映画で学ぶ世界史

2021-07-01 15:48 | by 岡田(主担) |

 「イギリスの女性参政権についての本を探しています。」とのレファレンスがありました。「イギリス限定」が気にかかります。理由を聞きますと、世界史の教員から「映画を見て関連書籍を読みなさい」との夏休みの課題が出たとのことでした。生徒が選択した映画は『未来を花束にして』(サラ・ガウロン監督 2015年 英 106分)です。



早速『キネマ旬報 2017 2上旬号 p.107』で映画の内容を調べました。
「20世紀初めにサフェラジェットと呼ばれた女性参政権活動家たちに焦点をあてたドラマ。悪条件で洗濯工場勤めをするモードは、未来への希望を胸に、社会を変える運動に参加していく。」とあります。

キーワードは 1912年 イギリス 女性参政権 サフェラジェット 洗濯工場 です。
気になるのはサフェラジェットという単語です。聞きなれない言葉なので司書としてキーワードを増やすチャンスでもあります。


『サフラジェット』デイヴィッド・ロバーツ 2021 合同出版


『サフラジェット』中村久司 2017 大月書店 978-4-272-53044-1
キーワードそのものの本がありました。発音が少し違うのは、まだ日本に馴染みが薄いということだと理解しました。



『裏路地の大英帝国』角山榮 1982 平凡社 
強烈なウイリアム・ホーガスの表紙が目を引きます。『ジン横丁』という題の版画です。母親もジンに酔っているのか、子供が階段から転げ落ちても気づいていないようです。苦しい労働に耐えるためにジンを飲んでしのいだ当時の様子を描いたと言われています。19世紀のイギリスは人類が初めて経験した最初の工業化社会です。特にロンドンは都市化が進み、人口の急激な増加が劣悪な生活環境を促進しました。そんな当時の生活を理解する本として読むと映画の理解も深まるのではないでしょうか。
 本校は色々な切り口から授業を展開します。映画を見る際に、世界史として捉える面白さも課題を与えることで理解できます。生徒とともに新たな視点が学べるレファレンスとなりました。
            
          (東京学芸大学附属高等学校 司書 岡田和美)

次の記事 前の記事