生き物を飼うということ

2022-10-11 11:16 | by 富澤(主担) |

先月の「展示」で、2年生の探究の授業への支援の様子をお伝えしましたが、図書の時間には、探究学習を意識した作品として『クワガタクワジ物語』(中島 みち∥〔著〕、筑摩書房、1974)の連続読み聞かせを試みています。子どもたちが学んでいることに関連した読み聞かせは、これまでもやってきたことではありますが、今回は、長い物語、それも、ノンフィクションジャンルのもので、2年生が自分で読むには少し難しいかな、と思うものに挑戦してみました。

 

太郎君は、小学校2年生の夏に、ずっと憧れていたコクワガタの雄を、一度に3匹も手に入れました。3匹のなかでも、特に元気が良く、個性を強く感じられるのが「クワジ」でした。クワジと過ごした3年間のできごとを、ノンフィクション作家である母が記録、太郎君本人が、挿絵を描いています。

今、2年生が取り組んでいるのは、一人ひとり、自分で何か動物を飼育、観察し、その生き物について深く知ることを通して、人が生き物にどのような影響を与えているのか、生き物と関わる責任についても考えることを目指した探究学習です。

この作品は、ちょうど2年生が学んでいることにぴったりの内容だと思いはしたものの、子どもたちがついてくるのか正直少し心配でした。でも、蓋をあけてみると、物語の開始時点での主人公の年齢が自分たちと同じ2年生、クワガタ虫に憧れる気持ち、やっと手にしたうれしさなども良くわかるようで、太郎君に寄り添って、成り行きを見守っているようです。「クワジの続きを読みます」と言うと、「やった!」という声が、どのクラスでもあがり、楽しみにしてくれている様子が見えるので、ホッとしています。

5回ほど読んで、本の半分にいくかどうか、といったところ。まだまだ先は長いのですが、少しずつ、最後まで継続する予定でいます。自分自身の体験と、太郎君の体験を重ねたり、比べたりしながら、物語を通して、生き物の命に向き合う経験を、より深めてくれるのではないかと期待しつつ・・・。
                        
                                    (東京学芸大学附属大泉小学校 司書 富澤佳恵子)


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