世田谷区を住みやすい街にするには

2023-05-01 09:50 | by 岡田(主担) |

 今回は地理探究の図書館授業中でのレファレンスを紹介します。1年生の女子生徒から「世田谷区を住みやすい街にするにはどうしたらいいかをテーマにしています」との相談を受けました。司書が最初に疑問に思った点は、生徒が何をもって「住みやすい」と思っているかです。そこが明確でないと今回のようにテーマは良くても、論点がボケた論文や発表になる可能性があります。その点を質問しますと、初めて自分のテーマが漠然としていたことに生徒は気がつきます。例えば「子育てがしやすい」「多様な生き方ができる」「十分な教育が受けられる」「公共施設が充実している(図書館・公園・福祉センターなど)」「交通機関における移動のしやすさ」「企業誘致が積極的に行われている」など指摘すればきりがありません。そこで先ず、論点を明確にするための資料を生徒と一緒に探すことにしました。

区から出ている広報誌や区史などの資料も活用します。

                世田谷区広報誌 2023年 4・5月号

「街を住みやすくする・住みやすい街とは何か」


『まちづくり心理学』城月 雅大編 2018 名古屋外国語大学出版会 ISBN:978-4-908523-13-7 361.7シ
環境心理学から人と場所を結ぶまちづくりを提案。居場所としての「愛着」を作り出すことの本質を示唆する。


『まちづくりの論理と実践』濱田 恵三著 2011 創成社 ISBN:978-4-7944-2371-9
 673.7
まちを作ることの意味や成り立ちを都市を中心とし実践的に書かれている。




 『中心市街地の成功方程式 』 細野 助博 2007 時事通信出版局 ISBN:978-4-7887-0764-1 601.1ホ 
世田谷区は商店街が発達してるが、賑わっている地域とそうではない地域に分かれる。
シャッター通りにならない商店街を単に売り買いの場としてのみではなく、コミュニケーションの場としても捉える。

いま、都市をつくる仕事  日本都市計画学会関西支部次世代の「都市をつくる仕事」研究会 2011 学芸出版社 ISBN:978-4-7615-1293-4 518.5イ
街がどのように作られて行くのかを行政や地域住民と共に様々な地域のプロジェクトとともに掲載。

都市の景観地理 アジア・アフリカ編  』阿部 和俊編 2017 古今書 ISBN:978-4-7722-5297-3 290.173ト
都市の景観は単にデザインのみで決定するものではなく、地域・社会・経済・文化など様々な要因が関与する。逆を言えば景観がその街の住みやすさを決定づける要因になる事が理解できる。


『住んでいい町、ダメな町』 大木裕子 2015 双葉社 ISBN:978-4-575-30812-9
365.3オ
自然災害からみるまちづくり。いい町・悪い町が二分してあるのではなく、いかに自然を理解し賢く住むかを解説。


『まちを変える都市型農園  コミュニティを育む空き地活用』新保 奈穂美 2022 学芸出版 ISBN:978-4-7615-2821-8 626.9シ
世田谷区は住宅地の間に農地が点在している。農地を活用しての地域起こしや、地元の小学生に農業参加を促すなどコミュニケーションの場ともなっている。まちを変えるものの一つに農業という視点が持てる。都市型農園をツールとしての持続可能なまちづくりを提案する本。

 探究学習のテーマを決める際に、自校の学びに合った資料や生徒の学習目標に向けての図書が学校図書館には必要です。資料を館内で生徒と一緒に探しながら、生徒自身の学びが深まっていくことが学校図書館では往々にしてあります。今回のレファレンスでは、農業・災害・行政・都市の景観・住民の意識と多様な本を提示しました。司書を通して探究が深まることも学校図書館の良い点ではないでしょうか。
                  

                (東京学芸大学附属高等学校 岡田和美)

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