天狗と河童と、そして鬼
2013-02-08 02:29 | by 中山(主担) |
東京学芸大学附属小金井小学校司書 中山美由紀
(2月8日KOGANEI授業セミナー 配布資料訂正版 BT 天狗と河童と、そして鬼20130212.pdf)
3年生が、鬼の物語をつくるというので、年明けから、天狗と河童と鬼の本の紹介をしてきました。本格的なブックトークにはなっていませんが、テーマの本と本のつながりを考えて紹介してみました。
1.天狗
初詣にはいきましたか?どこにでかけた?高尾山に行った人?そう、あのお山には薬王院というお寺があるのです。行くと、大きな顔がお迎えしてくれます。覚えている人?そう、天狗です。
『高尾山自然観察ガイト』(茅野義博著 山と渓谷社 2005年)
赤い顔の高い鼻は大天狗。緑の顔の鳥のくちばしをもっているのが、小天狗、またはカラス天狗といいます。
源義経、小さいころは牛若丸といいましたが、彼の剣術のおけいこは、鞍馬山の天狗たちがおこなったという伝説もあります。
天狗は山に住んでいるとされていますね。山で厳しい修行をする山伏のイメージがあるのです。この本にその姿が解説してあります。
『妖怪図鑑』(常光徹・文 飯野和好・絵 童心社 1994年)
「天狗倒し」「天狗揺さぶり」「天狗笑い」「天狗つぶて」など、山の不思議な出来事は天狗の仕業といわれています。天狗はまた子どもをさらうとも言われています。「天狗隠し」
戦国時代、相模の国、今の神奈川県の大山の天狗にさらわれてしまった九郎丸という少年がいます。
『完全版 天狗童子―本朝奇談』(佐藤さとる著 あかね書房 2009年)天狗たちに鍛えられて、天狗の持つ不思議な力をなんとかつけてゆきます。(表紙を見せて)ほら、翼が生えてるでしょう。戦国時代ですからね、滅ぶ、滅ぼされるという戦いに九郎丸も巻き込まれ、空を駆け巡って大活躍をします。そして、彼はもともとどんな家の生まれだったか次第にあきらかになってくるのです。
「天狗隠し」だの「神隠し」は子どもがさらわれていなくなってしまうことですが、その場で姿が見えなくなってしまう技というか、とっておきのものを天狗は持っていると言われています。
「天狗の隠れ蓑」って聞いたことある?あら、知っている人は少ないですね。
「ハリーポッターのかくれマントみたいなやつ?」(と、子どもから声がかかる。)
そうそう、そうです。
蓑も知っていますか?
歴史の本や昔の道具などでみておきましょうね。浮世絵なんかにも出てきますね。
『かくれ山の冒険』(富安陽子著 PHP研究所 2000年)
この本では、ボールを追って入りこんでしまった不思議の世界「かくれ山」で、とらわれて猫の姿になってる子どもたち、毎日仲間を食べられてしまうねずみたちにであった主人公の尚が、天狗の隠れ蓑の力を借りようとして、天狗を訪ねに行く場面があります。他にも鬼や山姥など、人の力よりもずっと、威力のある不思議な力を持っているものの助けを借りて、魔力を持つ猫夫人とたたかいます。さて、尚君は無事に家にかえれるんでしょうか?とらわれた子どもたちは? 最後は、びっくりする結末も待っています。ぜひ読んでみてください。
では、最後に彦一とんち話から「てんぐのかくれみの」のお話しを読みます。
2.河童
この前は天狗の話でしたが、今日は河童。
津軽弁で書かれたこの本の「河童」を読みます。
『なんげえはなしっこしかへがな』(北彰介さく 太田大八絵 銀河社 1979年)
ドボーン スイスイスイ ドボーン スイスイスイ ドボーン スイスイスイ……
河童といえば、色は? 緑ですね。(さきの『妖怪図鑑』をみせて、ところどころ読む。)
でも、『河童よ、でてこい(たくさんのふしぎ傑作集』(武田正著 梶山俊夫絵 福音館書店 1998年) には、紅葉と一緒に体の色かえる河童もいると紹介されています。
ほら、赤い河童もいるんだよ。岩手県遠野の河童は、赤いといわれています。
遠野のカッパ淵はこんな感じ(写真を見せる)
だとすると、前に読んだ『おっちょちゃんとかっぱ』(長谷川摂子文 降矢なな絵 福音館書店 1997年)は、遠野の河童かもしれません。 赤い河童のガータロに誘われて、おっちょちゃんは河童の国の子なってしまう話でしたね。
そんな風に、河童もこどもをさらうといわれています。好物はキュウリや魚なのですが。
逆に子どもに拾われる河童もいます。
『じっぽ―まいごのかっぱはくいしんぼう』(たつみや章著 広瀬弦絵 あかね書房 1994年)
台風の去った後に、ゴミ置き場から拾ってきたどろだらけでふにゃふにゃしていたのが、実はかっぱでした。たろうは「じっぽ」と名づけます。いきなり、おかあさんの大事にしていた熱帯魚を食べちゃうんです。このあと、学校につれていっては騒動が起き、大学の研究室でもひきとって解剖したいとか、じゃあ。救出しないと……と、救出作戦開始です。
たろうとじっぽのように、おなじく少年と河童、庸一という少年とクゥという河童のお話 『河童のクゥと夏休み』がありますが、その続編 『クゥと河童大王』(小暮正夫著 こぐれけんじろう絵 岩崎書店 2008年)では、日本各地に散らばっている河童たちを集めようとしている河童大王一族がいて、彼らもとに河童のクゥや他の河童たちをつれていこうと、天狗たちが活躍する話です。三の坊の天狗として、高尾山の天狗も出てきますよ。
今の世の中に河童がでてくる3つのお話しでしたが、次から紹介するのは、河童自身が主人公のものです。芥川龍之介が書いた河童はこんな絵です。(といって、大きくプリントしたものを見せる。)ちょっと、こわいですね。もっと、身近な感じの河童が主人公のお話を紹介しますね。
『とどろヶ淵のメッケ』 (富安陽子著 広瀬弦絵 佼成出版社 2010年)
何でも見える千里眼を持ったたメッケが、滝の水が落ちてこない原因を探りに行きます。最後はメッケがいなことに仲間が気付いたところを読みます。そのあと、また何かが起こるのですけど、気になる人は読んでみてください。
『かはたれ―散ヶ池の河童猫』(朽木祥著 山内ふじ江絵 福音館書店 2005年 )
河童の八寸は、一族の生き残りで、1匹で散ヶ池に住んでいますが、他の一族の長老から一人前になるための修行に行くことを命じられます。人間社会で暮らすこと。猫の姿に変わるのですが…。ときどき、河童の姿になっちゃうんですね。
『たそかれ―不知の物語』(朽木祥著 山内ふじ江絵 福音館書店 2006年 )
中学校のプールにすみついている河童の不知。彼にはずぅっと待っている人があったのです。そこには、戦争の出来事が関わっていました。『かはたれ』の続巻で、その不知を八寸が説得することを命じられて行くのです。そこを離れない不知にはどんな過去があったのでしょうか。(本文中の校長先生のはなしも 朗読しました。)
3.鬼
『鬼がでた (たくさんのふしぎ傑作集)』( 大西広ぶん 梶山俊夫絵 福音館書店 1989年) 鬼ごっこ、百鬼夜行、仏さまの足元に踏まれている天邪鬼、風神雷神、世界の鬼、祭り 等を紹介。
以下、一部または全部を読み聞かせしました。
『鬼ぞろぞろ』 (舟橋克彦ぶん 赤羽末吉絵 偕成社 1978年)
『絵本 地獄―千葉県安房郡三芳村円明治所蔵』 (宮次男監修 白仁成昭ほか構成 風濤社 1980年)
『じごくのそうべえ』(田島征彦 童心社 1978年)
さて、もっと人間とおはなしする、かわいい鬼もいますね。いろいろな鬼、考えてみましょうか。
(東京学芸大学附属小金井小学校司書 中山 美由紀)