今月の学校図書館
こんなことをやっています!
東京学芸大学附属竹早中学校メディアセンター
2022-03-03 13:11 | by 中村(主担) |
東京学芸大学竹早地区では、平成13年度より本格的に幼小中連携教育研究が行われています。敷地内にある小・中学校の校舎は繋がっており、メディアセンターは小学生と中学生が同じ空間を共有しています。このため蔵書数は2校分となり、小学生が中学校の小説を読んだり、中学生が探究学習で小学校の図鑑も活用したりと、個々の成長やニーズに合った柔軟な利用が可能となっています。一方で、空間の共有によって生じる課題も抱えている現状があります。
メディアセンターが使えない授業での学習支援がどのようにおこなわれているか、空間の共有で生まれる子どもたちのつながりなど、中学校側からご報告します。
《メディアセンターが遠いので・・・》
小中の校舎はつながっているものの、メディアセンターは小学校側の建物にあります。ですから中学生が通りがかりに来館することはできません。図書館や本が大好き!という生徒はそれでも昼休みになるとよく来てくれるのですが、そうでない生徒にいかにアプローチしていくかは常に悩むところです。腰までの低さで奥行きがあるので、文字情報をじっくり読むには不向きのガラスケース。新しく入った本や映像化小説、現在の特集などを、本の表紙や映画のチラシといったビジュアル中心に展示しています。
登下校や教室移動で生徒はよく通る場所なので、時折足を止めてチェックしている人の姿を見かけます。また、下校指導の際などに先生方もご覧になるようで、先生からの反応をいただけることもあります。
《授業での利用》
★共有空間ゆえに・・・
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ブックトラック数台に図書資料を大量に積み込み、授業のたびに教室前のロビーまでゴロゴロ移動させます。時には長机を複数台セットし、一部の本は平置きで並べることも。1学年4クラスがすぐにロビーにアクセスできる教室配置になっているため、複数クラス同時授業の時もロビーにブックトラックを配置しておけば、どのクラスの生徒も教室を出てすぐに本が利用できます。司書はノートPCを持ってロビーに常駐し、レファレンスサービスをおこないます。
ただ、探究が進んでいくとどうしても準備した資料だけでは足りず、「もっと詳しく知りたい」「〇〇についての本はありますか」という要望が出てきます。そのたびにメディアセンターへダッシュして、急いで資料を取りに行くこともしばしば。その間は司書がロビー不在となるため他の生徒への対応ができません。メディアセンター館内で書架の間をじっくりブラウジングする機会がないと、生徒自らが必要な図書資料を探す力を培うことも難しいと感じています。
本校では昨年度から、㈱カーリルの「COVID-19:学校向け蔵書検索サービス」の無償提供を受け、生徒が自宅や個人の端末からメディアセンターの蔵書を検索できるようになりました。これにより生徒は教室にいながら学校の蔵書を探すことができます。本来はメディアセンターで、図書資料に囲まれて授業をすることが理想ではありますが、これらのサービスをうまく使って教室での支援を補っています。
また、一人一台端末が配備されてから、従来は紙媒体で配布していたパスファインダーをデジタル資料にしてMicrosoft Teamsで生徒に提供できるようになりました。ウェブサイトのリンク集も掲載しているのですが、デジタルにしたことで情報の追加が容易にできるという利点があります。生徒の選ぶテーマは多岐に渡るため、はじめから全員に対応したリンク集を作るのは難しいので、単元1時間目の時点では公的なサイトを中心に基本的かつ信頼のおけるウェブサイトのリンク集を配信します。その後、具体的なテーマが決まっていくにつれて個々の生徒から質問が増えるので、それに応じて関連サイトをリンク集に追加していきます。毎時間更新することで常に新鮮な情報を提供でき、生徒も新たなリンクが追加されることでまた違った方向からアプローチするなど学習に広がりが生まれるようです。
デジタルパスファインダーはアクセスしやすいようQRコードを作ってブックトラックや教室の黒板にも掲示しておくと、生徒は端末から読み取って利用することもできます。端末が自由に使えると図書資料と併せて支援の可能性も広がるので、様々なやり方を試していこうと思います。
★館内の授業では・・・
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図書館には情報カードや学習支援のリーフレット、ワークシートなどが常備してあり、必要に応じて活用されています。学習に合わせて複数のメディアを使い分けるために、情報カードは「図書」「ウェブサイト」「新聞」などのツールごとに6色の色分けがしてあります。
本校では全校生徒が自分の探究テーマを持って1年かけて学びを深めています。そのため、個々の興味に対応できるよう、可能な限り生徒のリクエストに応えて本を購入するようにしています。生徒によっては3年間同じテーマで探究を続けたり、ある生徒の探究テーマが他の年の別の生徒のテーマになったりすることもあり、長い目で見れば同じ本が繰り返し活用されることになります。ランガナタンの図書館学五原則のひとつ「図書館は成長する有機体である」のように、まさに生徒の興味が蔵書を作り、メディアセンターを成長させていると言えるでしょう。
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《図書委員会の活動》
コロナ禍で、委員会活動の制限も多い中、少しずつではありますが図書委員が企画したイベントも実施できるようになりました。![](./../uploads/journal/10661.jpg)
また、数年前から国立大学附属の中学校数校と合同で交流会を開催しており、今年度は筑波大学附属駒場中学校図書館を訪問して生徒同士の交流を図りました。他校の図書館を見学したり、図書委員活動の様々な様子を聞いたりして、生徒はたくさんの刺激を受けたようです。
《つながりが生まれる》
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中学生たちが絵本を手に盛り上がっていたり、課題の基礎知識を得るために子ども用の分かりやすい資料にあたったりと、小学校の蔵書が自由に利用できるのはとても贅沢でありがたいことだと感じます。
また、中学校の蔵書や、授業のために用意した資料に、小学生が興味を示して手に取っている様子もたびたび見られます。身近なところにちょっと大人向けの本が揃っていることで、小学生たちの興味の種もたくさん蒔かれているのかもしれません。そこから育った芽が、中学に上がって個人研究のテーマになっていくのも素敵だな、と思います。
共有する空間をお互いにうまく活用しながら、竹早ならではのつながりを大切に、子どもたち・先生方みんなにとって居心地のいいメディアセンターを目指していきたいです。
(東京学芸大学附属竹早中学校 司書 中村誠子)