何番の建築物かあてているところです。展示しているだけで児童が自分たちでいろいろ考えて楽しんでいました。また、3Ⅾ地図は大人気で、自分の家を探す姿がたくさん見られました。

5,視覚障害いまむかし 企画展をやってみて
 今回の展示は、それぞれの学年に応じて「視覚障害」について児童が知るきっかけとなりました。点字を習いたいという児童や、点字版を買いたいという児童もいました。
 企画展示中はもちろん、展示終了後もしばらく、点字版で点字表をみながら点字を打つ児童が絶えませんでした。また、点字に関する図書資料が動くようになりました。今回、学校図書館で企画展として展示できたことで、1年生から6年生まで広く見てもらうことができ、視覚障害に関連する事柄に児童のアンテナが高くなった気がします。学校図書館が出会いの場となり、それぞれの見方考え方が広がっていくといいなと思います。今後も興味関心が続くよう、しかけや工夫をしていきたいです。
 展示した図書資料については授業事例のほうでブックリスト貼付しています。

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