今月の学校図書館
こんなことをやっています!
埼玉県立松伏高等学校
2025-12-01 13:18 | by 長友 |
今月の学校図書館は、訪れた人がみな口をそろえて「展示がすごい!」という埼玉県立松伏高等学校です。司書の玉井さんは、今年、図書館総合展で行われた「L-1グランプリ」に「あたま+」というチームで出場し、見事グランプリを受賞されたアイデアマン。学校図書館も隅々まで工夫が詰まった楽しい空間となっています。L-1グランプリ2025最優秀チーム「あたま+」インタビュー|Libraryfair」もご覧ください。(編集部)
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埼玉県立松伏高等学校について
埼玉県立松伏高等学校は、埼玉県の東の端、松伏町にある共学の公立高校です。
普通科のほかに普通科情報ビジネスコース、音楽科があり、2学科1コースが設置されています。町内では唯一の高校で、学級数は1学年が6学級、2・3学年は各5学級で、計16学級。生徒数は約500人です。
音楽科専用校舎として、2階建ての音楽棟「シンフォニア」(写真左側)があるのが特徴です。音楽関係の部活動も盛んで、今年度は吹奏楽部が「第31回西関東吹奏楽コンクール高校Bの部」に出場し、合唱部が「第80回関東合唱コンクール・高等学校部門」に出場しています。
また、2021年4月に県内では4例目となる高校内分校として埼玉県立越谷西特別支援学校松伏分校が開設され、各学年2学級ずつの計6学級、48名が在籍しています。松伏高校の施設を共用しているため、分校の生徒・教職員も松伏高校の図書館を利用することができ、ときおり分校の授業を図書館で行ったり、分校の生徒が本を借りに来ることもあります。
ぱのらま図書館ツアー
ここからは、本校の図書館をツアー形式でご紹介していきたいと思います。
本校舎は5階建ての特別教室棟と4階建ての管理棟兼普通教室棟が東西2本の渡り廊下でつながったロの字型をしており、
図書館は特別教室棟の5階にあります。普通教室棟は4階までしかないので、5階に上がる階段の踊り場には、案内看板やオープンサインを設置しています(左写真は東側階段の踊り場です)。
東側階段を5階に上がると、屋上への階段をふさぐようにホワイトボードがあります。
ホワイトボードには、毎月「お題」を貼っており、生徒のコメントを募集しています。
写真は11月のお題「冬休みに行きたい場所」。毎月、このくらいコメントが集まります。
ここから右に進むと渡り廊下があります。

向かい側の普通教室棟は4階までしかないので、5階の渡り廊下は袋小路。スペースがあるので机を置いて、自由に使えるようにしています。
友だちと喋ったり、勉強したりお弁当を食べたり、いろんな形で滞在する生徒がいるので、壁にはその日の新聞の1面記事が見えるようにしてあります。

さらに右に行くと、図書館の入口です(右のドアは司書室)。今はクリスマスの装飾がしてありますね。
個人的にゴチャゴチャした感じの装飾が好みなので、ドアや壁には、写真やポストカード、書籍に挟まっていた宣伝用のリーフレットや帯など、雑多なものが貼ってあります。

図書館は東側からも西側からも入ることができるようになっていますが、いちおう、こちら側が正面で、反対側は裏口という認識です。
なんとなくにぎやかで、楽しそうな雰囲気になっているといいなと思っています。

正面入口のドアを開けると、こんな光景が広がっています。明るく見晴らしの良い図書館なので、「ぱのらま図書館」というニックネームになりました。左手には雑誌やマンガなどの軽読書が楽しめる「くつろぎコーナー」があり、右手の目立つ場所には「新着本コーナー」と映画原作本やマンガのノベライズ作品などが置かれた「メディアミックス」のコーナーが見えます。写真では見切れていますが、左の窓際には「特集コーナー」もあります。
特集コーナーで今展示されているのは、ネットワークテーマ展示「道」。埼玉県では県内を17地区に分けて高校図書館協力ネットワークを整備しており、本校は草加・三郷・八潮・吉川・松伏の近隣10校で構成されている「東部Cネットワーク」に参加しています。
この展示は東部Cネットワークに所属する司書がテーマに沿って選書したブックリストをもとに各校で展示を行うという取り組みで、学期ごとにテーマを変えてこうした展示を行っています。
東部Cネットワークでは、こうした展示だけでなく、業者委託による月1回の相互貸借用巡回車の運航や年3回のネットワーク会議、年1回のネットワーク内研修など、様々な取り組みを行っており、一人職場である私たちが困ったとき、最初に頼れる仲間として機能しています。


正面入口から右手を見るとこんな感じになっていて、文庫本用書架が立ち並び、その奥には「絵本コーナー」があります。生徒の描いたイラストが置いてあったり、レゴブロックが置いてあったり、盆栽が置いてあったりします。

「新着本コーナー」の前の道は、館内のメインストリートです。裏口からも出入りできるので、図書館を通り抜ける人も多く、そういった人は必ずここを通ります。
メインストリートに面している棚や机には、新着本の他にも、人気のあるマンガや、映画の原作本、料理の本など、通りがかりの利用者の目を惹くような本が並んでいます。

また、カウンターもこのメインストリートに面しており、正面・裏口どちらから来る利用者も、図書館内を通り抜ける場合には、必ずカウンターの前を通るようになっています。



料理本が並ぶ「料理コーナー」のあたりから、「つくる」をテーマにした「LIBRATORY」が始まります。上の写真は各種文房具や工作用の道具と、折り紙、画用紙、毛糸など、手芸・工作に使える道具や材料をまとめた棚です。この棚に続いて手芸、工作、イラスト、創作や映像制作に関する本など、「つくる」に関わる本が並んでいます。
こちら側には、趣味的で、楽しそうな感じの本が集まっているので、「つくる」に関する本に続く形で、「ボドゲコーナー」や旅行のガイドブックなど同じく趣味的で楽しい感じのするものを一緒に並べています。
ボードゲームは館外貸出していませんが館内では自由に遊べます。また、『コラージュ川柳』や『学校図書館謎解きゲーム』など、イベント的な展示もこちら側の机の上に広げて置いておくことが多いです。
最近は司書が海岸で拾ってきた石なんかも飾ってあり、たまにそういうのが好きな生徒が反応してくれます。



友だちとお喋りしたり遊んだりする利用者と、勉強したり静かに本を読んだりする利用者が、自然と住み分けられるといいなと思って、明るい南側は楽しそうでにぎやかな雰囲気に、逆に北側は落ち着いた静かな雰囲気になるようにコーナーを配置しています。
(実際のところは、生徒は気ままに座るので、目論見が上手くいっているかは微妙ですが……)

北側はカウンターが近く、進路や勉強に関する本など、まじめな感じの本が並んでいます。
窓際にあるカウンターテーブルは自作したもので、窓に向かって座るので館内が多少にぎやかでもあまり気にならず、勉強や読書に集中できるかなと思って設置しました。

中央には、通りがかりの人の目を惹くように季節によって展示を広げたりしています。(写真ではツリーを飾っていますが、七夕の短冊を吊るすための笹を飾ったり、ハロウィンの物を飾ったり……)。
授業利用が入ることもあるので、机の上のものはどれもすぐに片付けられるようにしています。



裏口前は、櫛型に高書架が並ぶエリアです。基本的にはNDC順に単行本が並んでいますが、所どころ別置コーナーが挟まっています。
棚の側面には椅子が置いてあり、ひっそりここで本を読んでいる生徒も見かけます。
また、司書がいないときや、司書に貸出を頼みたくないとき、自分で貸出ができるようにセルフ貸出用ポストを用意しています。

右の写真が裏口です。裏口を出ると、正面入口と同じように机が並んでいます。
また、雑誌付録としてついてきたポスターや、「メディアミックスコーナー」で天井から吊るしていた映画チラシなどを掲示し、好きなものがあれば自由に剥がして持って行って良いことにしています。
リサイクル図書のコーナーも、こちら側にあります。





西側の階段を下ると、いろいろポスターが貼ってあり、東側と同じように案内看板とオープンサインがあります。これで、東から西まで、図書館を通り抜けられました。
これで、ぱのらま図書館のツアーはおしまいです。如何でしたでしょうか。特に何かすごい授業支援をしていたり、独自の実践をしていたりするわけではありませんが、利用者にとって「おもしろくて、やくにたつ」図書館であることを願って、日々、試行錯誤しています。すこしでも参考になることが含まれていれば幸いです。

(文責 埼玉県立松伏高等学校 司書 玉井敦)



















