空想の友だちはいますか?

2022-03-07 14:30 | by 金澤(主担) |

 「ただ読んだだけでは、絵本の世界を共有できないこともあるんだなあ」と気づかせてくれた絵本を紹介します。
 「ジェシカといっしょ」ケビン・ヘンクス(作)小風さち(訳)徳間書店

 ルーシー・シムスには、兄妹もペットもいません。でもジェシカがいるので寂しくありません。ジェシカは、ルーシーの想像上のお友達です。遊ぶ時もお出かけするときも寝るときも、とにかく何をするにもジェシカと一緒です。ルーシーは、それで満足していました。ルーシーは、5歳になり幼稚園へ行く日がやってきました。ほかの子どもたちは、友だちと遊んでいます。ルーシーは、一人ぼっちです。でも声をかけてくれた子がいました。なんとその子の名前は「ジェシカ」だったのです。ルーシーは、とうとう本当の友達を作ることができたのです。 
 初めのクラスに読んだとき、このジェシカの存在を理解できない子が多くいました。「透明な子なの?」「お化けなの?」というつぶやきが多かったのです。そこで、次のクラスに読むときに「お人形に名前を付けて遊んだことない?」「自分だけの秘密のお友達を作って遊んだことない?」というように、みんなの経験を思い出させてから読み聞かせをしてみました。するとジェシカの存在を受け入れながらお話の世界を楽しむことができる子が増えました。1対1(親子など)で読むときは、会話しながら読むことで絵本の世界を共有することができるかもしれませんが、集団で読む際には工夫が必要な時もあると感じた絵本でした。 
 この絵本を読んだときに「ふしぎなともだち」S・ジェームズ(作)小川仁央(訳)評論社の絵本を思い出しました。
              (東京学芸大学附属世田谷小学校 司書 金澤磨樹子)

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