震災から何を学ぶか―実践紹介
2011-06-08 12:10 | by 中山(主担) |
【1.いまわたしにできること、授業】
春、多くの方々が、この災害に対して何ができるのかを探っていたのではないでしょうか。
4月、「いまわたしにできること、授業。」と千葉大教育学部附属中学校の井上創教諭は、理科の選択授業5時間で、放射能を取り上げました。
「自分の身の回りの放射線&放射能の状況に対して、避難するかどうか、水を飲むかどうか、野菜を食べるかどうか、計測・報道されたデータを評価し、自分で判断できるようになってほしい。生徒たちにそんな願いを込めて、授業を組みました。」
1.4/20 原子の構造
2.4/25 原子の崩壊と放射線
3.4/27 原子力発電の仕組みと放射能
4.4/30 シーベルトとベクレルとは、また、人体への影響は?
5.5/9 原子核反応の利用・放射線の利用
放射線医学総合研究所や東北電力のwebサイト、動画を教材資料として提示しながら行われた〈学び合い〉の授業概要は、 左記のファイルをご参照ください。 中学理科放射線の授業5回.pdf
また、放射線被害を伝え方として井上教諭が共感できるという「0.02%の嘘」と題された文章「単に嘘と呼んでしまうにはあまりにも希薄で、かといって知らないふりができるほど小さくはない何か…」を配布されています。http://j.mp/eAI90M
授業を受けた全員が自分の行動を決め、『学び合い』。「テーマは共感。友だちがどんなふうに考え、どんな結論を得たのか…相手をの気持ちや考えを聞くことに集中…お互いの決断を尊重することを望みました。親子で結論が違いましたと報告をくれた生徒もいました。」
この授業を受けた中学生たちがその後どのような興味関心を持っていったのか、その後をお聞きし、実践事例としてアップさせていただこうと思います。
【2.毎小 僕のお父さんは東電の社員です】
さて、よみきかせを日常としている私ですが、4月のスタート時には、3月11日の前と後では世の中の見え方が全く違ってしまって、多くの災害や戦争を描いた文学や絵本の世界が以前よりも二段も三段も深くなったように感じていることを低学年にも高学年にも語ってから、金子みすゞや谷川俊太郎の詩を読みました。地震や原子力関連の本も、展示していないものでも、やはり多くの子が借りていきます。6年生には『ここが 家だ―ベン・シャーンの第五福竜丸』(アーサー・ビナード 集英社 2006年)を読んだりしました。
5月18日には毎日小学生新聞の1面に取り上げられた小6の「僕のお父さんは東電の社員です」という手紙を読みました。3月27日の毎小の「ニュースの窓」に載った「東電は人々のことを考えているか」(元論説委員 北村龍行)に対する反論の投書です。原発はいるのかいらないのか、不要というなら今後のエネルギーはどうするのかをみんなで話し合うことが大事だと訴えています。毎小ではその話し合いの場を提供し、皆さんの意見を募集しています。すでに、5月30日、31日、6月1日の紙面で、反響を特集しました。http://p.tl/Wqk4 http://p.tl/5Ncc
附属小金井小では1クラスをぬかし5・6年生全部に読み、行事の都合で読めなった6年2組(担任:吉永杏里教諭)は、学級で取り組み投書しました。香川県でも取り組んだ学校があります。(毎日jp.支局長から手紙・香川 2011年6月6日 地方版 ) http://mainichi.jp/area/kagawa/news/20110606ddlk37070382000c.html
毎日新聞5月19日夕刊にも取り上げられ、中学校・高校でも話題になりました。
国語の教員から「意見文」のお手本のような手紙だと感想をいただきました。中・高校の論文指導でも使えるかと広報した図書館もあります。
「会社」とは何か、東電の特殊な状況、会社の倫理、エネルギー問題などもとりあげられるでしょう。教職大学院の先生も関心を示したくださいました。
私は、「情報リテラシー」の観点から、テレビや新聞のニュースは受け取るばかりではなく、自分の意見を言い、こうして取り上げてくれることで、今度は発信者になって、また多くの人と意見をやり取りできる、つまり情報は受けたり、発信したりする双方向の時代なのだと伝えました。発信者として、自分の意見を持つことが大事なのです。
今後の毎日小学生新聞の展開を楽しみにしたいと思います。
追記:6/20、21に反響第2弾を掲載。附属小金井小6年2組と横浜市立汲沢小6年2組の意見が掲載されました。附属小金井小は図書館の案内から担任の先生とクラスが活発に活動してくれました。続いて、節電についての意見を毎小は募集していました。朝日小学生新聞は「被災地のみんなへ 阪神の「小学生」から」の3回連載(6/15)がスタート、6/21は5/15の家族を亡くした記者への子どもたちの手紙に応える記事が載っていました。 関連記事:「週刊現代」6月11日号 http://kodansha.cplaza.ne.jp/
【3.ブログの記事から読み比べ】
高校2年生から国語の授業で、近代以降の人間観の変化をテーマに読解の授業を続ける筑波大学附属駒場中・高等学校の澤田英輔教諭は、高3のはじめの授業で震災関連の以下の2つの文章を読みくらべて導入としました。
中島岳志 保守派の私が原発に反対してきた理由 2011.3.30 http://p.tl/ilSo
池田信夫 自動車や石油火力は原発より危険である 2011.3.31 http://p.tl/G0KQ
観点は以下の3つ
○交通事故で人が死ぬ点については二人とも問題視していないが、「交通事故で人が死ぬとわかっているのに車の速度制限を低くしないこと」は、どのように道徳的に正当化可能なのか。それとも不可能だと考えるか。
○保守主義の立場から原発に反対するとはどういうことか。保守主義とはどういう思想か。右翼と左翼の本質的な違いは何か。
○原発が交通事故よりも単位エネルギーあたりの死亡者が少ないことを以て原発のリスクを低く見積もるのは、どこまで妥当な推論なのか。推論に穴はないか。
配布資料には、その後の読書のすすめも掲載されています。110415合理性モデルの限界.pdf
【4.展示・その他】
静岡県の私立桐陽高等学校、鳥取県立米子南高等学校、千葉県袖ケ浦市立昭和中学校の展示風景の写真をいただきました。
また光村の小学国語教科書に津波(5年生、6月)が取り上げられており、出版社としてはwebサイトにコメントをだしています。 http://p.tl/Pc-G
静岡県私立桐陽高等学校
この写真は、4月に「強くたくましく生きよう!」というブックトークで紹介した本も展示されています。国際交流もさかんな学校の生徒として知っていてほしいと、ブックトークでは阪神淡路大震災、チェルノブイリ、国際紛争の話題、生きることには笑いも必要などの視点で選書し、最後は宮本輝の『森の中の海』の希望でしめました。(浅井みゆき 談)

本の表紙の館内掲示の著作権については、日本書籍出版協会の左記webサイトを参照してください。http://www.jbpa.or.jp/guideline/readto.html > http://www.jbpa.or.jp/ohanasikai-tebiki3.pdf
鳥取県立米子南高等学校
震災から3ヵ月、「新聞が伝える東日本大震災」として被害状況、福島原発、復興への課題の3つの視点で展示し、関連書籍やWebサイトの紹介もしました。また、県立図書館の展示資料を借りて「茨城県の被災状況を知るコーナー」を設け、ガイナーレ鳥取の選手が被災地へ激励の言葉を書いたフラッグや、被災した鹿島アントラーズについての資料を合わせて展示しました。職員朝礼で告知し、生徒への呼びかけお願いし、教員向けには専用掲示板で関連Webサイトを紹介しました。(宇田川恵理) 14震災事例米子南高201106.pdf
千葉県袖ケ浦市立昭和中学校では、
『朝日新聞縮刷版 東日本大震災特別紙面集成2011.3.11~4.12』など報道機関のまとめたものも、食い入るように見ている生徒もいるとのことでした。以下の展示は生徒図書委員がおこない、写真のコメントは委員がそれぞれの思い間を書きました。論文やレポートテーマで震災関連を取り上げる生徒も多く、宮城に家族で出かけた子もおり、自分で見たり聞いたりしたことをまとめようとしています。千葉県内の被害を取り上げようとしている子もおり、異動した旧職員が津波被害にあった旭市にいて、図書館を通じて連絡をとろうとしています。レポートの仕上がりを待って、2学期に発表会を行いたいと思っているとのことでした。今後レファレンス等、学校図書館でもアンテナをはっておく必要があり、活動としては1年を待つといろいろ出てくるのでないかと司書・和田幸子さんからアドバイスをいただきました。
そういわれれてみれば、4月はじめに附属小金井小で紹介した、朝日小学生新聞(2011.3.31)1面の「小学生発 Pray for Japan」に、4年1組(担任:吉野希代子教諭)の作品が載ったのは5月17日のことでした。 http://prayforjapan.tomosen.net/ > http://prayforjapan.tomosen.net/gakugeidai4-1/
今後も事例・活動の募集を続けたいと思います。よろしくお願いいたします。
追伸
6月18日 第65回全国社会科教育研究協議会において、5年「水産業のさかんな地域」にて、小倉勝登教諭(附属小金井小)が、宮城の漁業が震災で受けた打撃から復興する未来を考える授業を行いました。また、鎌田和宏准教授(帝京大)の「社会科と学校図書館」のワークショップでは情報カードの整理」から自らの考えを導くことの作業を参加者が体験しました。これらも、追って、事例としてお知らせしたいと思います。
(東京学芸大学附属小金井小学校 中山美由紀)