今月の学校図書館

こんなことをやっています!

小笠原小学校の巻

2018-11-06 10:06 | by 村上 |

   文部科学省では、平成14年度から読書の推進に優れた取組等を行っている学校、図書館及び団体(個人)を毎年表彰しています。平成30年度にも全国で134校の学校が表彰されました。小笠原諸島の父島の小学校の図書館も表彰されました。島の小学校からの報告です。



小笠原奮闘記


1、 概要

 小笠原小学校は小笠原諸島父島にある唯一の小学校です。小笠原諸島は、東京から1000㎞南にあります。

  
   空港がなく、交通手段は、竹芝桟橋から出港する定期船「おがさわら丸」のみです。6日に1便出港しており、父島まで片道24時間を要します。交通面では決して恵まれていませんが、小笠原諸島には、独自の進化を遂げた固有の動植物が多く生息し、2011年6月にはユネスコ世界遺産に登録されました。

   どこまでも透き通る海、カラフルなサンゴ礁や熱帯魚、大物の魚の回遊、アオウミガメの産卵など、素晴らしい大自然に囲まれた世界遺産にある小笠原小学校の図書館を紹介させていただきます。


2、 養護教諭が図書館の担当に!

    東京都の採用試験に合格し、都内のどこの小学校で働けるのか連絡を楽しみに待っていました。連絡が来たのは、なんと島しょ地区からでした。まさか島の学校に赴任できると思っていなかったので、とても驚きましたが、チャレンジしてみようと思い、小笠原小学校への赴任を決意しました。ワクワクドキドキしながら新しい学校での生活が始まりました。校務分掌を確認すると、図書担当に名前があり、「司書教諭の資格はあるけれど、ど、ど、どうしよう!!!」という気持ちでいっぱいでした。
 図書館担当になったものの困ったことやわからないことがたくさんありました。
・そもそも図書館の本はどのように分類されているのだろう。
・本は右上から並べるの?左上から?
・きれいに本を並べたいのに、本の高さと棚の高さが合わないな…
・壊れた本はどうするの?
・せっかくきれいに並び終えたと思ったら、子供たちから上の方が届かないという声が…
・文学も絵本と同じタイトルあいうえお順ではないの?
・巨大な本はどのように展示すればいいのだろう。倒れてこないかな。
・新しい本を既存の本と混ぜると本棚が足りなくなりそう。どうしよう。
・図書ボランティアの保護者の方とはどんな活動をしよう。
 等々、「学校図書館活用データベース」をご覧になっている先生方や図書館の関係者の方はご存知のことばかりだと思いますが、恥ずかしながら上記のような状態で図書館担当の仕事がスタートしました。
 何から始めたら良いかわからず困った私は、以前働いていた東京学芸大学附属小金井小学校の元学校司書 中山美由紀先生を頼り、上記のことを相談しながら取り組みを開始しました。


3、 取り組み

〇本を日本十進法(NDC)に並び替える
 本が色々なところに収納されていたので、まずは全ての本を出し、古い本や不要な本の除籍を進め、0~9類に本を分類しました。0類などのパネル作り、0~9類というラベルが本に貼っていないものにはラベル貼り等も含め作業を進めました。本の量がたくさんあり、全て分けきったと思ったら、どこかから4類が出てくるなどなかなか終わらず最も大変な作業でした。

 

 





〇図書マップを作る
 0~9類に本を分けたので、図書館マップを作成しました。入口に掲示し、マップを見れば、探したい本が大体どこの場所にあるのか分かるように工夫しました。
 
〇貸出本上位者を表彰する
 貸出カードに記録を書いていない児童がいたので、カードに貸出記録を書かせることを定着させました。また、読書活動を充実させるために、学期毎に貸出本が最も学年で多い児童を朝礼で表彰しました。
〇教職員&図書ボランティア&図書委員会のおすすめ本の掲示
 先生方、図書ボランティアの保護者の方、図書委員会の児童のおすすめ本をB5サイズの紙に書いてもらい、掲示しました。子供たちと本の話をするきっかけとなりました。

4、 図書ボランティアとの連携

   図書ボランティアの保護者の方々には、毎月1回2時間図書館で活動してもらいました。
図書館をより子供たちが利用できるよう様々な取り組みを行ってきましたが、図書ボランティアの協力なしで作業を進めることはできませんでした。毎月たくさんの力のある図書ボランティアのみなさんが来てくださり、以下の活動を行ってきました。
【毎月の活動】
〇本の整理
 日本十進法(NDC)への並び替えや返す場所がわからなくなってしまった本の返却をしてもらいました。日本十進法(NDC)への並び替えは、10人前後のボランティアのみなさんと一気に作業を進めました。

〇修理本
壊れた本は、補修テープを使って丁寧に直してもらいました。
〇季節ごとの掲示作り
七夕やハロウィン、クリスマスに画用紙や折り紙を使って飾りつけをしてもらい、1年間を通してとっても華やかな図書館でした。また、そのシーズンにちなんだおすすめ本を入口に展示してもらいました。
〇図書ボランティアおすすめ本紹介
 上記のおすすめ本の掲示のほかに、図書ボランティアのおすすめ本を学校便りに掲載しました。

【そのほかに】
〇読み聞かせ
 毎週各学年で読み聞かせをしてもらっています。読み聞かせした本は、読み聞かせノートにタイトルや感想(反応)等を書いていただき、なるべく同じ本が重ならないよう配慮しています。子供たちが喜びそうな本を毎週吟味して選んでくださり、どのクラスでも図書ボランティアの読み聞かせは大盛り上がりです。

〇図書館の使い方オリエンテーション
 日本十進法(NDC)に本を並び替えたときに、子供たちに本の並び方、返し方を説明していただきました。子供たちは、図書ボランティアの方が読み聞かせ以外にどんなことをしているのか知らないので、図書ボランティアの存在や活動内容も知ってもらう良い機会となりました。

5、 成果
   初任で島に赴任し、専門ではない図書館を担当するという試練の連続でしたが、図書館に携わりたくさんの学びがありました。内地の学校で勤務していたら、恐らく養護教諭が図書担当をさせていただく機会もなかったので、学校司書や司書教諭、図書ボランティアさんの大変さや活動を知る貴重な時間となりました。
わからないことだらけで始まった図書館担当でしたが、中山先生にメールで教えていただきながら、教職員や図書ボランティアと協力し、子供たちが使いやすく行きたくなる図書館作りを一生懸命行ってきました。もちろん以前から素敵な図書館でしたが、より使いやすい図書館になり、利用者も増えたという実感があります。みんなでコツコツと活動をした結果、取り組みが評価され、とっても嬉しいことに「平成30年度子どもの読書活動優秀実践校」に選ばれました。小笠原小の図書ボランティアメンバーと教職員、子供たちと共に一丸となり活動できたからこそ、この賞を頂けたのだと思います。図書ボランティアのみなさまには感謝の気持ちでいっぱいです。私は3月で異動となりましたが、小笠原小学校の図書館が今後もさらに進化して利用しやすい図書館になること間違いなしです。

【左にいらっしゃるのは、音楽の先生で一緒に図書担当として力を発揮してくださいました!】
    今後私が図書館の担当をすることはないかもしれませんが、図書館を担当した必死の3年間は私の宝物の期間です。現在勤務している国分寺市立第五小学校の図書館は、週5日1日5時間学校司書が配置されており、子供たちみんなが大好きな図書館です。せっかく図書の世界に携わることができたので、私自身も今後保健指導や保健学習で本を活用することはもちろん、学校図書館をたくさん利用していきたいと考えています。
 

(文責:国分寺市立第五小学校養護教諭 
増渕 優花)



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