今月の学校図書館

こんなことをやっています!

東京学芸大学附属竹早中学校

2022-10-09 11:30 | by 中村(主担) |

今月の学校図書館は東京学芸大学附属竹早中学校から、図書館の「外」に出張した本たちについてご紹介します。





 中学校の校舎内の、とある場所を撮影しました。
 学校図書館の中ではありません。
 さて、カフェのようなオシャレなこの空間はどこでしょう?
 
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【答え】
 美術室でした!

 こんな素敵なコーナーが美術室にあったら、コーヒーでも入れて、ゆっくり絵を描きたくなります。

 今学期に入ってから、この美術室の一角を貸していただいて、アートに関する本を展示しています。きっかけは、昇降口に飾ってあるガラスケースの中の図書館案内でした。(詳しくは同じく「今月の学校図書館」2022年3月掲載の記事をご参照ください)
 昇降口には、図書館の宣伝として、新着本や映像化作品・折々の特集などを紹介する展示をしています。少し前には、《アートに関する本特集》について、展示本の表紙画像などを飾っていました。それをご覧になった美術の先生が、「このキャプション(POP)、この後どうされるんですか?よかったら美術室で使わせていただいてもいいですか?」とお声をかけてくださったのです。
 
 これまでイベント以外ではあまり足を踏み入れることがなかった美術室ですが、お邪魔してみると、図書館の蔵書ではない、美術関連の本が並んだ書架がありました。
 「この辺りを片付けたので、ちょっと本を手に取って一息つけるコーナーを作ろうと思いまして」とおっしゃる先生。そこで図々しくも私が「キャプションだけでなく、アートに関する本を図書館から持ってきて、置かせてもらってもいいですか」とお願いしたところ、ご快諾いただいたのです。

 並べる本は広くアートに関連しているものをセレクトしています。絵画や彫刻・建築をはじめ、レタリングやミュージアムに関するもの、美術の鑑賞や技法について扱ったもの、アートをテーマにした文学作品など、幅広い選書を心掛けています。生徒の興味のアンテナがどこに引っかかるか分からないので、読んでほしいと思う様々なジャンルの本を並べ、月1回更新します。
 ちなみにこの場所から持ち出してじっくり読みたい人には、貸出手続きをしてもらうことにしています。しかし図書館は小学校棟にあり、中学生には遠くて億劫、それなら借りなくていいや・・・、と思う生徒もいるかもしれません。そこで写真のような用紙を一緒に置いています。
 わざわざ図書館に来なくても済むように、この用紙に記入して、教室移動のついでに昇降口にあるブックポストに投函してもらえば、こちらで貸し出し手続きをします。もちろん図書館に本を持ってきて手続きしてもらい、そのついでに芸術の書架を眺めてもらうことも大歓迎。
 小さな展示コーナーですが、美術室からアートの世界へ、図書館へと、目を向け足を向けるきっかけとなってくれれば嬉しいです。
 
 ちなみに美術の先生とはこの展示をきっかけとして、鑑賞と調べ学習とプレゼンテーションを融合させた【びじゅリオバトル】をやりましょう、という話が生まれました。実現したらまたご報告させていただきます。
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 さて、もう1か所、図書館を飛び出した本たちをご紹介しましょう。

 職員室と印刷室の間に「職員ラウンジ」という小部屋があり、先生方が軽くランチやお茶をすることができる机が並んでいます。こちらのテーブルの上に、ミニ本棚を設置させてもらっています。図書館に配架する前の新着図書を中心に、先生方へ「こんな本がありますよ」というお知らせのために、20冊程度を月2回のペースで入れ替えて置いています。
 こちらは美術室よりももっと簡単な方法で持ち出すことができます。それぞれの本にはあらかじめ書名を書いた細長い紙をスリップのように挟んであり、ご自分の座席やご自宅に本を持ち出す場合は、その紙を抜いて本棚横のポケットに差し込むだけ。誰が借りているかは分かりませんが、「誰かが借りている」ことは分かります。先生しか入れない場所なので、置いた本がしばらく見当たらない場合も、紛失なのか・どなたかが持っているのか、それだけ把握できれば充分です。先生方のご負担にならず、なおかつ自分も本の所在にモヤモヤしないやり方を考えた結果の運用でした。
 
 先生方にはご好評で、ちょくちょく借りていただいています。時には本に挟んだ紙に一言感想が書かれて本棚に戻されていることも。「いつも楽しみにしています」とお声がけいただけるのも嬉しいです。また、一緒に文芸雑誌『ダ・ヴィンチ』(前月号)を置いておき、先生方のリクエストを付箋に書いてもらっています。お忙しくてなかなか図書館まで足を運べない先生にも、職員ラウンジのミニコーナーで、図書館の存在をチラリと感じていただけるといいな、と思います。

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 図書館から本を出張させることに、はじめは管理の面で気がかりがなかったわけではありません。けれど「図書館に来てもらうのをただ待ってなかなか利用されないよりは、紛失の恐れがあっても、手に取ってもらうほうがいい」と考え、図書館から一歩踏み出してみました。先生方のご理解とご協力を得て、また生徒の利用マナーにも助けられ、今のところ順調に運用できています。
 今後は図書委員が各学年のロビーに本を持って行って貸し出しをおこなう「出張図書館」も企画しています。
 
 図書館が中学校棟になく、生徒や先生のいる場所から離れている本校。しかし「国語室」「英語室」など各教科の部屋があり、生徒は教室の外でもよく授業を受けています。それらの部屋にもいつか各教科の図書コーナーを・・・と密かに目論む司書なのでした。

 (東京学芸大学附属竹早中学校 司書 中村誠子)

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