今話題の社会問題に目を向けよう

2021-05-11 08:00 | by 金澤(主担) |

 6年生に進級した皆さんに、「今、世の中で話題になっている社会問題を題材にした本を紹介します」

『With You ウイズ・ユー』濱野京子(作)くもん出版
 「ヤングケアラー」という言葉を聞いたことはありませんか?大人の代わりに家事や家族の世話、介護などを行っている18歳未満の子どものことです。
 優秀な兄といつも比べられていることに不満を持っていた悠人。家にいると息が詰まると受験勉強の合間に気晴らしに走っていた。その時に夜の公園でブランコに乗ってぼんやりしている朱音と出会った。中学2年生の朱音は、父は単身赴任で家にいず、病気の母の世話、小さい妹の世話を一人で担っていた。何とか力になりたいと思う悠人だったが・・・
 


『むこう岸』 安田夏菜(作)講談社
 佐野樹希は、ヤングケアラーであり、貧困に苦しんでいる。彼女は、父を交通事故で亡くし、母と小さい妹の世話をしてきた。働き手の母が病気のため収入がなく、生活保護を受けている。
 勉強だけは得意だった山之内和真は、有名な進学校に入学した。しかし、その学校で挫折し、中学3年生で樹希のいる公立中学に転校してくる。
 「カフェ・居場所」に顔を出すようになったふたり。お互いの立場の違いに、初めは理解しあえなかったが、徐々にお互いの状況を理解し、何とかできないかと中学生なりにもがいていく。


 生活保護についてもっと知りたい人には、マンガ『健康で文化的な最低限度の生活』小学館 もおすすめです。

『団地のコトリ』八束澄子(作)ポプラ社
 居所不明児童がいると聞いたことはありませんか?
 父は、美月が小学4年生の時に過労で亡くなった。それ以来、母が一人で家計を支え、二人で団地で暮らしている。中学生になった美月は、お母さんが元気でいてくれることを日々祈って生活していた。
 同じ団地に住む柴田のじいさんは、団地のリーダーとして活躍していたが、奥さんを亡くしてからは、めっきり元気がなくなっていた。しかし、一人暮らしのはずの柴田のじいさんの家に誰か住んでいる?
 美月は、大好きなおばあちゃんが残してくれたインコを育てていた。ある日、そのインコが柴田のじいさんの部屋の窓にいるのを発見した。その時に住んでいるはずのない女の子がいることに気が付いた…
 その女の子は、病気の母と隠れるように柴田のじいさんの家に住んでいたのだが・・・
 

『故郷の味は海をこえて』~難民として日本に生きる~ 
安田菜津紀(著)ポプラ社

 難民という言葉を聞いたことがありますか?戦争や紛争などから自分たちの命を守るためにやむを得ず母国を離れて逃げて来なければならなかった人たちのことです。日本で難民として受け入れられた人々は、2018年には、0.25%でした。カナダは、56.4%、アメリカは35.4%ですから、日本は、とても低いです。
 著者は、難民となって日本に来た人に、故郷の料理を囲みながら、なぜ母国を離れなかればならなかったのか、どうやって日本までやってきたのかをインタビューしました。
 
 難民についてもっと知りたい人には、『となりの難民』~日本が認めない99%の人たちのSOS~  織田朝日(著)旬報社 もどうぞ!



『ふるさとって呼んでもいいですか』
〜6歳で「移民」になった私の物語~ ナディ(作)大月書店

 イラン・イラク戦争後、経済が不安定だったイランから、ナディは両親と弟二人の五人家族で、日本にやってきた。ナディが6歳の時だ。日本での生活に希望を持ってやって来た家族だったが、ビザを持たないため、在留資格のない外国人となってしまった。いつイランに強制的に返されるかわからない。言葉、習慣、文化の違いに苦労しながらの生活だった。


 

 小学校最後の1年間どんな本に出会って卒業してくれるのか、ただ面白おかしい本ばかりではなく、ちょっと立ち止まって考えることのできる本にも出会ってほしいという願いから、このようなテーマで本を紹介しました。
                  (東京学芸大学附属世田谷小学校 司書 金澤磨樹子)

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