届けたい 伝えたい 大切な思いを手紙に託して…(中学生に)
2013-01-02 21:15 | by 中山(主担) |
最近手紙をもらったり、書いたりしたことはありますか?
近所から引っ越ししていった友人からもらったハガキには、とてもうれしくなることが書いてありました。
人のことを感動させることができる力が手紙にはあるのではないかと思います。
1. 『王への手紙(上・下)』(トンケ・ドラフト著,西村由美訳,岩波書店(岩波少年文庫),2005)
ダホナウト王国の見習い騎士のティウリ16才。騎士になるための叙任式が明日という最後の試練の夜、礼拝堂にこもります。
寝てはいけない、食べてはいけない、しゃべってはいけない、礼拝堂から出て行ってはいけないという規則があるのですが、その晩ティウリの耳元に助けを求める声がとどきます。
無視をするか、助けを求めるものを助けるという騎士の本分に従うか迷うのですが、意を決して礼拝堂をでると見知らぬ男から隣のウナーベン王国の王に手紙を届けるという重要な任務を託され、人目を避けて冒険の旅が始まります。
二国の間には大きな山脈があり、執念深いスパイや謎の騎士、おいはぎが現れて、襲われたりします。
お前のはめている指輪を指ごとよこしたら、命は助けてやると脅された時、殺されたら任務を達成できないと考えたティウリの選んだ道は…。
山の少年ピアックと出会い、助けられ友情を育みますが、さて、ティウリは無事に任務を果たすことは出来るのか,騎士になることはできるのか?
ハラハラドキドキしながらどんどん読み進められる本です。
この本はオランダのその年の優れた児童文学に送られる「金の石筆賞」を1962年に受賞しています。さらに、すごいことに2004年には過去50年間の受賞作の中での1番「石筆の中の石筆賞」に輝きました。
世代を超えて長く読み継がれた作品、みんなも読んで下さいね。
命をかけて手紙を届けたお話の次は,あの世に手紙を届けるおばあさんのお話です。
2.『ポプラの秋』(湯本香樹実著,新潮社,1997年)
6歳の時にお父さんが亡くなったことを受け止めきれずにいる千秋は、母と共に大きなポプラの木のそばにあり「ポプラ荘」に引っ越します。そこで巡り合った大家のおばあさんは、千秋にこう言います。
「私はあの世への郵便配達屋だよ。あの世へ行くときに手紙を届けてやるよ。」
千秋は亡くなったお父さんに向けて,手紙を書き始めることにしました。日常のささやかなことを毎日、せっせと書いて、おばあさんのタンスにいれてもらい、千秋はだんだん元気になっていきます。
18年後、看護師になっていた千秋のもとに、あのポプラ荘の大家のおばあさんが亡くなったという知らせが届きます。さて、あのタンスに入れた手紙はどうなっているでしょうか。おばあさんは手紙を届けてくれたのでしょうか。
同じ作者の『夏の庭』は、小学校との時に読んだと思いますが、元気な男の子3人とおじいさんの交流でしたが、この『ポプラの秋』は女の子とおばあさんの静かな交流を描いています。小学生から成長したあなた方に読んでほしいと思います。
千秋はあの世へ手紙を書いていたのですが、次は未来の自分に手紙を書いた人の話です。
3. 『未来への手紙』(「未来の自分に,手紙を書こう。」プロジェクト編,講談社,2009)
その中から野球部の先輩の手紙が選ばれて,この本に紹介されています。
2歳年上のお兄さんが重い病気になって、入院しています。未来にはお兄さんが元気になっているように、お父さん、お母さんにを楽させたいから、プロ野球の選手になって活躍しているようにと、書いています。O君の家族を思う温かい思いが伝わってくる手紙ですね。
その他全国の多くの人の未来に託している手紙が紹介されていますから、ぜひ読んでみてくださいね。みんなもぜひ未来の自分に手紙を書いてみてはいかがでしょうか。
この学校図書館にも「手紙」というタイトルの付いた本がいっぱいありますので、どんな思いが詰まっているか、探していろいろ読んでみてほしいと思います。また、書いてみるのもいいですね。
手紙の良さを再発見して、自分の大切な人に手紙を書いてみてほしいなぁとも思います。
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2012年5月13日「ブックトークを聞く会」(東京藝術大学)にて
(まとめ 大妻女子大学非常勤講師 野口久美子
東京学芸大学附属小金井小学校司書 中山美由紀)