伝えたい!「知ってほしい」と思う人たちのこと!
2011-12-12 23:18 | by 中山(主担) |
12月に入って、ある書店の店頭で見つけた1冊。
『「つなみ」の子どもたち 作文に書けなかった物語』〈森 健著 文藝春秋社 2011.12 ) ISBN:9784163746807
これは、『つなみ 被災地のこども80人の作文集 文藝春秋8月臨時増刊号』(森 健編著 文藝春秋 2011)の続編ともいうべき本で、作文を書いた10人の子どもたちの背景やその後、親のまなざしや親子の生きる姿を描いている。
ラストは、吉村昭 『三陸海岸大津波』に、昭和8年の大津波について、「私は、ほんとにひとりぽっちの児になったのです。」と作文を載せていた牧野アイさん(90歳)への取材である。
「知ってほしかった」というのが、牧野アイさんも、今回作文を書いた子たちの共通の思いである。
「人生でこんなにも全速力で走った事はないくらい無我夢中で走り続けた」という長編の作文を書いた東松島高校の鈴木啓史君、兄弟の中でもいちばん作文など書きそうにない彼が「まだまだ書ける」言っていたと母がいう。「学校を辞める」と言いだしたり、全国からの反響に困惑して恥ずかしがったり…。「不良息子奮闘記」―作文後の驚きの行動の変化を母が語っている。
学級で、鈴木君の作文を読んであげた担任もいる。読み終わった時、拍手が起こった。眼にうっすらと涙を浮かべる子もいた と言っていた。
「メッセンジャー」として、教師も語り、伝えるべきだと思う。図書館でも伝えてきたし、これからも伝えたい。
今年、学校図書館では震災の「思い」を、どれだけ伝えることができたろうか。
はじめ表紙だけを記憶したこの本を、後でやはりその日にほしくなって、探すことにした。大学内で見つからず、ある駅前の書店に行ったが、まったく震災・原発関連図書が見当たらない。そんな馬鹿なと思って、3度店内をめぐってみたが、やはり…どこにもない。夏までは東日本大震災関連の本が、入り口近くに地方新聞の縮刷版まで置いてコーナーを作っていたにもかかわらずである。びっくりしたまま、もう1軒の本屋にまわってやっと入手した。あとで聞けば、前者の書店は震災コーナーは撤去したのだという。
なかったことにしよう…というのか。そんな本屋が存在すること自体に驚きを禁じえなかった。
(東京学芸大学附属小金井小学校司書 中山美由紀)