今月の学校図書館

こんなことをやっています!

東京学芸大学附属世田谷中学校

2017-10-09 19:54 | by 村上 |

 



今月は、附属世田谷中学校図書館の2学期の様子をお伝えします。


この夏・この本・この1行!

  1年生には、できるだけ授業で図書館に来る機会を作ってほしいと考えています。国語の先生にも、そのようにお伝えしていたら、夏休みの課題として、「この夏、この本、この1行」という取組をしたいので、7月最後の国語の授業は図書館でしますと、連絡が来ました。先生からは、「この夏休み、自分を成長させるような1冊を選ぶこと」というお題が与えられ、生徒には棚をめぐり、読んでみたい本を3冊まで選んでもらいました。もちろん、借りてみたものの、ピンとこなかったら他の本に変えるのはOKです。

   夏休み明けの国語の時間は、図書館で、自分が読んだ1冊から、どんな一文を抜き取ったかをグループ内で発表しあいました。写真は、その前に交流のしかたを先生がシナリオにしたものを、演じている様子です。型どおりの発表にならず、本をめぐって会話が弾む…ことが先生のねらいでもありましたが、どうだったのでしょうか。終わったあとに、図書館にいた生徒に、感想を聞いてみたら、「面白かったよ。自分も読んだ本だったから、僕はストーリーの面白さしか考えていなかったのに、○○さんは、ああいう文章に惹かれるのかと、新鮮だった」と、司書の私が喜ぶ感想を言ってくれました。

   でも、この感想は、自分が読んでいた本について友達が話してくれたからでしょう。もちろん知らない本の話を聞き、今度はその本を自分も読みたいな…と思ってくれた生徒も多かったとは思います。次回は、短い時間でも同じ本を読んで共有するというような、ミニ読書会も授業のなかでできたらいいですね…と先生と話しました。


科学で感動しよう!

  せっかく購入した本が、ちっとも読まれない…という悲哀を味わう学校司書も多いのではないでしょうか?読めば面白いのに…と言う本が、図書館にはたくさんあります。その中でも、『科学感動物語』(学研 2013)は、その使い道をずっと考えていました。12巻からなるこのシリーズ、それぞれのテーマごとにまとまっていて、1つは20ページほどで、ルビがふってあって、さらにもっと知りたい人のための参考文献まで記載されているのです。12冊のままでは、12人しか読めませんが、これを1話ずつにすれば120人が読むことができます。このまま読まれないなら、いっそばっさり切って、冊子にしてはどうだろうと考えました。もしそうしたら、使ってもらえるかしら…と、昨年赴任された理科の先生に、相談してみました。 「何かできそうですね!考えてみます。」と嬉しいお返事。

 それから約1年後のこの夏、その“何か”が具体的に中学2年生への課題となって実現しました。生徒全員に、好きな人物または事柄を選んでもらい、夏休み中に読んで、A4サイズのポスターを書き、夏休み明けの理科の授業で、3分スピーチをするというものです。夏休みの始まる10日前から、図書館で選んでもらう時間を設けました。先を争うように少しでも有名な科学者を選ぼうとする生徒の真意は、「知っている人なら簡単にまとめられるから」というもの。「知らない科学者を選んだ方が、自分も感動があるし、聞く人も知らないからオーッて思ってくれるけれど、知っている人をやると、逆にハードル高いでしょ」というと、なるほどと納得していました。


  写真は、どんなふうにスピーチをしたらいいかを、先生が生徒に話しているところです。伝え方は大事です。また、聞いてどうだったかの感想を一言書くにあたっては、スピーチのしかたについてではなく、内容にコメントを書くようにと指示がありました。国語の授業ではスピーチのしかたにも評価が入りますが、理科は内容重視というのも納得です。この日は教育実習生も見学していました。スピーチの前に、その人物・事柄について①聞いたこともない ②名前だけは聞いたことがある ③少し知っている④詳しく知っている という設問に答えてもらいました。スピーチを聞いた後は、①興味がわかない ②少し興味がわいた、③偉人伝を読んでみたい、④偉人伝以外にももっと調べたい のいずれかを選んでもらいました。

 
 そのアンケートを集計してみると、大人なら知っている確率の高い人物・事柄も、知らない中学生が多いことをあらためて実感しました。でも知らない科学者の秘話は、どれも興味深かったらしく、興味がわかないと回答したのは数人、しかし、図書館に飾ったポスターは良く見てくれていましたが、冊子に手を伸ばす生徒はわずか。2年生にきいたら、「確かにあの時は読みたい!と思ったけど、熱がさめちゃったんですよ。話をきいたあと、冊子を読む時間があったらきっと読みましたよ。」と言われてしまいました。まだまだ改良の余地のある取組でしたが、先生もやって良かったと思ってくださって、今後も出番がありそうな冊子です。本をバラしてしまったことを後悔しなくてすみそうです。(詳細は、まもなく事例にアップします。)



図書館で「行書」探し!


  附属学校には9月、東京学芸大学からたくさんの教育実習生がやってきます。本校では、いつも20分程度ではありますが、オリエンテーション時に教育実習生に学校司書から話をする時間をもらっています。とはいうものの、教育実習期間に、図書館を使って実際に授業をするということはめったにありませんでした。ところが、今回、国語の書写の先生から、授業で図書館を使いたいとオファーがありました。いったいどんな授業を?ということでお話を聞くと、図書館の本棚から、行書の漢字を一文字探し、それを模写して、グループで自分が探した行書とそれが載っていた本について紹介させたいとのこと。そんな使い方あったのかと、司書としては新鮮でした。

  さっそく実習生の先生と、本棚を一緒に巡りました。ふだんそんなことを意識して棚を見てはいませんが、探せばいろいろあるものです。特に歴史関係の本や、文学も古典の本、歴史小説などは、表紙の文字が行書を使っているものが意外と多いのです。さらに占いの本だったり、日本画の本などはページをひらけば行書が出てきます。これならできそうということで、授業を行うことになりました。

 実際の授業では、教室で先生の講義を聞いた後、図書館に移動。先生からのミッションを遂行するという流れです。図書館の分類についても先生から話がありました。そして、なかなか探せない生徒にはヒントをあげることで、制限時間内にほとんどの生徒が、文字を見つけることができたようです。私が思いつなかったところから、行書を見つけ出す生徒もたくさんいました。

 後日、授業した先生に、「どうでしたか?」と伺ったら、「図書館で行書を探すという取組自体は良かったと言われました」とのこと。教科書には「町の中で行書を探そう」とありましたが、図書館でも十分行書が探せるのですね!


 10月には家庭科でも、実習生の先生が図書館で授業をすることになりました。どんな授業ができるか、どんな資料を用意したらいいか、実習生の先生や指導教官であり、司書教諭でもある家庭科の先生と一緒に考えているところです。


                                  東京学芸大学附属世田谷中学校 村上恭子


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