司書研修の報告

司書研修の報告

はじめての学校図書館 何から始めますか?

2026-04-25 22:58 | by 村上 |

 この春、ご縁があって、整理アドバイザーの勝呂由紀さんに、カウンターと司書室の整理をお願いしました。一緒に作業しながら、整理収納の極意を伺うなかで、これはきっと、はじめて学校図書館に勤務する人にも役立つ知識ではと思い、インタビューをお願いしました。

 勝呂さんは、『司書教諭・学校司書のための図書館づくりアイデア100』(明治図書出版 2026)の著者でもあります。ご本人曰く、「本当に身近なアイデアばかりを集めたものなのですが…」。でも、それが早くも3刷、何から手をつけていいか悩んでいた司書教諭や学校司書にとっては、頼りになる本だったのでしょう。

 今回は、子どもがもっと通いたくなる…に焦点を当てて、お話を伺いました。

 


その1 〜司書側の環境整備ができているか〜

村上(以下 む):勝呂さんがまずはじめての学校図書館に伺った時に、チェックしているポイントはどこですか?

勝呂(以下 す):そうですね、まず見るのは書架の状態です。

・書架が整理されておらず、本来の場所に本がない

・別置資料が多く「本当はここだけれど、この本の場合は別の場所」という説明が必要になる

・背ラベルが本来3桁であるべきところ、2桁のままになっている

 ラベルの修正には時間がかかるので、すぐにというわけにはいきませんが、まずはそれぞれの本が分類通りに配架されているのは大切です。オリエンテーションの前に、書架を整え、できるだけ分類に沿って本を配架するようにお願いします。

 

む:私も特集など組む時は、よく別置することはあるのですが、ついそのままにしてしまうと別置したことを忘れて、本を探し回ることがあります。NDCに従って配架するのは基本ですね。それと、児童・生徒が自分で探すためにも、そこは大切だと思っています。

す:書架が整い、表示が統一され、本があるべき場所にきちんと戻っている状態であれば、児童・生徒に対しても、長い説明はいりません。必要なことだけを、シンプルに伝えることができるようになります。

む:それはその通りです。本校の図書館も、実は働き出した当時は、今ほどはスッキリ本が並んでいないので、どうしても分かりにくい配置になり、結果的に生徒に聞かれると、司書の私が探して手渡すことも多かったのですが、今は「◯類の棚の〇〇〇あたりにあるから探してみて」とまずは指示が通るようになりました。

す:小学校の場合は、新1年生にNDCを理解してもらうのは難しいかもしれませんが、小学校では、毎年春にオリエンテーションが行えるケースが多いと思います。学年が上がるにつれ、少しずつ伝える内容を増やしていくことができます。そうやって「自分で使える力」を積み重ねていくことが大切だと感じています。

 

む:分類はやはり小学校でも3桁分類が望ましいですか?

す:自治体によって2桁3桁の規定があるので一概には言えませんが、気になるのは分類の桁数がそろっていない状態です。児童にとって大きな混乱のもとになります。たとえば「486(昆虫)」が「48」と表記されていると、同じ仲間の本として捉えにくくなります。感覚的には、486円と48円くらいの差があるように感じている、と考えるとわかりやすいかもしれません。(右の写真は、生成AIに作ってもらったイメージ画像です。)

む:2桁分類では、表せない分野は特にそうですね。小学生には3桁は無理ということはないので、できれば小学校も3桁に統一してほしいですね。

 

その2 〜「自分で使える」につなげるために〜

す:小学校での積み重ねは、中学校での利用にもつながっていきます。進学先でも「あ、これは分かる」「自分で探せる」「調べられる」と感じられる状態をつくることは、学校図書館に関わる私たちの大切な役割のひとつです。

む:それは全く同感です。オリエンテーションで私が伝えたいことは、学校図書館の本が、どういうふうに分類されているかということに尽きます。細かいことを覚える必要はないけれど、どんな分け方がされているかはわかってほしいと類の話は必ずします。あとは、ここは面白そうだなと思ってもらえれば十分かと。

す:面白い場所だと思ってくれれば、また来てくれますよね。私もオリエンテーションを“その場の説明”として終わらせるのではなく、日々の環境整備とセットで考えていってほしいと思っています。児童・生徒にとって使いやすい図書館を作るのは、利用を活発にするための大前提だと思うからです。

 

その3 〜除籍できてますか?〜

む:本校の場合は、実は悩みの種は、書架がキツキツになっていることです。毎年春には除籍をしているのですが、なかなか思い切った除籍ができません。それでも今年は、館内もすっきりさせたいと頑張って除籍をしました。勝呂さんは、アドバイザーとして行った学校で、除籍に関してはどのようなアドバイスをしているのですか?

す:初めて赴任なさった司書さんに「除籍」の業務はなかなか負荷が大きいとは思いますが、以下の3点を提案しています。

①蔵書内容を書架整理をしながら把握
SLAが2021年に改定した除籍基準を確認
③除籍したい本について、館長である校長先生・図書担当に文面で伝えてみる

私自身の経験からいうと③が重要になっています。
「司書が勝手に進めた(捨てた)」ということにならないようにまずは「司書がSLAの基準に基づいてピックアップして良いのか」「文学全集など教員の方にも判断いただく」のが良いのかを用紙にまとめてお渡しします。

 除籍手段の相談の手紙      除籍候補のお伺いサンプル

む:それは大事ですね。先生方との信頼関係を築くうえでも、きちんとルールに従って作業を進めていることを理解してもらえると、その後の作業も楽になる気がします。

す:そうなんです。そして、実は除籍が「すべての蔵書がスタメンとして活用できる図書館を目指す」前向きな作業であることを伝えています。

「除籍」→「次の選書」→「活用」→「除籍」の10年スパンのサイクルの中での、とても大切な業務だと思っています。

む:SLAの廃棄基準にも、「学校図書館は、蔵書の廃棄と更新により常に新陳代謝を行う必要がある」とあります。保存的な役割は公共図書館にお任せして、学校は児童生徒教員が日々支える資料を充実させることを優先したいですね。    

す:どの作業も短時間ですぐ完成するものではないので、ご自分の中で週単位、月単位、年単位の業務計画を立てて少しずつ、でも着実に進めていってくださいと、アドバイスしています。その中できっと「あ、変わってきた」と感じられる瞬間が必ずあると思います。

む:貴重なアドバイスと、資料を提供いただき、ありがとうございました。

 


 

 この春、あらたに学校司書として、勤務を始めた方も全国にはいらっしゃることと思います。まずは、どこから手をつけたらいいのか・・・と迷った時は、ぜひ参考にしていただけると嬉しいです。
 毎年開催している、附属学校司書部会主催の学校司書研修ですが、今年は7月27日の午前・午後を予定しています。そして午後は、今回お話を伺った勝呂由紀さんもお招きして、附属世田谷中学校図書館を会場に、実施します。学校図書館の蔵書作りと環境整備に関心をお持ちの方は、ぜひご参加ください。

(文責 東京学芸大学附属世田谷中学校 学校司書 村上恭子)


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