道徳を絵本で

2021-03-09 14:53 | by 宮崎(主担) |

道徳が教科となってから、先生から関連の絵本を探してほしいという依頼を受けることが増えています。道徳の学習指導要領では、「A 主として自分自身に関すること B 主として人との関わりに関すること  C 主として集団や社会との関わりに関すること  D 主として生命や自然,崇高なものとの関わりに関すること」という4つの領域が定められており、さらに細かく、「正直・誠実」「個性の伸長」などの22の内容項目が設けられています。依頼を受けるときには、ふんわり聞かれることが多いので、内容項目をある程度把握しておくと先生のねらいを確かめやすくなります。例えば「4年生向けにうそについての絵本ありませんか?」などと聞かれたら、もう少し突っ込んで聞くと、「正直・誠実」の内容項目で、道徳の授業のための本だとわかるというわけです。

このときは、4年生といっても特別支援クラスの中学年合同クラスの子どもたちが対象で、先生もどんな内容がいいか思案中という段階だったので、まずはたくさん集めてお見せすることにしました。『うそついちゃったねずみくん』(なかえよしを作 上野紀子絵 ポプラ社 2012)『あたしうそついちゃった』(ローラ・ランキン 評論社 2013)などのかわいいものから、道徳では大活躍のくすのきしげのり作品から『しょうじき50円ぶん』(長野ヒデ子絵 廣済堂あかつき 2015)『へなちょこ』(ふるしょうようこ絵 学研教育出版 2013)のようなわかりやすいもの、昔話の『きつねとかわうそ』(梶山俊夫 福音館書店 2016)や『ほんとうのことをいってもいいの?』(パトリシア・C・マキサック文 ジゼル・ポター絵 BL出版 2002のような変化球まで、市立図書館も利用して10冊ほどお見せしました。結局このときは、人の気持ちを理解しにくい特性の子に伝えたいということで、『ほんとうのことをいってもいいの?』が選ばれました。

 



















 
 またあるときは、3年生向けに「自由と責任」に関する本を、と言われてずいぶん難しいことを、と身構え、司書仲間にも相談して本を探しました。が、あらためて学習指導要領を見ると、内容項目の部分には学年ごとの解説文があり、「自由と責任」の項目の34年生の部分には「正しいと判断したことは,自信をもって行うこと」と書いてあり、そんなに難しく考えなくていいのだなと分かります。それなら、と『はちうえはぼくにまかせて』(ジオン作 グレアム絵 ペンギン社 1981)がよさそう、と渡したのですが、もう少しやさしく、やんちゃして困ったことになるような話と言われ、使われたのは『どろんこハリー』(ジオン作 グレアム絵 福音館書店 1964)となりました。3年生といっても初期でまだかなり幼い子たちだったので、これがよかったようです。

 

道徳の教科化には賛否両論あり、作品としての絵本を道徳的に読み解いてしまうのも、複雑な気持ちもあります。が、単純化された教科書教材より、絵本で丸ごとの物語として味わった方が、より気持ちを理解しやすいということは確かにあるかと思います。司書としては、内容項目を頭に入れつつ、使えそうな絵本を日ごろから気にかけておくことで、こうしたレファレンスにも対応しやすくなるでしょう。道徳の内容項目別絵本のブックリストも作成していますので、いずれ公開できたらと考えています。

(東京学芸大学附属竹早小学校 司書 宮崎伊豆美)


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