「文化の盗用」を考える

2022-11-10 11:14 | by 岡田(主担) |

 3年生の男子が「文化の盗用について考えたい」とカウンターに来ました。「公民の先生に質問したら図書館に行ったらヒントが得られるから相談するように言われました」とのことです。今年の新一年生から本格的に探究学習が始まった学校も多いと思います。皆さんの図書館でも様々な探究資料を求められて、教員と一緒に苦労なさっている事のではないでしょうか。「文化の盗用」も探究のテーマとしていずれ取り上げられるのではと以前から考えていました。今回は公民の教員からの依頼としてブックトークを紹介します。


『FASHION 』キャサリン・フランク 2013 河出書房新書 383,1フ ISBN:978-4-309-25550-7
最初に「文化の盗用」が一般的に知られるようになったのはファッション関連からではないでしょうか。アメリカの補正下着ブランドが「KIMONO」として商標登録申請をしていることが問題とされたり、チャイナ服をパーティードレスとして白人女性が着た事がSNSで炎上したりしました。ファッションを個人だけの関係性で捉える人は、今の時代いないと思います。ファッションがその時の社会や政治、経済状態を色濃く反映していることが、古代から現代まで包括的に記載されてます。例えば、オリエンタリズムの時代を覗いてみるとヨーロッパでの東洋の意味やエキゾチズムの捉え方が理解できます。

 
『ファッションスタディーズ』蘆田裕史 2022 フィルムアート社 589.2フ ISBN:978-4-8459-2109-6
生徒から質問があった、今話題に上がっているチャイナ服の歴史ついての記載がされていました。ファッションの理論が現代文化として読み解かれています。23のキーワードが提示されており1.理論編 2.事例編 3.文献で読み解くファッションスタディーズと3部構成となっています。スマフォでの検索に馴染んでいる生徒にも「自分自身の問題」として捉えられるように読みやすい工夫がなさてれいます。


『ポスター万歳 百窃百笑』田島奈都子 文生書院 2022 727.6タ ISBN:978-4-89253-651-9
戦前期の日本のポスターがどのように欧米の作品に影響を受けていたかを、右と左の見開きでページで比較できるようになっています。視覚的にも楽しい本ですので、生徒と一緒に類似点や相違点を探しあってみたらいかがでしょうか。みんなで話し合える、生徒参加型のブックトークになると思います。


『墨 2022 11/12月号 見えないもののかたち』 萱のり子 二玄社
奈良国立大学機構奈良教育大学教授(芸術科学)の萱先生の第3回目のテーマは「芸術文化にひそむ危ういカゲ」です。文化や伝統にはどの時代にも内と外が存在している事。内と外の概念が情報社会の発達により以前のような地理的・物理的なことだけに限らなくなっている点などが指摘されています。SNSで毎日情報を発信・受信している生徒には頷ける内容ではないでしょうか。書の鑑賞に関しても、良し悪しの判断を求められると「規範性」「個性」の対立する問題が立ち現われると書かれています。本校の芸術科目書道選択の生徒は、集大成として最後に作品の展示会が例年行われます。友達の書道作品を鑑賞する際にこの指摘を意識して作品をみて下さい。書を通じて「文化とは何か」との新しい視点が生まれる事と思います。

              (東京学芸大学附属高等学校 司書 岡田和美)

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