ぶにょぶにょの本

2021-05-07 14:47 | by 松岡(主担) |

 小学校の図書館に勤めていると、子どもたちの本探しへの対応は欠かせません。
 色々な手がかりを聞きながら目的の本を探しますが、子どもたちのお目当ての本の「断片」はなかなかユニークなものが多く、なかでも印象に残っている表現が今回の記事のタイトル「ぶにょぶにょの本」なのですが、どんな本かわかりますか?

 こたえは「ソフトカバーの本」です。薄い「ぺらぺら」の本でもなく、「ごつごつ」のハードカバーでもない、絶妙な表現だなあ、とその子の感性に感心してしまいました。

 前置きが長くなりましたが、今月は「ぶにょぶにょ」のような言葉たちを集めた本を紹介します。







『名前のないことば辞典』
出口かずみ 遊泳舎
2021年
 
 この「辞典」はオノマトペや感嘆詞のように同じ語が2つつながった言葉を「名前のないことば」として紹介しながら7種類の動物たちの日常を描いた、絵本のような辞書のようなことば辞典です。
 「おなじでちがう6つのごろごろ」のように同じ言葉でも意味合いの違う「名前のないことば」をまとめたページなど、何度も読み返したくなる魅力があります。

 本を手に取った時、表紙の絵や全体の色味、大きさ、厚みなどの形態が印象に残っている子が多いようで、本の特徴を伝えてくれることがよくあります。ヒントとしては難しいですが有力な手がかりになります。
書名・著者名がわかっていればすんなりと目的の本にたどり着けますが、書名を正しく覚えているというのは大人でも容易ではありません。

 もう一冊、出口かずみさんの作品を紹介します。書名がうろ覚えでも大丈夫!な絵本です。







『うろおぼえ一家のおかいもの』

出口かずみ著/文 理論社 2021年

 書名に「うろおぼえ」とあるので、「あの絵本、なんてタイトルだったかな…なんだかうろ覚えで…あ!」と忘れてしまってもすぐに思い出せる、うろ覚えが多い私にはとても助かるタイトルです。
 仲良し家族のうろおぼえ一家は、お母さんに頼まれていた買い物に行きますが、何を買うのか思い出せません。しかくいものだったような、重いものだったような…とうろおぼえの情報を頼りに町の人にアドバイスをもらいながら買い物をしていくのですが、目的のものは買えるのでしょうか?

 作者の出口かずみさんのイラストがほのぼのとしていて、どちらも緩やかに楽しめる作品です。両方ともレファレンスに直結する本ではありませんが、日常のレファレンス業務の1コマを切り取ったワードにちょうどぴったりの本だったので、紹介させていただきました。

 ちなみに以下のサイトを見るとこんなにもたくさんの「覚え違い」があるのだと驚くと同時に、書名を正しく覚えているのは容易ではないということに納得してしまいます。

 福井県立図書館 | 覚え違いタイトル集 (fukui.lg.jp)

 図書館カウンターでのレファレンスで実際にあった覚え違いの書名や著者名がリストになっています。思わず吹き出してしまう絶妙な覚え違い、でも検索機では一字違ってもヒットしないこともあるので、私たち司書にとってはとても勉強になるサイトです。
(東京学芸大学附属小金井小学校 司書 松岡みどり)

次の記事 前の記事