今日はじめて学校に行くの!

2020-04-11 17:07 | by 富澤(主担) |

日々、ニュースでは新型コロナウィルスが猛威をふるっているとの情報が更新され、本校では、始業式も入学式も5月の連休明けに延期となりました。子どもたちが、また元気に来館してくれるのがいつになるのか見通しが立ちませんが、「今できること」として、新4年生を対象にしたブックトークを新しく作ってみました。

 

【シナリオ】

 4年生への進級、おめでとうございます。今日からみなさんも、高学年。1年生から3年生に頼りにされる存在になったわけです。さて、4年生にもなると、小学校生活なんてお手の物、あれもこれも「あたりまえ」にできるようになっていますか。ちょっとこの時期に、1年生のときはどうだったかな?と、もう一度思い出してみると、年下の人たちを助けるときのヒントになるのではないでしょうか。そこで、「今日はじめて学校に行くの!」というテーマで、本を4冊ご紹介します。まずは、この本・・・

 

『くんちゃんのはじめてのがっこう』

(ドロシー・マリノ さく/まさき るりこ やく,ペンギン社)

 


 もう、1年生のときに読んで知っている?でも、どんな内容だったか覚えていますか?思い出すためにも、一緒に見てみましょうか。

 こぐまのくんちゃんは、ある朝とても早く起きます。そう、今日から学校、今日から1年生、うれしくてしかたがありません。朝ごはんのあと、お母さんと早速学校にでかけますが、その途中で、ミツバチ、こうもり、ビーバーに、「ぼく、がっこうへいくんだよ」と話しかけます。
 でも、学校につくと、お母さんは帰ってしまいます。すぐに1時間目がはじまるのですが、小さい学校で上級生も同じ教室にいるので、自分がまだできない「教科書を読むこと」や、「字を書くこと」、「計算すること」を、上級生がさせられているのをみて、どんどん不安になってきてしまいます。そしてついに、先生に「でてきて このいすに おかけなさい」と声をかけられたとき、教室を飛び出してしまうのです。でも、くんちゃん、家に帰ってしまったわけではありません。ちゃんと、窓の外から見ています。

 さて、この後どうなるか、思い出しましたか?先生に、こっぴどく叱られたんでしたっけ?最後は、ひまわりを抱えたくんちゃんが「これ、がっこうへ もっていって せんせいに あげるんだ」と言っていますよ。どうやら、だいじょうぶだったようですね。

 ところで、「あれ?」と思った人はいませんか?くんちゃん、ひまわりを抱えています。こっちの場面では、くんちゃんのお父さんが、りんごを取っています。ひまわりも、りんごの実も、春にはありませんよね。くんちゃんが1年生になったのは、そう、9月なんです。日本では、学校は4月にはじまるのが「あたりまえ」ですが、どうも世界には、そうではない学校もたくさんあるみたいですよ。

 この『外国の小学校』では、インドネシア、イタリア、アメリカの小学校が紹介されています。一番最後の「資料のページ[三つの国のちがい]」に、「学校の1年間」が、表にまとめられています。それによると、イタリアとアメリカはくんちゃんの学校のように、9月に1学期がはじまりますが、インドネシアの学校はなんと7月です。


『外国の小学校(たくさんのふしぎ傑作集)』

(斎藤 次郎 文/西山悦子 写真,福音館書店)

 

 資料のページ以外の部分も、読むとけっこうびっくりすることが書いてあります。休み時間の校庭に屋台がきて、おやつが買えるとか、学校図書館で本を借りるには、お金を払わないといけない(!)とか、小学校は5年生までしかないとか。ただ、この本が作られたのは、もう34年ほども前なので、今も同じかどうかはわからないのですけれどね。興味があったら、ぜひ最新情報を調べてみてください。でも、こんな学校が世界にあったことは確かだし、今も日本の「あたりまえ」とは違う学校生活を送っている子どもたちが、世界にはいるんだろうな、と想像できますよね。

 小学校が5年生までしかないのは、『外国の小学校』によれば、イタリアでした。でもアメリカも、日本とはちょっと学年のわけかたが違うみたいです。日本での小学校の1年前から、子どもたちは学校に行き始めるんですって。その1年間の生活は、日本の「幼稚園」に近いのですが、「みんなが行くし、普通は行かなきゃいけない」という意味では、「学校」といっても良いでしょう。「プレ・スクール」とも呼ばれています。

 この『ラモーナは豆台風』は、ラモーナという元気な女の子が、その「プレ・スクール」に行く最初の日からお話が始まります(本では「幼稚園」となっていますので、そうよびますね)。

 

『ラモーナは豆台風』

(ベバリイ・クリアリー 作/松岡 享子 訳
 /ルイス・ダーリング 絵,学研教育出版)

 

 お姉さんのいるラモーナは、もうすでに「幼稚園」のことはよく知っていて、この日を心待ちにしていました。担任のビネー先生は、若くてきれいな女の人で、ラモーナはすぐに大好きになります。でも、良いことばかりではありません。まず、先生が「さしあたり」と言ったのを「かしあたり」と聞き間違えて、「お菓子がもらえる」と勘違い、恥をかきます。それから、スーザンという女の子の髪の毛が、あんまりきれいなまき毛なので、つい、ひっぱってしまうのです。手をはなしたときに「ボイーン」ともとにもどるところが、どうしても見たくなってしまったばっかりに。もちろん、やさしくひっぱるつもりだったのですが、うまくいかなくてスーザンが泣き出したので、はじめての日なのに、さっそく先生に怒られてしまうのです。

 ラモーナは、一生懸命良い子になろうとしているのですが、どうしてか変なことになってしまって、まわりに「どうしようもない子」と言われてしまうような女の子です。それで、しょっちゅう「みんなわたしのことをわかってくれない」と、不満に思ったり、悲しくなったりしているんですが、きっとみなさんも、「わかるなあ」と思うような場面が沢山でてきますよ。そして、なんとこの本の最後の章の題名は「幼稚園中退」ドキッとしてしまいますね。そんなことになってしまったのには、またスーザンとまき毛が関係しています。一体ラモーナに何があったのか、ぜひ読んで確認してみてくださいね。

 最後は、黒柳徹子さんという、80歳をすぎた今でも活躍している女優さんの、本当のお話です。「トットちゃん」は徹子さんのことです。この「トットちゃん」という名前については、「名前のこと」という章がありますので、そこを読めば、詳しくわかりますよ。



『窓ぎわのトットちゃん』

(黒柳 徹子.講談社)

 

 ラモーナの本に「幼稚園中退」という章がありましたが、日本で、小学校を1年生で本当に退学になってしまった女の子が、トットちゃんなのです。なんでそうなったのか、トットちゃんの担任の先生が、トットちゃんのママに語ったことを紹介しますね(pp.12-20.をかいつまんで紹介)。こんな1年生、どうでしょう?「同じ教室にいたらちょっと困るな」って思いますか?でも、この本には、こんなトットちゃんが楽しく通える学校が、ちゃんとあった、ということが書いてあるのです。さて、どんな学校だったでしょうか?読んだら、きっと色々びっくりすると思いますし、うらやましいなあ、と思うところもあるかもしれません。
 トットちゃんが大人になってから子どものときのことを振り返っているので、「大人の考え」が書いてあって難しいところもあると思いますが、よくわからないところはとばして大丈夫です。目次をみて、気になったところから読むのでも良いでしょう。挑戦してみてくださいね。

 さて、1年生になったときの気持ちを思いだせましたでしょうか?今年の1学期は、みなさんにとって「あたりまえ」のはじまりかたをしませんでしたが、そもそも、はじめて学校に行くようになるって、それまでの「あたりまえ」が大きく変わった時だったのではないでしょうか。それで、すごく嬉しい、楽しいこともあるけれど、難しい、つらい、悲しいことも経験するし、不安にもなりますよね。お兄さんお姉さん、1年生の心強い味方になってあげてくださいね。

 (東京学芸大学附属大泉小学校 司書 富澤佳恵子)

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