新しい一歩を踏み出すあなたへ。

2021-03-08 09:41 | by 松岡(主担) |

 3月。進級、卒業、進学、就職など、新生活に向けて準備をする人も多い時期ですね。今月は新たな一歩を踏み出す人へ花束を贈るような気持ちで、言葉や本を束ねた「ブックトークのブーケ」をイメージした本の紹介をお届けします。
 最初に紹介するのはこちらです。










『ほんとうのリーダーのみつけかた』

梨木香歩/著 岩波書店 2020年

 この本は多くの作品を手掛けている作家の梨木香歩さんが2015年に講演したお話を書籍化したものです。2020年、新型コロナウイルスの蔓延は私たちの考え方や感じ方にも影響を与えています。不安な気持ちに直面したり、何を信じたらいいのかわからなくなった時、あなたを導く「ほんとうのリーダー」とは誰なのか。
講演当時、梨木さんが投げかけたメッセージを今こそ届けたいと出版されたのだと感じました。
 当時の講演は梨木さんが書かれた『僕は、そして僕たちはどう生きるか』(岩波書店)の文庫化にあたっての企画で、本書でこの作品にも多く触れ、また書名を見てぴんときた人もいるかと思いますが、『君たちはどう生きるか』(
吉野源三郎/著 マガジンハウス他)を意識して書かれていることからこちらの作品についても触れています。併せて読むのもおすすめです。

 日々の生活の中では、身近な人の言葉に傷ついたり、この場からいなくなってしまいたくなるような居心地の悪さを感じる時があると思います。「あなたは一人しかいない大切な存在」と語りかけられても実感がわかない、そんな時に思い出してほしい一冊を紹介します。




『あなたがうまれたひ』
デブラ・フレイジャー/さく 井上荒野/やく
福音館書店 1999年

 「あなたが うまれて とっても うれしい!」というメッセージを送る作品はたくさんありますが、身近な家族だけでなく、自然が、地球が、宇宙が(!)、生まれてくる自分を迎えてくれていたのかと思うとなんとも嬉しく、心強い気持ちになれる科学絵本です。一つ一つの言葉はシンプルなので、読み聞かせにもおすすめです。

 本は不思議なもので、自分のことを知らない遠い存在の著者が作品を通してある時は語りかけ、時に見透かされ、またある時は励ましたりしてくれます。だけど、あなたが本を手に取って、ページを開いて、そこに書(描)かれているものを読まないと出会うことはできません。
 そこで最後に紹介するのはこちら。







『ほんはまっています のぞんでいます』
かこさとし/作・絵 復刊ドットコム 2017年

 この本が最初に刊行されたのは1985年なので、35年以上前のかこさとしさんのメッセージを時を経て読むことができます。この本の中でかこさんは「ほんを よみたくないのに、すきでもないのに、むりに よむことはありません。そういうときは そとで あそんだり、ともだちと げんきに かけたりして たのしみましょう。」と語りかけます。だけど、
本を読みたいと思ったら、いつでも、誰でも読むことができる場所として図書館が挙げられています。

 本の世界は壮大です。とても広くて、奥が深いです。ここでは紹介しきれないくらいたくさんのすてきな言葉やメッセージが本の中にはあります。だけど、本はとても身近です。どんなに遠い国でもどんな時代でも、誰にでも、本の中では出会うことができます。
 本はいつでも待っていてくれますので、好きなときにどうぞ手に取ってくださいね。

(東京学芸大学附属小金井小学校 司書 松岡みどり) 

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