今月の学校図書館

こんなことをやっています!

東京ウエストインターナショナルスクール訪問記

2026-05-16 11:12 | by 村上 |

東京ウエストインターナショナルスクール訪問記

 

成蹊大学非常勤講師 前東京学芸大学附属小金井小学校司書 中山美由紀

 

東京ウエストインターナショナルスクールは、八王子駅からバスで12分。下車して西に向かうと建物が見えます。赤や青を使った看板が目立ちます。
以前、大阪の関西学院千里国際中等部高等部の図書館にいらした青山比呂乃さんが、現在はこちらのインターナショナルスクールのLibraryを整え運営していらっしゃるので見学しに行ってきました。

 

 

1.学校について

東京ウエストインターナショナルスクール(以下TWISと表記)は、幼稚園から高校まで全部で約200名という小さな学校ですが、IB(国際バカロレア)のPYP(3歳から12歳の教育プログラム)認定校であり、中学部・高等部は探究型カリキュラムを少人数クラスで展開しています。

高等部は、米国と日本の単位制高校との提携で単位認定もありますが、今年度からTWISの高校カリキュラムがさらに整備されています。


TWISでは、PreK(2歳)から12年生(PreK2歳児クラス,Kindergarten3-5歳児クラス,Grade1-12学年)まであり、ICT教育やAIリテラシー教育も、STEAM教育との融合もデザインされる一方、自然豊かな環境下に農園もあり、ガーデンという科目を担当する専任教員もいて、教育・自然体験学習も豊富なようです。その日に収穫したカブが、ご自由にどうぞと玄関に置いてあって、私もいただいて帰りました。

英語と日本語のバイリンガルを育てる言語教育も特徴で、日本語科の授業以外は、原則すべて英語で授業が行われています。

各学年の日本語科の授業は、日本語ネイティブの「国語クラス」と初めて日本語を習うまたはそれに近い子どもがいる「日本語クラス」と2クラスに分かれており、日本語科は日本語教授法を収めた教員が担当しています。「国語クラス」では日本の国語教科書を使い授業しますが、「日本語クラス」は語学学校の入門または初級クラスのような感じで、あいうえおから始め、なるべく日本語でやり取りしながら日本語の音や会話に慣らしていきます。

図書館では、英語のLibraryTimeが毎週1コマあって、英語の読み聞かせと英語でのやり取りをするライブラリアンである青山さんの授業になります。ほかに日本語科の授業の一環として、G1から始まる国語クラスのG1G2の国語クラスは、図書館に隔週(日本語クラスとG3からの国語クラスは月に1回)でやってくるので、読み聞かせや紙芝居などを日本語で行ったりし、日本語の本はその時間にだけ借りることができます。

図書館ではK5(5歳児クラス)からG2までは、通常のLibraryTimeは、英語だけで行っています。この学年は、特に英語だけを使うことを奨励しているため、日本語を使う時間は日本語科の授業の時だけ、と分けています。

読むこと・聞くことはKindergartenからの読み聞かせに始まり、G1からはLibraryのノートに文字や絵を書いて記録することを、始めます。これは、のちのCitation(引用)の学びにつながっていきます。ほかに日本の年中行事や習慣などの文化も伝えられるプログラムが展開しています。これは、IBの中で、学校のある国の文化を学ぶこと、各自の母語や文化を尊重する、という姿勢があるためでもあります。

下の写真は、Libraryの時間割(LibraryTime)です。

(白抜きはG1-8の毎週来る通常の各クラス。ピンクは日本語科の授業で、隔週か月1回。黄色は、幼稚園の3クラス。これは30分の読み聞かせ(K3はこれのみ)に加えて英日を貸し出す(K4)英語の本だけを貸す貸出(K5)となります。青色の中高は、G7・8は英語のLibraryTimeがありますが、G9-12はLibraryを使う枠だけ確保していて何時も来るわけではありません。Band AはG7-8、Band BはG9-10、BandCはG11-12という授業クラス分けも今年からです。中高の日本語科は、教室が足りず、場所だけ使っている時間と、私のLibraryTimeをやる時間がランダムにあります。緑色の「shelving」「cataloging」は、Libraryのハウスキーピング用にしてあるコマで、実際のところ、配架と発注と受入をどうしても必要なところから。ほかにも、LTの生徒のノートブックの整理もやっているうち、帰宅時刻になります。あと職員会議が週1程度入ります。青山比呂乃さん談)

2.G1:6歳の初めて日本語を学ぶクラスがやってきた(日本語科の時間)


見学時、ちょうど小1に相当するG1のはじめて日本語を学んでいる子どもたちが、日本語科の教員に連れられてやってきました。

青山さんは前回読んだ本『りんごりらっぱ』(あべけんじ 福音館書店 2024年)の復習をかるくしてから、『そらいっぱいの こいのぼり』(羽尻利門 世界文化社 2022年)を手に取りました。めくりながら英語で瞬間の抄訳での読み聞かせをし、「おじいさん」「おばあさん」と指さしました。

子どもたちの何人かが「おじさん」「おばさん」と言うと、「No. おじいさん、おばあさん」「Grandpa,Grandma」とやり取りし、こいのぼりの泳ぐ場面では指で示しながら「こ・い・の・ぼ・り」としっかり発音を繰り返し練習しました。


発言したいときは「手を挙げて」とか色鉛筆を借りたいときには「貸して」は日本語教員が日本語でフォロー。子どもたちの何人かは「てをあげて」をつぶやき、何人かは、それはお構いなく発言し、でも叱られることはなく、ゆったり進みます。


「こいのぼり」の「ぼ」は「ぽ」ではなくて点が二つの方だとさりげなく青山さんが修正しました。

ノートが配られ、今日のLibraryの時間を子どもたちが記録します。


「こいのぼり」とだけ1行目にこどもたちはひらがなで書き、その下に絵本の印象に残ったことを絵にしていきます。こいのぼりだけでなく、おじいさんやおばあさん、ドラゴンを描いている子もいました。書き終わると、「見せて。」「だめー。」など言うやり取りもありました。
子どもたちは書き終わると、青山さんや日本語科教員に見せに行って、絵の説明をしたり、日付を入れて、数字や文字の書き直しをしたり、言葉を交わしたりして、クラスの6名それぞれがそれぞれのペースですごしました。


「あと5分あるから、貸出できますよ。」と教員に青山さんが提案。日本語は読めない、という生徒たちに、サクラメダルの棚にある『じゃない』(チョーヒカル フレーベル館 2019年)や『そそそそ』(たなかひかる ポプラ社 2024年)をかるく読み聞かせ紹介をして、ほかにもいくつかの貸出候補を見せて、手渡していきます。


(このG1の日本語クラスでは、日本語初学者ということもあって、一般的な絵本の読み聞かせではあまり響かないことから、声に出して読む楽しさや音の面白さを感じられる言葉遊びやナンセンス絵本などを選んでいます。「そそそ」などの絵本を通して、ひらがなやカタカナを〈読んでみたい〉と思う気持ちを引き出そうとしている点に強い意図があります。青山さん談)


子どもたちは自分のクラスと名前の入っている緑のカード(貸出カードとシェルフマーカーを兼ねている。あとで本人の写真とバーコード付きのカードができあがる予定。)を青山さんに見せて貸出手続きをしてもらい、最後に並んでお礼を言ってLibraryの時間が終わりました。

3.Libraryについて

Libraryは校舎の3階にあり、小さな教室の2つ分くらいの広さです。入ると正面が絵本コーナーで、昨日入ったばかりというアルファベットにかわいいイラストがついているカラフルなラグがひいてありました。

(ラグ:このラグは、25-30名近くなる、幼稚園や小学生の1クラスをちゃんと座らせるためのものです。アルファベット26文字+4マスあるので、ひとり1つに座る場所を選びたくなるような絵柄のあるものにしています。青山さん談)

コーナーの左手は面だし書架で英語のサクラメダルの候補作絵本の表紙が並び、正面からは著者の名前順に、続いて日本語の創作絵本、インターナショナルスクールの子どもたちが投票して決める「サクラメダル」候補作の絵本が2冊ずつ、その後にNonfiction絵本があります。Nonfiction絵本はジャンルや主題で分けてあり、Folktales,Science, Technology, Art, Poems, History, Biographies などがDDC順においてあります。(このプログラムについては、この記事の最後に載せた「追記」を参照ください。)

その絵本コーナーと向かい合うように、青山さんのカウンターを兼ねた仕事机が、入り口の左手にあります。その横には端午の節句の兜とミニこいのぼりが飾られていました。2月3月には7段のお雛様も飾ったそうです。


日本の年中行事など、日本文化の紹介もすること、解説したり、質問に答えたりもしている青山さんですが、子どもからは「なぜ、そんな事をするのか」など、なかなか鋭い質問もでるそうです。そうした際には、雛人形などの飾り物は、文化理解の良いきっかけになるといいます。

 

奥の半分は上級生向けの図書のコーナーになっていて、いろいろな形のテーブルと椅子がちょっとおしゃれにおいてあります。新聞と雑誌も、Graphic novelもあります。左手からNonfictionの英語の本がDDC(デューイ十進分類法)で分けられています。

 

 

 

 

    

現在、その棚の前に「G1」「G2」など書かれた各クラスに行く予定のダンボールの箱が多数おいてあり、隙間の時間に手に取ってもらえるよう学級文庫に数か月単位で主に読書材の貸出を準備中ということでした。ハンガリー系ルーマニア人の美術の先生が生徒と一緒に箱にクラス名を描いてくれたそうです。

 

その後に続くFictionは、もともとの言語は問わずに著者名のABC順に並べてあります。続くGraphic Novelsの棚の後に、日本語のNonfictionがあり、NDC(日本十進分類法)で分類されていました。そこに雑誌と新聞もバックナンバーと共においてあります。その後に日本語のFictionが続きます。小学校中高学年から中学生くらいまでのコレクションコーナーという感じでした。

高校生は今のところは少人数ですが、高校生コレクションがLibrary入り口手前に、記録ノートと教材や日本の教科書の棚の隣にまとまっていました。Graphic Novelsは増える傾向があって【加減】を考え中とのこと。『聲の形』はサクラメタル受賞作品なのですが、日本語は原作のマンガではなく小説版の青い鳥文庫で、英語版は『a silent voice』で、原作の漫画の英訳なのだそうです。

 

新聞は、朝日小学生新聞がありますが、6月から、英語日本語のバイリンガル新聞も置く予定で、雑誌は英語の「ナショナルジオグラフィック」、日本語の「Newsがわかる」「ジュニアエラ」などがあり、オンラインデータベースは英語のBritannica School とImageQuest(ブリタニカの画像検索)が契約中で、高校の探究のためにまずはニーズのある新聞データベースを入れ、追ってジャパンナレッジなどを考えているそうです。

電子書籍は図書館とは別に教材としてRaz-Kids  〔 https://www.raz-kids.com/ 〕を導入しているそうです。


(現在、英語の図書を購入しているフォレット社から、サクラメダル関係のGraphic Novelsを中心に英語の電子書籍をお試しで10冊ほど入れていて、オーバードライブ社のebooksも発注可能になっていたので、今後の検討です。物理的な場所を取らないし、督促もしなくてよいし、何より発注すれば、図書では納品まで1か月かかりるところが即日利用が可能になります。

IBでは、様々なメディアリテラシーの育成を奨励していて、新聞や雑誌と図書の違い、電子的資料を比較検討する環境を用意すべく、少しずつ増やしていく予定です。青山さん談)


分類はDDC(英語の本)とNDC(日本語の本)で英日エリア分けをしていますが、同じ主題は同じ色をラベルに貼って揃えることにして、わかりやすくなるように工夫されていました。

本のコーナーの「Hirono‘s Library Time」と書かれたホワイトボードには、「新聞」の情報源の書き方やラベルの請求記号について、午前中に子どもたちが学んだあとが残っていました。

(IBのPYPでは、メディアによる違いなどを比較して学習する、というのがあるので、新聞も2つ以上あった方がよいし、雑誌もいろいろほしいのですが、雑誌自体がなくなってきている今日この頃です。大阪勤務時代、英語の先生たちは、どんな雑誌を読むかと子供たちに聞いたり、授業で雑誌記事を読ませたりを中学生からしていて、雑誌は教材の一部で、娯楽のため、というわけではないのでした。それが高じて、高校くらいからは、レポートで雑誌記事を使うことが、インターネットが始まる前から行われていて、高校向けの雑誌記事索引なども発行されていて、これが大学や研究者の雑誌の世界に続くのだ、と思ったのでした。青山さん談)

さまざまなジャンルと分類の本、日本語と英語、幼稚部から高等部まで、小さなLibraryに、選書も活動もぎゅっと濃縮された充実の学習空間と感じられました。

今回、引き継いだ蔵書とその後の購入分との統合を図っているという途上での訪問でしたが、お忙しいなか見学を引き受けていただき、感謝しています。これからの充実が楽しみです。学校の探究活動まで踏み込むことができませんでしたが、機会があればまた、別の記事をいただくのもよいかなと思いました。

                               訪問日 2026.5.7

 

追記
――「サクラメダル」について――
日本のインターナショナルスクールで行われている、子どもたちがお気に入りの本に投票するプログラムです。ウエブサイトはこちら

      Sakura Medalhttps://sites.google.com/view/sakuramedal/home
毎年、インターナショナルスクール各校のlibrarianで選らんだ9~20冊の候補作から、読んだ冊数に応じて投票権が与えられた子どもたちが投票するという1年間をサイクルとする読書プログラムです。

  ===サクラメダル年間スケジュール===

  5月…候補作品(各ジャンル9~20冊)を決める
   (この間、候補作の貸し出し準備をする。)
  8月…候補作品を公開/貸出開始
   (この間、それぞれの学校で候補作を読む
    例えば絵本の場合5冊読むと1票…20冊読むと4票の投票ができる
  4月末…投票終了(大人は投票できない)
  5月… サクラメダル受賞作の決定
    作家に(絵本は画家にも)メダルの贈呈

 

1年かけたゆったりしたサイクルが持続可能な秘訣だと感じます。青山さんは大阪にいらしたときには選ばれたリストを読書プログラムに活かすのみでしたが、東京ではミィーテイングに出るようになったとおっしゃっていました。


ジャンルについてはホームページをご参照ください。英語の本だけではじまりましたが、日本語の本も欲しいとあとからジャンルに追加され、今はGraphic novelが英語のみですが、他は英語と日本語のジャンルがあります。日本語の本の候補選書には学校によっては日本語の教員も参加しているそうです。


インターナショナルスクールは学校によって小学校だけ、小中だけ、中高だけとかいろいろなタイプがあって、全校が全ジャンルに参加というわけでもなく、小学校だけどGraphic novel投票には参加しないなどの選択参加するケースもあるそうです。
各ジャンルの受賞者に送るメダルに同封される子どものアート作品の募集もあって、これも子どもが投票をして決めます。


受賞作家訪問などいろいろイベントは催されるようですが、人気なのが「Book Bowl」という小学校4・5年生のクイズ大会です。各校のlibrarianたちが手弁当で準備します。10人で1チームを作って、候補になったチャプターブック20冊のクイズに答えていくというもので、今年は12校が参加、保護者の参観もあり大いに賑わったそうです。


日本語教師会では、このサクラメタルプログラムから派生した感想文コンクールもあるようです。

Librarianが集まって候補作を選択することで読んでもらいたい本の質を保証すること、9月の年度始業に合わせて準備して、子どもたちが8~4月にわたってゆっくり読む時間がとられていること、読んだ冊数に応じて投票冊数が増えるのはやる気を促すであろうこと、賞に添えられる絵の募集など、国内の読書プログラムとは少し様子が違って、学べる催しです。また、このプログラムの展開には、各校のLibrarianたちがさまざまな形で協力したり集まったりして、校外の横のつながりが生まれていくのも素晴らしいと思いました。
(まとめ中山)


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