今月の学校図書館

こんなことをやっています!

大分県 九重町立ここのえ緑陽中学校

2026-01-29 14:56 | by 宮崎 |

 今月は、大分県九重町立ここのえ緑陽中学校の図書館について、学校司書の飯田干美さんにご紹介いただきました。「本屋さんのような図書館にしたい」との言葉通り、たくさんの工夫と愛がいっぱい詰まったすてきな学校図書館です。(編集部)


 九重町(ここのえまち)は、大分県の西部にあり、阿蘇くじゅう国立公園の九重山(くじゅうさん)や耶馬日田英彦山国定公園の山々に囲まれた高原の町です。また、国内最大の地熱発電所があり、12もの特色ある源泉が湧く、温泉の町です。

ここのえ緑陽(りょくよう)中学校は、町内4校の中学校が統合し、2013年(平成25年)、町唯一の中学校として開校しました。

 

図書館は生徒玄関正面に位置し、扉がなく吹き抜けになっている開放的な空間です。

 

 

 

 

 

 

←入口廊下からの様子

 

←上階から見下ろした館内

←窓際のコミック・絵本コーナー

 2021年4月にこの中学校に勤務することになった当時は、私自身が8年ぶりの中学校現場だったので、最近の中学生の読書傾向を知らないことや、向き合い方に不安がありました。また、コロナ対策のためマスクは必須アイテム、似た感じのヘアスタイルに制服ということもあり、生徒の顔がわからないことが、より一層不安をかきたてていました。そのため、年度初めのオリエンテーション時、全員にアンケート記入をお願いすることにしました。項目は、以下の3点に絞りました。

①今までで好きだった本やお気に入りの本があればおしえてください。

②こんな本が読みたい!図書館においてほしい!という本があればおしえてください。

③その他、意見や要望があれば、書いてください。

「無記名でもいいよ」と伝えていたにもかかわらず、全員が名前を書いて出してくれたことが、大きな励ましになりました。枠外にまでたくさんの書名を列記している子、好きなアニメを書いている子、「スポーツカーの本を入れてほしい」「マンガを貸出OKにしてください」「○○(書名)の続きを入れてください」「恋愛ものが読みたいです」など、生徒一人ひとりの興味関心を少しだけ知ることができました。マンガについては、当時の管理職や図書館担当の先生と相談して、貸出可能に設定変更していきました。卒業前にその生徒が、「休み時間だけでは到底読みきれなかった」とお礼を伝えてくれました。読みたい本の書名や作家名を書いてくれていた生徒にはもちろん、アニメの小説版がないか検索したり、スポーツカーや流行りの恋愛系の本を探したりして、受入直後にまず本人に「本が届いています」メモを届けるようにしました。 そのことから、本についての会話が増えていき、生徒の「読みたい」に近づけるようになっていったように思います。2024年度は、一人当たりの年間貸出冊数の平均は43冊でした。

 自然はあふれていますが、人口は1万にも満たない過疎の町。町内には高校も大型書店もありません。生徒たちがワクワクして来てくれる、新鮮で魅力的な本が並ぶ「本屋さんのような図書館」にしたいと行っている取り組みのいくつかを紹介します。

1.季節のグッズ・かご

 館内の飾りは、古さを感じないもの、ちょっとクスっと笑えるものを意識しています。友人がくれたフィギュアやかごがいつの間にか集まりました。かごは、柔らかな空間を演出できるので、いたるところに置いています。書架内のコーナー分けに使ったり、文庫と単行本で所蔵しているシリーズ本の一体化に使ったりと、配架にも一役買っています。

 

    

2.ショートストーリーのコーナー

 部活や生徒会活動など、思った以上に多忙な中学生。長い本は苦手だし、借りる時間がない…と言う生徒に向けて、人気のショートストーリーをシリーズごとに格納し、入口の近くにまとめました。頑丈なお菓子の箱などに滑り止めシートを敷くと、背表紙を上から見下ろす状態で配架でき、生徒が探しやすいようです。

 

3.本に引き寄せたい!

 図書委員のおすすめ本や、特別展示など期間限定の平置き展示に長テーブルをよく使います。手作りした展示台に本を一冊ずつ平置きし、手前に本の情報やあらすじを書いたものを貼るパターンが多いです。展示台は、折り紙や包装紙等をラミネートしたものを段ボールに貼り、向こう側に高さを出して傾斜をつけると特別感が出ます。展示面に「貸出中」のカードを貼っておくと、借りられて本がなくても、存在感はあります。
また、ブックカバーフィルム等の空き箱に折り紙などを貼り、フィルムでカバーリングしたものをいくつか作っています。積み木のように組み合わせ、立体的に本を展示したり、書架の最下段の展示やブックトラックの奥行きを調整したりと、いろいろ便利です。「借りられます」のメッセージも必ず添えます。

 

4.コンクリート柱の囲み掲示板
   むき出しのコンクリートが冷たく感じ、掲示のしにくかった図書館入口にそびえる2本の柱。町の施設なので、「柱そのものに傷をつけず取り外し可であれば」という条件で許可をいただいたので、柱を囲む形での四面掲示板を考えました。段ボールで縮小版の見本を作り提案。無事に許可が下り、設置できました。面の全てを有孔ボード仕立てにしたことで、ディスプレイネット等を利用し、チラシや記事と併せての本の展示もしやすくなりました。柱の一つは新着本や話題の本、もう一つの柱は常設展示用にしました。 柱と掲示板の境目にはフェイクグリーンを添わせています。秋には落ち葉系のガーランドも加えます。生徒たちは、移動時や昼休みに柱をぐるぐると周りながら本を選んでいます。

 

5.貸出期限票を栞に

 以前はコピー用紙に返却日を記入したものを渡していたようでしたが、挟まったまま返却されている本がとにかく多く、中には何枚も挟まったままの本もありました。このことから、個人用の貸出期限票を考案。栞としても使えるようにと、ニューケンパスに印刷して手渡すことにしました。個人名ではなく、学年・クラス・出席番号のシールを貼ったので、挟み忘れて本を返却しても、個人情報は守れます。返却期限がわかる栞のおかげで、期限を守ろうと生徒の意識も高まり、貸出冊数の増加にもつながっていったと思います。

 来年度は、上部に紐代わりのマスキングテープを貼る予定です。→

 

6.新着本の紹介

 館報は、媒体や配布後の取り扱いに心配があり、ここ数年は発行していません。その代わりに新着本の表紙を縮小コピーして紹介しています。書名・著者名・出版社名を記入したシールも併せて貼ります。掲示に使うのは、プラスチック段ボールやラミネートしたカラーケント紙。何度でも貼り替えができ、軽量なので、可動式ミニ掲示板として何枚も用意しています。 また、内容がわかるようなあらすじカードも欠かせません。受入後は大量に作る必要があるので、ダブルクリップを使って傾斜の出る簡単な形にしています。

 

7.スキマの面出し

 書架の空きスペース以外にも館内には意外と面出しできるスキマがあります。特に文庫は背表紙からの情報が少ないので、面出しして惹きつけたいと思いました。司書室周りの桟が約6~8㎝あったので意外とイケそうと思い、置いてみたらぴったり。ただ、そのままでは落下が心配なので、大量にとっておいた2穴リングファイルの巻き込み防止板を細工し、専用の面出し架を作ってみました。
 また、文庫架の側面も使えそうと思い立ち、クリアファイルをカットしてみたら、これもなかなかいい感じです。

 

8.ブックリストあれこれ

 着任したころ、話題になっていた「GoTo読書」の取り組みに乗っかってコーナーを作りました。その際、あらすじ紹介をするためにブックリストを作ろうと思い立ち、「☆旅のしおり☆ GoTo読書」 を一緒に展示。その後も、所蔵されている「コミック」や、「○○文庫帖」(※○○は本校出身の作家さん。ご自身が読んでいた本を寄贈していただいたので著作と併せて置いています。)を作成。
 また、生徒から質問されたことから、シリーズごとに分けて一覧にした「東野圭吾作品」のブックリストを、その生徒と館内用に作成しました。リスト作成は、司書自身の勉強にもなっています。

 

    小学校勤務時代に出会った生徒の一人。いつも本を読んでいたのに、中学生になってから、あまり借りなくなっていました。「最近、読んでないの?」と尋ねると、「今は勉強時間に割いています」という返事。作文も得意だったことから、目にした作文コンクールを勧めてみたところ、興味を持ってくれました。その後、その生徒は読書にも作文にも積極的に取り組むようになり、中三の時に受けた地方新聞のインタビューに下記のような文章を寄せてくれていました。
【中学生になる頃、「勉強に力を入れたい」と読書から遠ざかる時期があった。中2の時、司書の教師に哲学エッセーコンテストへの出品を勧められ、『14歳からの哲学 考えるための教科書』(池田晶子作)を読んだ。自分はなぜ勉強をするのだろう―。考えを深めてみると、読書を通して得られる知識の意義深さに気づいた。再び本のページをめくるスピードが上がり、今では1週間に4、5冊のペースで読書を楽しんでいる】
 本の力はすごいです。著者のメッセージを自分のこととして受け取れる生徒個人の感受性も素晴らしいですし、本と生徒を繋げるこの学校図書館のお仕事がたまらなく好きです。今年も、夏休みの読書感想文にと手渡した本を、読書に苦手意識のあった生徒が繰り返し読んでいる姿や、中三の生徒が「リクエストしていいですか」と入学以来、初めて聞いてきたので、「読みたい本が見つかったの?嬉し~」と言ったら、「はい!」と笑顔を見せてくれた姿など、それぞれのタイミングで読みたい本、大切な本に出会っている場面に立ち会えることが何よりの喜びです。 

(大分県九重町立ここのえ緑陽中学校 司書 飯田干美)

 

 


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