光村線各駅停車

2020-11-11 22:32 | by 杉本(主担) |

 中学校では国語の授業で「様々なジャンルの本を読ませたいのでブックトークをしてください。」と依頼されることがあります。ブックトークは中学校司書にとって生徒に直接たくさんの本を紹介できるまたとない機会です。昨年度前任校で2年生におこなったブックトークのご報告です。

さて今回はどんなテーマで本を紹介しようかと考えたとき、国語の教科書の中の本を紹介してこなかったことに気づきました。教科書で紹介されている本は、多くの学校が持っているので相互貸借で冊数を集めることも可能です。

 教科書の各単元では興味深い関連本が紹介されています。これらの本を一回のブックトークで紹介できないかと考えて作ったのが、「光村線各駅停車」です。

 


教科書全体を光村線という電車の路線に、各単元名を停車駅にたとえました。

名付けて「光村線各駅停車」です。

「皆様、光村線各駅停車にご乗車くださいましてありがとうございます。」と話し始めると生徒たちは最初キョトンとしていましたが、だんだんくすくす笑いがおこりました。

 最初の「アイスプラネット」駅では、椎名誠さんの作品を紹介。岳くんの芋ほり体験の顛末や、小説の主人公にされた岳くんの受難をみていたお姉さんが「絶対にわたしのことを書いてはダメ」といっていたけれど、その後やっとお許しが出て、椎名さんは「海ちゃん おはよう」という本を書くことができたといういきさつを話しました。(『岳物語』椎名誠 集英社、『海ちゃん、おはよう』椎名誠 新潮社、『孫物語』椎名誠 集英社)

二駅目は「枕草子駅」です。宮廷での人間模様を織り交ぜて、清少納言のライバル紫式部の関連作品も紹介しました。(『紫の結び』荻原規子 理論社、『紫式部の娘 賢子はとまらない!』篠綾子 静山社)


 「生物が記録する科学駅では、動物についての人気本『ざんねんないきもの事典』(今泉忠明 高橋書店)と『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!』(小林朋道 築地書館)をとりあげました。

いくつかの駅に停車して、最後の終着駅は「本の世界を広げよう」駅です。ここでは、以前課題図書にも選ばれていた『ある晴れた夏の朝』(小手るい 偕成社)とともに、クラウドファンディングで映画にもなった『この世界の片隅に』(こうの史代 徳間書店)とハワイに住む日系2世の少年のパールハーバー前後の体験を描いた『マレスケの虹』(森川成美 小峰書店)を紹介しました。

 テーマにそって、いろいろな切り口で様々なジャンルの本を紹介していく本来のブックトークとは方法が異なりましたが、パワーポイントで画面を切り替えながら、さくさく本を紹介していく試みは、生徒の集中力も切れずに、最後までしっかりと聞いてくれました。楽しんでくれたでしょうか?ブックトーク後、生徒のみなさんが準備した本を借りていってくれたときはホッと胸をなでおろしました。


             (東京学芸大学附属小金井中学校 司書 杉本ゆかり)

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