実物と本をつなげて
2022-01-31 09:14 | by 金澤(主担) |
豊田市は、小学校75校、中学校28校、特別支援学校1校です。2007年度から学校司書が、小中学校へ複数校兼務で全校配置されました。学校司書の竹内さんは、愛知県豊田市立山之手小学校と愛知県豊田市立前林中学校の2校兼務です。山之手小学校へは、年間100日(1日6時間)、前林中学校へは、年間40日勤務されています。
今月の展示は、実物と本をつなげる展示について学校司書の竹内さんに豊田市立山之手小学校での実践を紹介してもらいました。(編集部)
本校は児童数734名(28学級)の大規模校です。図書館は広々としていて、季節に合わせた展示コーナーを作ることができます。私が展示で心掛けているのは、実物と本をつなげることと、準備に時間をかけないことです。一人で頑張らず子どもたちやボランティアさんの力を借りると、最初に考えたことよりもっと楽しい企画に発展していきます。今回、今年度行った中から、植物を使った企画を紹介します。
1.春の定番二つ
毎年行う定番企画が二つあります。一つは野菜の根っこを水につける展示です。『やさいはいきている』藤田 智(監修)岩間 史朗(写真撮影)ひさかたチャイルドを参考に、ニンジンや大根やホウレン草など、いろいろな野菜を並べます。今年度は、はじめて白ネギを加えてみました。時間が経つにつれ傷んできたので展示から外すと「あれっ?ネギがなくなった。応援してたのに」と言う子がいました。よく見てくれていたことがわかり、うれしくなりました。
2.初夏、かしわ餅の葉っぱを使って
端午の節句の時期に、かしわ餅の葉っぱを再利用し、「この葉っぱを使ってつくる和菓子は?〇〇〇〇〇」と書いたクイズを出しました。わからないときに調べられるように、葉っぱ図鑑や和菓子の本に加え、和の行事の本も並べました。
3.秋、リアルドングリ図鑑を作る
『ひろった・あつめたぼくのドングリ図鑑』盛口満(文・絵) 岩崎書店 のリアル版を作りたくて、校内のドングリを探しました。時間が足らず、少ししか拾えなかったので、子どもたちに集めてもらうことにしました。
朝一番に「一つに2個入っているドングリを見つけた」と言って持ってきてくれた子がいたので、早速レアものとして展示しました。
段ボールで届けてくれたクラスや、庭のドングリを袋いっぱい届けてくれた子もいて、予想を超えるたくさんのドングリが集まりました。そこで展示場所を広げ、窓の下に並べていきました。ずらーっと並んだドングリはなかなかの壮観で、ドングリムシが出てきてもいいように飼育ケースも用意し、『どんぐりむし』藤丸篤夫(写真)有沢重雄(文)そうえん社 を横に置きました。
細長いもの、小さいもの、丸いものといろいろな形のドングリを見ていたら、『どんぐりと山猫』が思い浮かびました。そこでボランティアさんに山猫からの招待ハガキとドングリの絵を描いていただき、ドングリの言葉と一緒に掲示しました。『どんぐりと山ねこ』宮沢賢治(作)高畠純(絵)岩崎書店
『どんぐりと山猫』宮沢賢治(作)高野玲子(絵)偕成社
『どんぐりと山猫』宮沢賢治(作)小林敏也(画)好学社 の本も並べました。
4.冬、空き箱からツバキクイズ
私はお土産の空き箱から、こじつけクイズを作るのが大好きです。クリスマスにもらったお菓子の箱に、赤い花飾りをつけたパンダの子の絵を見つけました。これはクイズに使えると思い、早速年明けに「パンダの子どものあたまについている花はなんの花でしょうか?〇〇〇」というクイズを出しました。ツバキの実、葉っぱ、花を一緒に展示し、『木の実ノート』いわさ ゆうこ(作)文化出版局『くしゃみくしゃみ天のめぐみ』松岡 享子(著)寺島龍一(画)福音館書店 を置きました。
5.学校図書館でできること
かしわ餅クイズは簡単だと思っていたら、「桜餅」と答える子や、かしわ餅を知らない子がたくさんいました。ツバキクイズも、ツバキを知らない子がたくさんいて、「ハイビスカス?」と答えた子もいました。
「今どきの子は、そうなのか」と最初びっくりしましたが、よく考えると、通学路や庭で草木を見たり、花に目を留めたりする機会が少ないのだと思います。旅行や特別な場所に行かなくても、ちょっと意識すれば身近な植物に季節の移り変わりを感じることができます。その楽しさを学校図書館から発信したいと思います。
興味をもつきっかけを作る場所、もっと知りたくなったら調べることができる場所が学校図書館です。これからも遊び心をもって、子どもたちの好奇心をくすぐるような企画を考えていきたいと思います。
豊田市立山之手小学校 学校図書館司書 竹内純子