今月の学校図書館

こんなことをやっています!

東京学芸大学附属高等学校

2022-09-02 11:23 | by 岡田(主担) |

 今回は附属高等学校図書館の様子を「悩み」を通してお伝えします。
「なんかモヤモヤする〜」を共有して一緒に考えたり、周りへの提案の際の参考にしていただけたら幸いです。
悩みその1
オーバーブッキング

本校の学校図書館は授業との協働を目指しています。
レポート作成、グループ討論、プレゼンテーション準備と例年、各学期末には特に図書館使用授業が重なることが増えます。
「予約は先着順」と職員会議ではお伝えしていますが、教員間でのオーバーブッキングがおこります。

図書館授業の様子


これは、学校図書館でよくあることではないでしょうか。教員が図書館を使用したい時期が行事、テスト、授業習熟度と考慮されますと、どの教科も使用時期が同じ頃になるからです。
今年度から校務支援システム BLENDを導入し、図書館の施設予約管理を可視化することにしました。
このシステムの使い勝手の良い点は気軽に予約できて、気軽に予約の取り消しができるところです。
案外教員は他に使用する他教科の教員に遠慮しているケースがよくあります。
(例 使うかどうか迷っているうちに先を越されてしまう)
一番のポイントは気軽な点だと思っています。
毎日新聞(2022/8/28) 「学校業務デジタル化」として文部科学省が公立小中の学校教員の働き方改革を進めるために校務システムの導入する方針を決めたとの記事がありました。 
こんなシステムがあることを事前に知っておくことで、皆さんの学校がシステムを導入する際に「図書館も入れてください」と言いやすいのではないでしょうか。導入初期に一緒にシステムに入ることが、職員会議で忘れられがちな学校図書館のデジタル化のポイントだと思います。

悩みその2
レファレンス渋滞

探求学習が本格的に開始されました。以前から行こなっていた学習だと特別に思っていませんでしたら、レファレンスを待つ生徒が後ろに並ぶような渋滞が発生してびっくりです。理由は授業時間の短さです。今までの探求型の授業は1〜2ヶ月かけて、教科によっては2時間続きで図書館授業を行なっていました。ですので、司書の私が机間巡視で生徒の間をチェックし、資料を提供したり質問したりが可能でした。今回は短い時間の連続授業となり、生徒同士の理論が深まりにくく、テーマの設定から資料を必要とするレファレンスが多かったと感じました。一人一人に時間をかけていると授業時間が終了してしまいます。
そこで司書教諭と相談して探求授業図書館利用カードを作成しました。



ポイントは個々の探求テーマをわかりやすくした点です。生徒は考えが安定するまでテーマが変化し続けます。今回はこのテーマに変わったことや研究の切り口を変えてきたことなどが簡単なメモで理解できます。学年全体のテーマの流れを把握すると同時に顔の見える関係でのレファレンスがしやすくなります。メモをもとに後から見つけた資料の紹介や専門図書館の案内につなげます。探求授業後に、各生徒のテーマ別にブックリストを提供できますと、生徒自身の資料への洞察力も深まりますし、リクエスト図書の充実にもつながります。一番よかったのは生徒が「学校図書館は自分たちを支援してくれている」との言葉と「きちんと充実した資料を届けられる」という司書自身の安心感でした。

悩みその3
本を読まない

この悩みはどこの学校でもあると思います。読む生徒は読む、読まない生徒は読まない。もしくはみんな(・・・)読まない等々。
対応1
課題プリントを関連する書棚に貼る
正直「過保護だな〜」と思います。でも、できる生徒に必要のない事でも、できない生徒には支援の一つとして行ってみようと考えました

中国思想(倫理)+中国文学全集


夏期課題(世界史A)+世界史リブレット

きました〜(笑)休み明けの始業式前に慌てて宿題棚を探し回る生徒が!!課題プリントを見つけてホッとした様子が手に取るようにわかります。
学校図書館は授業と直結していることを骨身にしみて理解したと思います。
図書館や本が自分の生活と関係ないと思いがちな生徒は図書館を活用できません。
この点を理解させることが、生徒の図書館利用支援には重要だと思います。
どんな形であれ生徒自身の思考を信頼性のある情報とつなぐことが大切です。
同時に教員にも図書館活用が教科授業の充実につながる事も理解してもらえます。


対応2
推しと連係させる
映画『シン・ウルトラマン』はご覧になりましたか。
生徒と話題になりそうな映画はなるべく見るようにしています。
以前、探求学習で「ウルトラマンは沖縄出身!?沖縄とウルトラマンの関係」を取り上げたことがあります。
今年は沖縄復帰50年ということもあり、多様な価値観を探求学習を通して資料展示に再現しました。

映画+時事問題


主演の俳優さんが人気だったり、深夜のコアな放送の原作も生徒の興味を持ってもらう良いチャンスです。ホワイトボードにマグネットタイプのブックスタンドを利用してカウンター前の一番目立つ場所に展示します。その際に「貸し出し可」の一言を忘れずに。

映画+文学


ミュージカル+映画+原作
夏休み明けに早速「この映画みた!!」と生徒の反応がありました。
映画と原作の題名が違うので(劇団四季のミュージカルは同じでした)
並べて展示が有効です。


探求学習もテーマをいかに自分ごとにするかが重要になります。生徒は学習は学習で自分の生活に関係ないと思っている場合があります。そのような生徒は往々にして探求学習を最後までやり抜くことができません。身近にある流行や娯楽も誰かの思いや歴史が作用して今の自分に伝わっていることを知ることは探求学習の基本の一歩となります。

「コロナで以前のように学校図書館運営ができない」と図書委員、司書教諭、司書みんなが感じています。みなさんの学校でも同様ではないでしょうか。
焦らず、慌てず、コロナを出さずと教員とお互いに協力しあう日常的な図書館活用の様子を見てくだされば幸いです。

            (東京学芸大学附属高等学校 司書 岡田和美)






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