平成28年度文部科学省委託事業報告会

2016-12-22 10:59 | by 渡辺(主担) |

2016年12月17日土曜日、冬の寒さの中、今年も文科省事業の報告会が開かれました。(参加者63名、Web実況中継視聴者15名)

「平成28年度 文部科学省委託事業報告会
~みんなで使おう 学校図書館! Vol.8~」
平成271217日(土)13時~17
於)東京学芸大学合同棟
1
階大教室
平成28年度文部科学省事業報告会プログラム.pdf

まずは東京学芸大学教授の藤井健志先生から、はじめのことばを賜りました。
現在、学校図書館は変わりつつある時期、変わらなければならない時期である。ICT活用が盛んになるなか、本の位置が次第に後退し、出版業界も厳しい状況におかれている。本を重視している研究報告がある一方、テーマ「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」にあるような先生のために授業に役立つ実践という二つの方向を踏まえながらやっている。ご批判・ご指導をいただきたい。本日は、学校図書館がどういう風にあるべきかを話し合っていきたい」
当日の報告は、一部を除きインターネットで同時中継もされ、会場に来られない方にも配信されました。
この日に配布された資料は、下記からご覧いただくことができます。

第一部 

1.学校図書館を活用した授業実践報告~ 

実践報告① 附属小金井中学校

「オリエンテーションからつなげる情報収集のため
の取組の実践報告~つなげよう3冊の本~」

報告者:司書教諭 松原洋子 / 学校司書 井谷由紀
*テーマの異なる分類から3冊の本を探し、一つのキーワードからも多様な角度で資料を探すことができることを体験する授業。
資料:
2016報告会小金井中.pdf
2016附属金中公開授業案.pdf

■講評Ⅰ■帝京大学教授 鎌田和宏氏
本を読まない時代になってきている。大学の教員になってからもまず大学生の読書指導を行った。新書を1冊も読んだことのない学生もおり、学生になるまでに本を読む経験の浅い学生たちは読書の概念も狭い。本といえば『赤毛のアン』という発想のようだ。附属金中のような実践によって、様々な知の世界に広がっていくことが可能となるだろう。情報教育といえばICT教育に走りがちだが、機械ばかりでなく本の教育も重視すべきである。友達の選び方を評価するなど、豊かな仕掛けがある。また、発想法のトレーニングにもなっている。本と親しんで本を借りていく生徒も増えていったことがすばらしい。本実践が他教科でどのように活用されているのかを把握する必要がある。カリキュラム全体で指導していく、総合して教育していくうえで学校図書館は大きな役割を担っている。

講評Ⅱ■東京学芸大学教授 成田喜一郎氏
附属中学の実践、例えば「犬」というテーマ一つとっても色々がありました。この学習はヒドゥン(隠れた)の部分で越境する意味がある。犬という概念を理解する、構成するようなカリキュラムになっている。これからは、概念学習が大事です。抽象的なことを生活につなげていく。愛というテーマを選んだ生徒が、愛がない資料を探しだしたいう発想ができたことは素晴らしい。視点を変えられたからですね。愛の逆から補助線を引いて考えたのでしょう。すばらしい。
 
NARITA MRMO みんなで使おう学校図書館!Vol.8発言ノート 2016.12.18

実践報告② 附属特別支援学校

「司書教諭が学校司書と担任を結び児童の読書力を高める取り組み」

報告者:司書教諭 野原隆弘 / 司書 田沼恵美子
*今年度の公開授業を含め、司書がはいって8年目となる特別支援学校での取り組みをふりかえりました。
資料:
2016報告会特別支援資料野原先生.pdf
2016特別支援図書通信ぶっくらんどNO13.pdf

■講評Ⅰ■帝京大学 鎌田和宏氏
貴重な8年間の取り組みだと思う。長いスパンで継続的に行うことは少なく、学級文庫の取り組みが取り上げられることはなかなかない。しかし学校図書館や地域の図書館とどうつながっていくか、子どもの身近な環境から整えていくという点で重要である。司書の田沼先生の役割がとても大切だった。子どもたちが自律的に自分の視野を広げていくように、公共図書館へどのようにつなげていくかが大切。特別支援学校ほど、より図書を充実させるべきである。

■講評Ⅱ■東京学芸大学教授 成田喜一郎氏
水族館行くのに生徒の「電車を調べたい!」もいいですね。一旦、テーマからずれるかもしれなが、もっとも関心があることを自己選択・自己決定をすることは、全ての校種で必要。それがサポートの一つ。大学でもできない子がおり、個別なアプローチがいる。中学部の難しさ。戸惑い。個別化アプローチ。教育はここに行きつく。

2.司書部会からの報告

Libraryof the Year 受賞報告 

報告者:白百合女子大学 准教授 今井福司氏コメントより
18回 Library of the year 2016」で本委員会は優秀賞をいただいた。先進的な活動を行っている図書館に送られる賞である。

このイベントは知的支援 毎年35千人が集まるイベントである。他の図書館にとって参考になる事例であることが評価された。学校図書館で選ばれたのは初めてのことである。また、当日のプレゼンでオーディエンス賞をいただいた(201人から59の票を集めた)発表者として関われたことに感謝している。今後も末永くこの実践が継続することを願っている。
▲報告会会場に展示された、Library of the year2016とオーディエンス賞の賞状と盾

②「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」の活用

報告者:附属小金井小学校 学校司書 中山美由紀
*今年度は目標のアクセス数10万件をこえ、「教科別目次」も小学校、中学校編ができた。
海外からのアクセスもあり、国内外での広がりについても報告された。
資料:
2016報告会DB報告中山.pdf
2016報告会配布中長期計画案.pdf

③学校司書の資質・能力向上のための研修の在り方

報告者:附属国際中等教育学校 学校司書 渡邊有理子
*過去に実施してきた司書研修の講座内容と参加者アンケートを分析、検証。文科省の学校司書養成カリキュラムや専修大学の野口武悟先生の養成案を参考に、司書の資質能力を高める研修プログラムを提案した。
資料:
2016過去中堅司書研修一覧 資料①.pdf
2016研修内容と文科省養成カリキュラム案対照表資料②.pdf
2016司書研修プログラム案 資料③.pdf
2016中堅司書研修パワポ資料.pdf

第二部 シンポジウム
学校司書のスキルアップを保障した研修のありかたをめぐって」

帝京大学教育学部 教授  鎌田和宏氏 / 専修大学文学部 教授  野口武悟氏 埼玉県立図書館 主席司書主幹  長谷川優子氏 / 東京学芸大学 教授  藤井健志  東京学芸大学 教授  成田喜一郎  / 附属大泉小学校学校学校司書 小野寺愛美 附属世田谷中学校 学校司書 村上恭子(司会)
2016報告会シンポジウム鎌田氏資料.pdf
2016報告会シンポジウム野口氏資料.pdf
 
    
  

●終わりのことば
東京学芸大学 学校図書館運営専門委員会 委員長 山崎幸一


 
~おことわり~
第二部のシンポジウムとおわりの言葉につきましては、後日内容を掲載いたします。

(東京学芸大学附属学校司書部会)



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