戦争をテーマにした本を読もう

2020-10-11 19:03 | by 金澤(主担) |

 4年生の担任に「国語で『一つの花』を勉強しているのですが、戦争について、その状況を理解できない子もいるようなので、戦争をテーマにした絵本を教室に置いて読んでもらいたいと思っています。」と依頼を受けました。20冊ほど選んで、早々に教室に届けました。その中で、子ども達がよく読んでいた本について紹介します。

『8月6日のこと』 中川ひろたか(文) 長谷川義文(絵) 河出書房新社
 広島で衛兵をしていた叔父さんが原爆で亡くなったこと、お母さんが自分のお兄さんを探しに広島に行って被爆したことを、著者が淡々として文章で伝えている絵本です。
 ある子が、この絵本を読んで一番心に残っていることは、「食べ物の差し入れをしてはいけないのに、妹が届けてくれた差し入れをお兄さんが、こっそり食べている所です。」と言っていました。

 


『ヒロシマ消えたかぞく』
 指田和(著) 写真・鈴木六郎 ポプラ社

 このアルバムには、何気ない日常の写真、子どもの成長を写した写真、笑顔はじける写真がいっぱいです。鈴木六郎さんが撮った写真です。しかし、この家族は、8月6日の原爆で一家全滅してしまったのです。この白黒の幸せそうな家族写真を見ていると、戦争の恐ろしさが伝わってきます。
 子ども達の感想は、「この家族は、原爆の前までは、確かにいたんだよな・・・」「瀕死の大やけどをおいながらも親戚の家にたどり着いたお母さんが、家族が皆、亡くなったことを知って井戸に飛び込んだのは、家族への思いが強かったんだと思う。」「きみこちゃんが、おにいちゃんに『絶対かたきを取ってね』と言ったのは、お兄ちゃんに未来を託したんだと思う。」



『えんぴつびな』 
長崎源之助(作) 長谷川摂子(絵) 金の星社

 空襲で家が焼け、田舎に引っ越した私の隣の席の子は、シンペイちゃんです。いたずらっこでしたが、私の家が焼けてしまったので、気にしてくれていて、小さな鉛筆で作った『えんぴつびな』をくれました。三人官女も作ってくれると約束していたのですが、その夜の空襲で亡くなってしまいました・・・
 ある子は、「最後の場面で、女の子が、シンペイちゃんのことを思って『えんぴつびな』を宝物だと言っているところが、一番心に残っています。」と話してくれました。







『よこいしょういちさん』
 亀山永子(文・絵) KTC中央出版
 日本の敗戦後28年間グアムで、一人でひっそりと暮らしていた横井庄一さんの生涯を切り絵で紹介した絵本です。
 「横井庄一さんは、一人になっても、物づくりに挑戦し、グアムの人の真似をしてパゴという木の皮で糸を作って、機織り機まで自分で作り、七か月もかけて服を作ったり、その他にも自分で様々な道具を作って生活していたのは、すごいと思った。」と感想を寄せた子がいました。




『一つの花』
 今西祐行(文) 鈴木義治(絵) ポプラ社  
 国語の教科書に載っている、この『一つの花』の絵本も渡しました。この絵本は、教科書の挿絵とは違います。子どもたちは、「挿絵が違うとお話のイメージも随分変わるなあ」と感想を述べていたそうです。
 



 

 国語の勉強をきっかけにして、子どもたちは、日頃あまり手にすることのない戦争の絵本を読んでいたようです。
              (東京学芸大学附属世田谷小学校 司書 金澤磨樹子)

次の記事 前の記事