今月の学校図書館

こんなことをやっています!

長野県長野市立朝陽小学校の巻

2020-01-06 11:12 | by 村上 |

 令和2年、最初の「今月の学校図書館」は、長野市立朝陽小学校で実践されている「本探し名人になろう!」の取組をご紹介します。司書教諭の米山美保先生から、ご寄稿いただきました。子どもたちが、楽しみながら図書館のしくみを学び、そこにある面白い本に気づけるという素敵な実践です。



 ~図書館の本の並び方を理解し、読書の幅を広げる「本探しゲーム」
本探し名人になろう!

~はじめに~
 「せんせ~、〇〇についての本ってある~?」と聞いてくる子ども達がいます。それは良いのですが、担任や司書に頼らないと簡単な資料探しもできない子どもにはしたくありません。知りたいこと調べたいことがあったら、まずはどのあたりに資料がありそうか見当をつけ、使いたい資料にできるだけ自力でたどりつける、図書館活用力のある子ども達に育てたいと考えています。
 朝陽小学校では以前から代本板を使用していませんでした。代本板を使わなくてもいつも書架が整っていればよいのですが、現実には、本来あるべき場所に本が戻されていないために、次に借りたい人がめあての本にたどり着けないということも時々起こります。いつも本を見つけやすい整った書架にしておくためにも、みんなが配架について正しく理解することが必要です。目当ての本を自力で探せる力のある子は、借りた本を正しい位置に戻す力のある子でもあると思います。(右 資料A  館内案内図)




1.なぜ本探しゲームか
 図書館活用力をつけるためには、N.D.C.の概要(しくみ)・図書ラベルの表記・どんな分類の本がどこにどんな配列で置かれているのか、などについて理解することが必要です。年度始め、図書館オリエンテーションで学年に応じてそれらを説明するものの、一度聞いただけでそれを活かせる児童はわずかです。
そこで、担任や司書に手渡された「この本を探そう!」カードに書かれている本を探すというゲームを通して、ラベル表記(分類番号や図書記号)が図書館内の本の住所であることを体験的に理解し、すみやかに本を探したり、正しい場所に本を返却したりすることのできる児童に育てたいと願って、この授業を計画しました。

 このゲームには、もう一つねらいがあります。
 普段の図書館利用を見ていると、利用される本にかなり偏りがあります。実際に手に取ってみれば面白い本はたくさんあるのに、人気の本や知っている本しか手に取らない児童もたくさんいます。そこで、本探しゲームを通して、普段あまり手を伸ばさない本、借りたことのない分野の本を手に取り、実際に開いて見ることで、新たな分野の本と出会わせ、読書の幅を広げようというわけです。


2. 本探しゲームの準備(必要なアイテム4つ)

 (1)館内案内図(「朝陽小図書館地図」) ※資料A

 (2)本探しゲームのやり方を書いたポスター※
資料B「本探しゲームのやりかた」ポスター.pdf

 (3)「この本を探そう!」カード(少なくとも200枚程)
・カードの内容は「本の題名」「ラベル」「著者」「出版社」「本の表紙画像」「分類の色」
・繰り返しの使用に耐えられるよう、ラミネートしておきます。





<「この本を探そう!」カードに載せる本選びのポイント>
普段あまり手に取られていないけれど、開いてみると面白い本



絵本・9類・4類は多めに、他全ての分類についてまんべんなくカードにします。
・1年生なら絵本のみから
・2年生は絵本、4類、9類から
・3年生以上は全分類から
というように、学年や児童のリテラシーに応じて、探す本の分類や分野を広げるようにします。また、高学年では「郷土資料」などの別置記号にも意識が向くようにします。

(4)探した本のタイトルやゲームの感想などを記入するワークシート 
  
資料C「はじめての本探しワークシート」.pdf
   資料D「本探しワークシート(高学年版)」.pdf


3.ゲームのやりかた
※必要に応じて、館内の配架やラベルの仕組みについて指導しておきます。

 (1)2人組を作ります。※図書館利用の限られた時間を有効に使うために、あらかじめ担任の先生にゲームを行うことを知らせ、組み合わせを決めておいてもらいましょう。

※1人でも不安がない学年・学級は最初から1人ずつでゲームを行ってもよいです。

※ゲームの進捗状況を可視化するために紅白帽子などを使用するのも一つの手。


(2) 先生に渡された「この本を探そう」カードに書かれている本を探します。

(3) 本が見つかったら、ワークシートにタイトルやラベルなどを正しく記入し、本を開いてみます。

(4)本の中の登場人物や話の内容をワークシートにメモします。

(5)みつけた本と記入したワークシート・「この本を探そう!」カードを先生のところへ持って行き、ワークシートにスタンプを押してもらいます。

(6)2人で協力して、本を正しい位置に戻します。(返却却場所が分からなくなってしまったときは、先生や友だちに教えてもらいます。)
(7)2回目は、(2)~(6)を1人でやります。
(8)ゲームや本を開いてみての感想をワークシートに書きます。 
(9)ゲームをやって気づいたことなどを、できる限り情報交換します。


4.本探しゲームの効果・成果(先生方の声)

  「次のカード、また次のカードというように本探しゲームを楽しむ姿が見られた。(6年)」

「本探しゲームに集中して取り組む姿があった。『こんな本知らなかった』との声もあった。(5年)」

「じっとしているのが苦手な児童が楽しそうにゲームに参加していた。また、普段なかなか手に取らない本との運命的な出会いもあって素敵だと思いました。(5年)」

「『もっとやりたい』『この本借りてみたい』などの声が聞かれました。配架やラベルのひみつなどは大分分かってきていましたが、児童によってはあまり行ったことのない棚があることもわかりました。(4年)」

「はじめは、恐る恐る本を探しに行ったが、一度見つけると次を楽しみに探すことができた。探すうちに館内の棚の様子、本の種類、本の位置など様々なところに興味を広げていた。(3年)」

「子どもたちは『もっとやりたい!』と言いながらとても楽しそうに「本探しゲーム」に取り組んでいました。ゲーム感覚で本のラベルと図書館地図を手がかりに本の場所を理解していくという、楽しいアイディアをありがとうございます。(3年)」

「子ども達からもっとやりたいという声があがった。(2年)」

と全学年で好評でした。春の読書週間で取り組んだ本探しゲームでしたが、2年生は、先生方からのリクエストで、冬の読書旬間にも「本探しゲーム」に取り組みました。  図書ラベルや館内の配架について理解するためにも、色々なコーナーにいき、様々な本との出会いのきっかけを作るという意味でも、このゲームは有効だったと思います。一度だけでなく、繰り返し行っていけば、本を探したり正しい場所に戻したりする力が着実についていくゲームです。
 (文責 長野市立朝陽小学校 司書教諭 米山美保)


 後日、この事例を掲載するにあたり、米山先生からは、下記のようなお話を伺いました。

   「このゲームは、10年ほど前に前任校で始めたものです。前任校には資格をとった司書さんがいらして、図書館環境をこまめに整えてくださっていたので分類番号や図書記号の仕切り板を作る(職員作業で!)ぐらいですぐに本探しゲームのできる環境になりました。朝陽小では、一緒に赴任した図書館職員の方と、ラベルの統一、配架、表示板作成などに取り組み、ゲームができる図書館になったので、この実践を行いました。図書館が整っていないとできないゲームです。」

 学校司書と司書教諭、そして教職員全員で、子どもたちが学校図書館を使いこなせるようにしたい!という思いがあればこその実践ですね。今回米山先生は、ご自分の実践で使われた資料やノウハウを惜しげもなく提供してくださいました。ぜひみなさんも、勤務校の図書館で取り組んでみませんか? 「やってみました!」というお便りをお待ちしています!(編集部)


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