今月の学校図書館

こんなことをやっています!

東京学芸大学附属大泉小学校 マルチメディア室

2020-02-14 21:38 | by 富澤(主担) |

本校の学校図書館は、「マルチメディア室」、通称「マルチ」と呼ばれて親しまれています。

○最近の様子○

2月1日に大きな研究発表会がありました。平成29年より文部科学省研究開発指定を受け、「探求科」を新設した教育課程開発研究に取り組んできたこともあり、この時期は特に様々な学年・学級で同時多発的に意欲的な学習が行われ、マルチメディア室も大盛況、司書もその対応に追われていました。

 6年生の国語の授業では『海のいのち』(立松和平/ポプラ社)を取り上げるとのことで、急ぎ区立図書館から同作を含む「いのちシリーズ」の絵本を2冊ずつ取り寄せ、3年生は「身近な物の仕組み」を探求するので、分解できない大型の家電や、乗り物などの内部構造がわかる資料が必要、といった具合。5年生がクラス単位で来館して調べ学習をしている片隅では、「教室よりこっちが落ち着く」とiPadを携えた4年生のグループが何やら作業をしていたり、動画の撮影の打ち合わせをしていたり。そこに、バスケットに入れてある資料を取りに6年生がやってくるといった有様で、いささか活気がありすぎるほどでした。

 特に5年生は、地球環境問題にそれぞれが課題を見つけて取り組むということでしたが、来館して資料を見ながら考えるスタンスだったため、「温暖化の本ありませんか?」「絶滅危惧種についての本は?」「水について調べたいんですけど」と、矢継ぎ早に質問が飛んでくる事態になりました。また、限られた自校の資料を活用して、3クラス分の調べ学習を賄おうというのですから大変です。

大急ぎでバスケットとクラスカラーの付箋を用意し、利用した資料の参照ページに、クラスと氏名を記入した付箋を入れて、使用後は棚ではなくバスケットに入れるよう指示し、個人への貸出はしない、という対応にしました。

 新しい情報は、新聞や雑誌の記事が頼りになりました(本校では、『朝日小学生新聞』と『読売KODOMO新聞』の二紙、雑誌『月刊NEWSがわかる』(毎日新聞社)と『子供の科学』(誠文堂新光社)の二誌を購読しています)。3年生が学校のまわりの地域について調べる際に役立つかもしれない、と用意しておいた『練馬区わたしの便利帳』(練馬区区長室公聴広報課、2017年)などのパンフレット類も「ゴミの分別の決まり」、や「身近な場所の洪水の危険性」といった文脈で役に立ち、2類から6類まで、様々な方向からのアプローチで本をかき集めて提供することで、なんとか皆それなりに調べることができたようでした。日頃から、取り上げられそうなテーマについては、所蔵資料をはじめとして、広く目配りしておく必要性を改めて強く感じています。

○館内の展示○

 現在、館内に飾られているのは、2年生が国語の「お話びじゅつかんをつくろう」という単元で作成した絵です。全てのクラスで、司書が教科書にも見本として載っている『だいくとおにろく』(松居直/福音館書店)を読み聞かせし、先生が作成した見本を紹介した後、それぞれが自分の作品の制作に取りかかりました。

 
あるクラスでは、普段自分たちが座っているテーブルごとに、できあがった絵を机のまんなかに綺麗に工夫して並べ、それぞれのテーブルを巡ってお互いに質問したり、見所を解説したりする鑑賞会も開きました。



 個性豊かに、カラフルに仕上がった絵は人目をひき、
2年生だけではなく他の学年の児童も、立ち止まっては「これ上手」「これおもしろい」「○○君らしいね」などとコメントを言ったり、飾られている絵のなかから、読みたい本を探したりする姿もみられ、急によく動いた本があったと思って聞いたら、「そこに飾られてる絵が良かったから読んでみたくなった」という答えがかえってきたりしました。

クラスごとの進捗状況によって、飾り始める時期が少しずれたこともあり、最初のクラスの絵が飾られると、「残りのクラスはまだなの?」と、学年の友達が何を紹介するのか、どんな絵になるのか、2年生は楽しみにしていました。毎年交流している韓国学校の生徒さんが来校した際にも、校内ツアーにマルチメディア室を組み込み、自分たちが描いた絵を一緒に観賞していく様が微笑ましく、まさに「お話びじゅつかん」の学芸員といった姿もみられました。

 

○図書委員会○

 3学期は、ご担当の先生の発案で、委員それぞれが管理する「PRコーナー」を持ち、そこで本の紹介などをする、という新しい試みをしています。主体的に取り組む部分を作ることで、より自主的、自立的に活動してもらおう、という狙いどおり、早速、ポップを用意したり、クイズを作ってみたり、と楽しそうに工夫する様子がみられた一方、ただ本を寝かせておくだけにしたために、出しっぱなしになっていると勘違いされ、片づけられてしまった子も何人かいました(基本的には、手を出さないスタンスでいたのですが、さすがに見かねて展示用イーゼルを配りました)。こちらも、なかなかアピールする力があり4年生の男の子が「この本、気に入った!」と、展示されている本を持ってうれしそうに借りに来て、対応した同じクラスの図書委員の男の子が、「(紹介者に)伝えておくよ!」と応じる爽やかな一幕もありました。 
 

 前任者から、マルチを引き継いで2年目の3学期を迎えました。図書館や児童サービスについては、仕事を通した経験も学びの経験もありはしたものの、学校は全くのはじめて。とまどうことばかりで、日々をまわすだけでいまだ手一杯といったありさまですが、専任の司書がいるようになってからは10年が経過した本校、子どもたちや先生がその存在に慣れ、関わることが当たり前になりつつある状況に助けられています。

(東京学芸大学附属大泉小学校司書 富澤佳恵子)



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