数を数えて、おっとびっくり!
2021-11-10 09:50 | by 富澤(主担) |
皆さんは、数を数えるのが得意ですか?私は、実はかなり苦手です。しょっちゅうまちがえるし、すぐいくつ数えたかわからなくなるので、たくさんのものを数えなければいけないときには、なるべく10ずつにわけて、落ち着いてやるようにしています。そんな私が絶対にやりたくない作業の一つを、見事にやってのけている本が、こちらの『いちご』(荒井真紀さく、小学館、2020年)です。
いちごの実を噛むと、プチプチと音がしますが、その音の元になっているのは、いちごの種です。一粒のいちごに、どれくらい種がついていると思いますか?70個くらいだと思う人?150個くらいだと思う人?300個くらいだと思う人?この本によれば、大きい実で、なんと約300個もとれるそうですよ!このページには、数えた種が、こんなに綺麗に並べられていますが・・・、本当に300個描いてあるので、びっくりです。数えるのが苦手な私でも、こうやって綺麗にならべてあれば、少しは楽に数えることができる、という発見もしました。
種の他にも、とても丁寧に、いちごについて、育ち方や、花や実のつくりなどを綺麗な絵で見せてくれているので、ぜひじっくりご覧ください。それから、自分が食べるいちごに種が何個あるのか、気になるしやってみたい、という人は、お家の人や先生にきいてから、チャレンジしてみてくださいね。
さて、数を数えたことで、これまで当たり前に、何気なく見ていたものが、ちょっと違って見えたり、前より意識するようになったりするような「おっと、びっくり」を紹介しましたが、次は、魔法のせいで、数を数えるたびに「びっくり」な目にあわされてしまうお話です。
ある日、一人の魔法使いが、屋台に魔法の傘を忘れてしまい、その傘を、お百姓さんが拾って、おかみさんに渡したことで、事件は起きます。なんとその傘は、それを手に持ったまま「1・2・3」と「3」まで数えると、どこにいても次の瞬間、家に帰ってしまう、「5」まで数えると、そのとき、一番行きたいと思っていたところに行ってしまう「7」まで数えると、空中に舞い上がって、一番近くの教会の塔のまわりをグルグルグルグルまわってしまう、というしろものだったのです。この傘のせいで、おかみさんは、市場で卵を売っていたはずが、家に急に帰ってしまったり、ごはんのあとでのんびりしていたはずが、自動車の中に飛び込んで、知らない人の膝の上に座っていたり、教会の塔の上をグルグルまわるはめになったりと、「おっと、びっくり」どころではない、さんざんな目にあうことになるのです。
うっかり、魔法の傘を拾ったりしないよう、いくら急な雨で困っても、誰のものかわからない傘を軽い気持ちで勝手に使うようなことは、やめましょう。とはいえ、このおかみさんは、教会の塔のまわりをグルグルまわることにはなったものの、ケガなく地上に戻って、また元気に生活できるようになりました。数を数えることではたらくのが「魔法」ではなく、「呪い」の場合は、もっと恐ろしいことになります。
「アナンシと五」(『子どもに聞かせる世界の民話』矢崎源九郎編、実業之日本社、1979年)のお話の場合はどうでしょうか(あらすじの説明でなく、そのままお話を語っても)。
むかし、ジャマイカに「五」という名前の魔女がいて、その名前で呼ばれることがあんまり嫌なので、「五」という言葉を言った者が死ぬように、と呪いをかけました。偶然、それを聞いたアナンシが、何も知らないアヒルの奥さんや、うさぎの奥さんをまんまとだまして食べてしまいます。でも、悪いことは続けられないもので、最後は、自分がそのわなにはまって、やっつけられてしまう、というお話でした。アナンシというのは、人間の姿をしていたり、時々クモに化けたりもする「とにかくわるいやつ」という、少し怖くて不思議な存在ですが、どこかまぬけなところもあって、にくめません。そんな、アナンシの出てくるお話ばかりを集めた本も出ているくらい、なかなかの人気者のようですよ。このお話が気にいった人は、ぜひ、他のアナンシのお話も読んでみてくださいね。
『クモのアナンシージャマイカのむかしばなし』
(フィリップ・M.シャーロック再話、マーシャ・ブラウン絵、小宮由訳、岩波書店、2021年)
さて、数を数えた結果が「びっくり!」だけではすまなくなってきたところで、最後の本の紹介です(短い絵本なので、全部読んでも)。
『10にんのきこり』(A.ラマチャンドランさく、田島伸二やく、講談社、2007)10人の木こりが、一本ずつ山の木を切るたびに、見えてくるものに気が付いて、最後のちょっと怖い展開がわかった人もいたのではないでしょうか?これは、インドの作家による絵本です。インドという国は、「0」という数を発見して、数えられるようにした国なのです。一見単純なお話のようですが、この絵本には、なかなか深いメッセージが込められていると思いますよ。
さあ、ついに0にたどり着きましたので、このブックトークもこれでおしまいです。ただ数を数えるだけのはずですが、実はちょっと危険な冒険でもあったように思います。皆さん、ちゃんと全員いますか?誰かいなくなったり、増えたりはしていませんね。数をかぞえて「おっとびっくり!」な、ことには・・・幸いなっていないようなので、本当に良かったです。ぜひ、本の中で、安全に「びっくり」な体験をしてきてください。
2年生に、「まほうのかさ」と「アナンシと五」を朗読するうちに思い浮かんだシナリオです。2年生だと、このブックトークはボリュームがありすぎるように感じますので、実際にやるなら3,4年生あたりが良いのではないかと思っています。