洗濯ではなく、選択です

2019-09-12 21:29 | by 富澤(主担) |

 運動会をはじめ、様々な行事がひかえ、進路もきまりはじめる2学期の入り口、なにか6年生を勇気づけられる本を紹介しようと、「選択」をテーマに本を紹介しました。


【おおまかなシナリオ】

 今日は、ブックトークというものをしてみようと思います。ブックトークは、あるテーマに沿って、何冊かの本を紹介することです。今日のテーマは、「せんたく」。もちろん、「せんたく」とは、洗い物のことではなく、「何かを選ぶこと」のほうです。2学期は、行事がたくさんあります。先頭に立って学校をひっぱっている6年生は、様々な場面で色々な選択をしなくてはいけないと思います。そんな2学期に船出していくみなさんへの、はなむけとなるような本を3冊選んでみました。

 

 さて、「はなむけ」という言葉に入っている「はな」は、植物の「花」ではなく、顔のまんなかにある「鼻」です。それも、動物の鼻、馬の鼻です。昔、旅立つ人の馬の鼻を、その人が行く方向に向けて、旅の無事を祈ったところからきた言葉だそうですが、最初にご紹介するのは、そんな馬が登場するお話しです。

『三本の金の髪の毛―中・東欧のむかしばなし』
(松岡 享子∥訳/降矢 なな∥絵,のら書店)より、「子どもと馬」

 




  昔、男の子がいて、悪い継母に殺されそうになるのを、いつも馬が助けてくれていました。でも、男の子を助けていることがばれて、馬が殺されそうになったので、男の子と馬は、家を出て旅に出ます。すると、行く道に、金の指輪と、金のてい鉄と、金の髪の毛が落ちているのを次々と見つけます。そのたびに、男の子は馬に「ひろってもいいだろうか?」と質問するのですが、それに馬は「もし、ひろったら、それは、きみにはいいことさ。ひろわなかったら、それもやっぱりいいことさ」と答えるのです。それを聞いて、男の子は、もちろんそれをみんな拾って、お話が展開していくわけです。

 

 このお話は、私が図書館やおはなしについて勉強していたときに、教えてくれた先生から、やっぱりはなむけの言葉としてもらったものです。選択も「こうしたい」と思って、その通りにできることも、思っていなかったことを「選ばなければならない」こともあります。けれども、この馬の言うとおり、やりようによってはどちらも「良いこと」になる、というメッセージを、このお話とともにもらいました。

 

 でも、やっぱり、望まない選択、まちがった選択をしたと思うときには、苦しみがつきまといます。そんなときに、どう考えたら良いのか、乗り越えられるのか、ヒントとなりそうな本が、これです。

 

『君たちはどう生きるか』
(吉野 源三郎∥著,ポプラ社)

 





 この本の主人公、中学1年生の「コペル君」は、あることで友だちを裏切ってしまいます。そして、ひどく苦しんで、病気にまでなってしまう。そのときに、主人公の叔父さんが、色々と言葉をかけてくれるのですが、そのなかで、特に私の印象に残った部分を、紹介します(一部を朗読)。

 

 ここに書かれているように、苦しむのは、「あるべき望ましい状態」を、知っていればこそなのですね。苦しみに「意味がある」と思えるだけで、私はずいぶんと救われるように思いました。

 それでは、最後に、とても難しい選択をしなければならなかったある男の絵本を、全部読み聞かせします。

 

 『ヤクーバとライオン 1/勇気』
(ティエリー・デデュー∥作/柳田 邦男∥訳)

 





 この絵本は、低・中学年には、とても読めません。やっぱり、6年生だからこそ、色々なことを感じたり考えたりしてくれると思って、紹介しました。2学期、どうぞ勇気をもって、色々なことを「選択」していってください。これでブックトークを終わります。

 

 【反応】

ずっと何やら近くの子とおしゃべりをしているような様子もありましたが、朗読や読み聞かせとなると、急に静かになり、何か感じてくれたものがあったように思いました。他のクラスに紹介する間、予約をかけて『三本の金の髪の毛』を待っていた女の子が、朝一番で借りに来てくれたのは嬉しい驚きでした。

(東京学芸大学附属大泉小学校 司書 富澤佳恵子)



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