アイヌ民族の世界

2020-09-10 09:34 | by 渡辺(主担) |

 7月12日、北海道の白老町に、アイヌ民族の文化の復興・創造の拠点として、「民族共生象徴空間(ウポポイ)」が開館しました。ウポポイとは、アイヌ語で「(大勢で)歌う」という意味だそうです。
 コロナ禍でウポポイの開館はあまり大きくは報じられませんでしたが、8月9日の国連の「世界の先住民の国際デー」とも合わせ、館内では9月末まで「日本の先住民族アイヌの世界」という資料展示と、旭川市在住の画家が描いたアイヌ民族の絵画展をおこなっています。(展示の画像はこの記事の続きを読むで紹介しています)

 この展示では、アイヌをテーマにした絵本も紹介していますが、その中から今年復刊された1冊をご紹介しましょう。
 『青いヌプキナの沼』かこさとし 復刊ドットコム 2020年

 北海道がまだエゾとよばれていたころ、内地(本州のこと)からきたさむらいたちによって、アイヌの人たちは住んでいた場所を追われ、多くの人たちが戦いの犠牲となってしまいました。
 タキシは病気がちな妹のチリと共に、山奥に逃れますが、食材となる動物を探しに行った兄のタキシは何日たっても戻りません。しかし春がおとずれ、とけた雪の中から、チリは銃で撃たれて亡くなっているタキシを見つけました。チリはさむらいたちの宴会の食事に毒をもり・・・

という、アイヌの娘チリが内地からきたさむらいたちに復讐をするお話なのですが、作者のかこさんは、口伝えで残されてきた昔話を通じて、アイヌ民族への迫害と差別の歴史を私たちに伝えてくれます。
 
  現在館内でおこなっている、「日本の先住民族アイヌの世界」展示のようす。        
























(東京学芸大学附属国際中等教育学校:司書 渡邊 有理子)

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