今、鎌倉がアツい!

2022-09-05 14:09 | by 宮崎(主担) |

 6年生のみなさんは、日本の歴史の勉強をしていますね。今日は、今大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも盛り上がっている、平安末期から鎌倉時代をより面白く知ることのできる本を紹介していきたいと思います。 

 

 まず、源平の戦いの大きな流れを、読み物として面白く読めるのが『源平盛衰記 全3巻』(三田村信行 ポプラ社 2004)です。平清盛源氏が敵対することになる平治の乱から、平家が台頭し栄華を誇るなか、流人となっていた頼朝が平氏討伐に兵をあげ壇ノ浦に追い詰めてついに平家を滅亡させる源平合戦そして征夷大将軍となって鎌倉幕府を開いた源頼朝もあっけない死を迎え源氏3代で滅亡してゆくまでの、歴史の大きなうねり、まさに栄枯盛衰がよくわかります。 

 
 
伝記で、平清盛源頼朝源義経木曽義仲北条義時北条政子などの重要人物の一生を読むのも、流れを追って事実を押さえることができ人物の生きざまや魅力を感じることもできて、おススメです。 

 

 今年の大河ドラマでは、源頼朝亡き後、鎌倉殿を支えていく13人の重臣を描いていますね。とはいえあっという間に次々殺されて13人がどんどん減っていくのが恐ろし、中世って野蛮だなあと思わずにいられないのですが、そんな13人を描いた本が『鎌倉バトルロワイヤル』(楠誠一郎 講談社 2021)です。だれが生き残るのか? 裏切り、密告、陰謀が続くドロドロの権力闘争に「バトルロワイヤル」とはまさにいいタイトルをつけたと思いますが、中身は13人一人ひとりの短い伝記となっていて読みやすいです。ドラマのネタバレ覚悟で読んでください。 

 

 さて、ここからは、歴史的に少し違った解釈や、ファンタジー要素を盛り込んだ物語です。 


 『さよ 12歳の刺客』(森川成美 くもん出版 2018)の主人公さよは、
架空の人物ですが、平清盛のひ孫として生まれ、平家が滅んだ壇ノ浦の戦いで、かろうじて生き残ったという設定です。平泉の近くでかくまわれ、男子の恰好をして身を隠していました。そこへ、憎い仇の義経が平泉に逃げてくるという知らせを聞き、絶対にかたき討ちをしようと行動を起こすのです。さよの強くかっこいいキャラもいいのですが、敵役の義経がすごく卑怯な人間として描かれていて、よくあるかっこいい義経像でないのも新鮮です。かたき討ちがどうなるかはぜひ読んでみてください。
 

 

 また頼朝の少年時代を舞台としたファンタジーが『風神秘抄』(荻原規子作 徳間書店 2005)と続編『あまねく神竜住まう国』(荻原規子作 徳間書店 2015)です。『風神秘抄』では平治の乱で頼朝の父につかえる若武者の草十郎が主人公ですが、平家に敗れて敗走するなかで、少年頼朝に出会い護衛することになります。草十郎は母親から受け継いだ笛が得意でしたが、舞手の糸世という少女と出会うことで、不思議な力に目覚めていきます。 

 続編『あまねく神竜住まう国』では、15歳の頼朝が蛭が小島で流人となってなお命を狙われながら、何とか生き延びていく話です。ここでも草十郎と糸世が力を貸しますが、自分自身の運命を受け入れ、生きていこうとする姿に心惹かれます。大河ドラマでは、憎らしいことこの上ない頼朝ですが、命を狙われ続けた少年時代を生き延びたら、あんな疑い深い人格になるのも仕方ないか、という気もしてしまいました。今回は頼朝目線で紹介しましたが、この2冊の主人公は草十郎と糸世で、二人がひかれあっていくところがとても素敵なので、歴史ファンタジーが好きな人におススメです。 

 

 歴史ファンタジーといえば、忘れてならないのが『白狐魔記』シリーズ。このシリーズは、仙人について修行をし不老不死となった人間のことを知りたいと、時代時代の歴史上の人間に関わっていく物語です。1冊目の『源平の風』(斉藤洋 偕成社 1996)では、源義経が兄に追われ落ちのびていくところに出会い、義経の身代わりとなろうとする忠臣佐藤忠信に心を打たれます。次の巻では鎌倉中期の元寇の時代まで飛び、次は室町時代というように続いています。人間の心を知りたいと思う狐の視点で描かれているため、その時代の人間の考え方や生き方を客観的にみることができ、歴史の理解にとても役立つシリーズだと思います。歴史って暗記するだけでつまらないと思う人こそ読んでみてほしいシリーズです。 

 

 もう一つ、『月白青船山』(朽木祥 福音館書店 2019)は、現代と鎌倉がつながるタイムトラベルファンタジーです。夏休みに鎌倉にある大叔父の古い屋敷に預けられた兄弟が、切通の道を滑って遊んでいるうちに、時の止まった谷へ迷い込んでしまいます。そこ、頼朝の娘で悲劇の姫ともいわれる大姫の伝説とつながっていくのです。鎌倉の町に行ってみたくなるような土地の歴史に関わるなぞ解きもあり、読み応えのある物語です。 

 

 ほかにも、鎌倉時代の女性ばかりのエピソードを集めた『源平姫 落花の章』(藤崎あゆな 集英社みらい文庫  2021)や『きずなの兄弟と鎌倉殿 曾我兄弟物語』(時海結以 講談社青い鳥文庫 2022)など読みやすい文庫本もあります。鎌倉時代に興味がわいた人はぜひ読んでみてくださいね。 

(東京学芸大学附属竹早小学校司書 宮崎伊豆美) 

 


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