熱闘!甲子園
2018-09-11 14:25 | by 井谷(主担) |
スポーツ雑誌『Number』 (文芸春秋)でも、8月は2号連続で甲子園特集を組み、「史上最強高校を探せ」「夏の甲子園100人のマウンド」と興味深い内容になっています。
ところで、高校野球の聖地甲子園球場はどのようにできたのでしょう?そんな疑問に答えてくれるのがこの本です。
『甲子園球場物語』 玉置通夫 文春新書 2004.7
大正12年、川沿いの小さな球場で行われていた全国中等学校野球大会(現在の高校野球)が人気を集め、観客を収容しきれなくなった頃のことです。「完成したばかりのヤンキースタジアムに匹敵するくらいの大きな野球場」を作ろうと阪急電鉄が計画を立て始めました。まだ国内には大きな運動施設はなく、アメリカから持ち帰った1枚の設計図だけが頼りでした。そして工事開始からわずか4か月後の大正13年(干支は、甲子・きのえね)8月1日、完成した大運動場で近隣の小学生2500人を集めた陸上大会が行われました。8月13日からは、いよいよ野球大会が開かれ、その大会後にやり残していた内装や外壁工事を行ったなど、初期の逸話は面白いです。
第2次世界大戦の空襲にも、阪神淡路大震災にも耐え、大規模修理も終えて今なお現役の球場として使用されています。
そんな甲子園の舞台に毎年のようにやってくる強豪校もあれば、県大会を何とか勝ちあがって初出場を狙う学校もあります。高校野球を舞台にした小説は数多くありますが、その中から1冊紹介しましょう。
『夏の祈りは』 須賀 しのぶ 新潮文庫 2017.8
文武両道の県立北園高校にとって、甲子園出場は部員やOBたちの悲願。埼玉予選を10年ごとに追いながら、キャプテン、エースピッチャー、マネージャーなどの立場から描かれた連作短編集です。第1話のキャプテンがその後監督として戻ってきたり、先輩にも後輩にも劣るハズレ学年が意外な頑張りを見せたり、随所にぐっとくる演出があります。果たして、悲願の出場はできるのでしょうか?
一方、東大合格者数の多さで有名な超進学校の開成高校野球部が、東東京予選でベスト16まで勝ち進んだことがありました。グラウンドで練習できるのは週に1日という悪条件の中、どのような練習を積んだのか、選手や監督への取材をもとに書かれたノンフィクションがこちら。
『弱くても勝てます 開成高校野球部のセオリー 』 高橋秀実 新潮文庫 2014.
どんなに練習しても、エラーはするもの。ならば、守備練習はほどほどに、大量得点を狙ってひたすら打撃練習を行う。1点や2点を確実にとる戦法は、うまいチームのやること。下手な自分たちは、どさくさに紛れて大量得点でコールド勝ちを狙う! 監督の教えを論理的に受け止め、キマジメに野球に取り組む選手たちに思わず爆笑してしまいます。
(とはいえ、2018年は1回戦でコールド負け。甲子園への道はまだまだ遠いです。)
高校野球の応援にブラスバンドは欠かせませんが、一体いつから始まったのでしょう?
『高校野球を100倍楽しむブラバン甲子園大研究』 梅津 有希子 文芸春秋 2016.7
によると、1915年の第1回大会を報じた大阪朝日新聞の記事に、すでに音楽隊の写真が掲載されているそうです。吹奏楽部の当日のスケジュール、アルプススタンドでの応援のルール、各校オリジナル曲の由来など、知らなかった情報がいっぱいで、この本で勧められるとおり、いつかブラバン演奏を生で聞くために球場に行ってみたいという気になります。
さて、野球以外にも「○○甲子園」と名付けられた高校生の全国大会は、ちょっと調べただけでも70種以上もあります。囲碁や将棋、書道パフォーマンス、フラダンスなどのほか、納豆、笑顔甲子園など、何を競うのかわからないような競技も。
『春や春 』 森谷 明子 光文社 2015.5
は、俳句を愛する女子高生が、5人のメンバーを見つけ、先生の指導を受けたり、練習試合をしたりしながら、松山での全国大会に行くまでが描かれています。主人公以外初心者ばかりだけれど、音や書にこだわりのある生徒や理論的な生徒など個性豊かな面々が、成長していく姿を見られるほかに、実際の俳句を通して言葉を味わう楽しさも感じられます。
○○甲子園というだけで、高校生たちの一生懸命さや熱気が感じられる気がしませんか?
(東京学芸大学附属小金井中学校 井谷 由紀』