よみきかせの可能性

2023-05-08 14:08 | by 松岡(主担) |

 これまで感染症対策を考慮しながら、学校図書館の利用についてもさまざまな工夫がされてきたことと思います。本校でも読書スペースを広く確保するために、読み聞かせに利用していた場所にも机を設置して、密になる読み聞かせは行わず、読み聞かせをする時は大型モニターと書画カメラを使用してきました。
 
 昨年度(2022年度)、2年生の図書の時間では定期的な読み聞かせはしていませんでした。何かできないかと考えていたところ、11月の読書月間や学期末に担当の先生の声かけで、いつもと違う図書の時間を楽しんでもらおうと実施した読み聞かせを紹介します。





                『これはのみのぴこ』
                      谷川俊太郎/作 和田誠/絵 
                      サンリード 1989年

 「これはのみのぴこ」「これはのみのぴこの すんでいるねこのごえもん」…とページをめくるごとに増えていく「つみかさねうた」の絵本です。書画カメラでモニターに大きく映し出し、先生と司書二人で1ページずつ交互に読んでいきました。
 この絵本はすらすら読めてしまうよりも、だんだん増えていく言葉に息が続かなかったり途中で言葉を間違えたりすることも楽しめる絵本です。また、交互に読むことで、リレーをするようにバトンタッチして、二人の読みをつなげていく感じも楽しい読み聞かせになりました。








『ふたりはいつも』
アーノルド・ローベル/作 三木卓/訳
文化出版局 1977年

 先生との掛け合いが楽しかったので、その感じを物語でもできないかと相談したところ、2回目の読み聞かせが実現しました。
 2年生の国語の教科書に「おてがみ」が掲載されていることもあり、がまくんとかえるくんのやりとりを二人でできないかと「おちば」というお話を選びました。モニターは使わず二人で朗読劇のように読み聞かせを行いました。それぞれがまくんとかえるくんで役割分担をし、がまくんのセリフと動きの描写部分を先生が読み、かえるくんのセリフと動きの描写部分を司書が読みました。
 「おちば」はがまくんはかえるくんの庭の落ち葉を、かえるくんはがまくんの庭の落ち葉を、それぞれ本人には内緒できれいにしてびっくりさせようとするお話です。
 がまくんとかえるくんのキャラクターや、すれ違いの様子がイメージしやすいように声の調子や読むスピードを練習する中で調整していきました。
 最後の一文「そのばん あかりをけして それぞれが おふとんにはいったとき かえるくんも がまくんも しあわせでした」だけは二人で声を合わせて読むようにしていたのですが、先生のアイデアで「かえるくんも」は司書だけが「がまくんも」は先生だけが読むような工夫もしました。一人だけでは思いつかない発想に助けられ、短いお話ながらたっぷりと物語を子どもたちと楽しめる時間になりました。






『こどもあそびうた』
谷川俊太郎  山田馨/編
童話屋 2018年

 学期末にまた何かやりましょう!と声かけしていただき「きりなしうた」で遊びました。
 「きりなしうた」は「しゅくだいはやくやりなさい」「おなかがすいてできないよ」と掛け合いのようになっている詩で、最後に「まだしゅくだいがすんでない」で終わるので最初の「しゅくだいはやくやりなさい」につなげることができる(=きりがない)楽しい詩です。
 この詩は1行ずつ交互に読むことにしました。交互に読むうちに掛け合いの様子が楽しくなり、色々なパターンできりなしうたを繰り返し読むことにしました。
 1回目は詩を朗読するように少し淡々と読み、「まだしゅくだいがすんでない」の後間髪を入れずに「しゅくだいはやくやりなさい」と2回目を、今度は親子のバトルのように抑揚をつけて、3回目はスピードアップしてテンポよく、4回目は子どもたちが一緒に読めるように、模造紙に詩を書き写したものを黒板に貼り、モニターにも映し出して、手拍子も入れながらみんなで読みました。
 みんなで声を合わせて読む「きりなしうた」は、こんな風に詩で遊べるんだ、と私自身予想していない展開になりました。

 今回の読み聞かせは一人で行うものとは異なり、読み聞かせのスタイルも王道のものではないと思いますが、こんな方法もあるんだな、という可能性の一つになれば、と紹介させていただきました。

(東京学芸大学附属小金井小学校 司書 松岡みどり)

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