中学校のレファレンスから

2022-09-08 10:24 | by 村上 |

 最近、カウンターでのレファレンスから

 夏休みも終盤、部活の帰りに本を借りにやってきた中2生から、「人生について考える本ってどこにありますか?」といきなり聞かれました。人生!…そういえば、中2の国語の先生から夏休みの読書課題が出ていたことを思い出しました。読むだけではなく、心に響いたフレーズを見つけることと、自分の人生について、取りとめもなく考えてみようと先生からはTeams上で指示があったのです。

 「うーん、どんな本を読んでも、人生について考えるきっかけにはなると思うのだけれど、分類的には、1類や3類が、そういう本が多いかもしれないね。」と言いながら、生徒を、カウンター前にある、1類の棚と3類の棚に案内しました。

 「1類はね、哲学とか、心理学とか、生き方とか、人生について考える本が多いでしょ。あとは、360の社会学あたりかな。自分が読みたい本があるか、探してみてね」といってカウンターに戻りました。

 しばらくして、「これ借ります!」と言って1冊の本を手にして戻ってきました。内心、「おお!なんといい本を選択!」と思いつつ、淡々と貸出手続きをして、「さようなら」と送り出しました。


 翌日は中1男子に、「現代の社会問題について書かれた本はどこにあるのですか?」と聞かれました。また大きくて多様なジャンルにまたがるテーマではありませんか。そこでまず本人に聞いてみました。「君が考える社会問題って何?どういうことが問題だと思っているの?」するとすぐに「えーと、地球温暖化かな」と返事が返ってきました。

 そこで、この夏休みに、SDGs本を特集していたコーナーを解体して、棚に戻したばかりだったので、451の棚に案内して、気候変動や温暖化に関する本を手渡しました。それから、「環境問題」については「51の棚にもあるので、ちょっとこっちも見てね」と5類の棚に案内。

 しばらくして、結局最初に渡した2冊のうちの1冊を借りたいと、カウンターにやってきました。なぜ地球温暖化の本が451や519に分類されているのかまでは、考えてくれないかもしれないが、とりあえずなんとなくの場所がわかり、そのあたりに関連本があると知ってもらえるだけでも、いいかなと考えています。

 最後は、自分で検索機を調べていた中2の女の子から、探している本が見当たらないとのこと。書誌情報を見ると、かなり古い本。「ごめんね、きっとこれ、かなり古いシリーズ本の一冊なので除籍してしまったのかもしれないわ。何を調べているの?」と尋ねると、「宇宙食」について調べています、と返事が返ってきました。

 自分でも作ってみたいといのこと、直接役立つのかはわからないけれども、そういえば宇宙食なら、『さばの缶づめ、宇宙へいく』(小坂康之著、林公代著 イ-ストプレス 2022)を1学期に入れていたので新刊コーナーから手渡しました。その後、棚をもう少し探してみましたが、宇宙関係の本の棚には、役立ちそうな本が見当りません。インターネットでもいくつかキーワードを入れて探してみると、使えそうな資料があったので2つほど印刷しておきました。何か手頃な本がないかと検索すると、『きみは宇宙飛行士!ー宇宙食・宇宙のトイレまるごとハンドブック』が出てきたので、注文をしてみました。

 翌週届いた本は、イラストがたくさんあって楽しげなのですが、肝心の「宇宙食」については数ページ。再びカウンターにやってきた生徒に、印刷しておいた資料を渡しながら、ネットでの検索する際のちょっとしたコツや、オンラインで読める学術論文の探し方も少しだけ伝えました。そして届いた本を、「宇宙食の記述は少なかったのだけれど…と手渡したら、「わぁ!面白そう」と予想以上の反応が返ってきました。

 探求的な学習として2、3年生が春から取り組んでいる「テーマ研究」もそろそろ後半戦。ネットで調べる生徒も多い中、こんなふうに生徒のやる気を後押ししてくれるリアルな「本」の存在は、ありがたいなと思います。

(附属世田谷中学校司書 村上恭子)

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