「本」にまつわるエトセトラ

2021-07-10 10:04 | by 村上 |

 昨年度の予算で3月末に買っていた特装版『活版印刷三日月堂』(全6巻)のお披露目の機会を伺っていたのですが、夏休みを前に「本」にまつわるエトセトラ というコーナーを作ってみました。本好き、活字好きにはたまらないこのシリーズ、ちょっと贅沢かなぁと迷ったものの、コロナ禍の今だからこそ、紙の本や、職人技とも言える活版の世界を知ってもらいたいという意図も。
 『活版印刷三日月堂 星たちの栞』(ほしおななえ著 ポプラ社)が出版されたのは2016年のこと。2018年に出版された4巻目の『活版印刷三日月堂 雲の日記帳』で完結したかと思いきや、外伝とも言える『活版印刷三日月堂 空色の冊子』(2019)、『活版印刷三日月堂 小さな折り紙』(2020)が出版されたということは、全国にたくさんの三日月堂ファンがいる証でしょう。かくいう私もその一人。嬉しいのは、勤務校にも同じ思いらしき生徒が複数いて、さらに友達に「この本面白かったよ〜!」と薦めてくれたりしています。

 時代の流れのなかで消えていく運命にあるものに、再び命を吹き込み、新たな価値を見出していく姿にはなぜか励まされれます。電子書籍への流れが加速するなか、手に取れる事の魅力を最大限活かした特装版シリーズからは、作り手側の熱い思いが伝わってきます。もちろん、活字は活版です!
   ポプラ社  特装版『活版印刷三日月堂』紹介動画


 一緒に並べたのは、「本」に関わる様々なお仕事をしている人たちを描いた「小説」や「ノンフィクション」です。小説家・漫画家・絵本作家・ライター・編集者・装丁家・校閲者・印刷会社で働く人・製紙工場で働く人・書店員・司書など、まさにエトセトラです。

 『本のエンドロール』(安藤祐介著 講談社)は、2018年に単行本として出版されましたが、2021年春に発売された文庫版は、書下ろしでコロナ禍の今を描く「特別掌編」が入っています。本の作り手として出版社の存在は自明ですが、印刷会社までは意識が及びませんでした。期日を守るため、あるいはコストを下げるため、どれだけの苦労をしているかを初めて知りました。もちろん、その職人芸ともいえる領域の仕事ぶりも。さらには、紙の本を出すことに情熱をかけてきた人たちも、電子書籍とどう共存していくのかを、探りながら日々を過ごしているのですね。

 私たち学校図書館に勤務する者たちにも、悩ましい問題です。選択肢は広げたい。でも、目に見えて、実際に手にとれる「本」という形で、「世界」をしめしてくれる「学校図書館」は、小中高それぞれの成長にあわせて蔵書が作られているだけに、貴重な場です。タブレットをもって図書館に来るもよし、手ぶらで静かに本の世界に没頭するもよし、友達と語らいながら本を手に取るもよし。好きなように使ってほしいものです。

 

  東京学芸大学附属世田谷中学校司書 村上恭子



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