たまにはエッセイ

2020-12-07 15:13 | by 中村(主担) |

 中学生へのよみきかせにどんな本を選んだらいいか悩む…という先生や司書さん、図書ボランティアさんにおすすめしたいジャンルのひとつが“エッセイ”です。
 「新しい単元の導入に」「この季節・この行事に絡めて」などの明確なテーマがないときや、「なんでもいいです、ただし〇〇分くらいで!」と突然の依頼で準備する時間がないときなどにも、日頃からエッセイ集を1冊用意しておけば何かと役に立ちます。絵がなくてもよみきかせとして楽しめる、味わい深い魅力にあふれたエッセイがたくさんあります。
 
 例えばさくらももこさんのエッセイはどれを採り上げても生徒から笑いを引き出せること間違いなし!ですし、松浦弥太郎さんの文章からはどの時代にも通じる柔軟な生き方のヒントを得られるかもしれません。あの『思考の整理学』の著者・外山滋比古さんは中学生でも読みやすい軽やかなエッセイ集もつづっています。
 中学生にとってエッセイは、自分からは手に取ることが少ないけれど、読めば思った以上に楽しかったり、何かを考えるきっかけとなったりする、そんな存在なのかもしれないですね。

 さて、たくさんのエッセイの中からどんな作家のどのような本を選ぼうか…
 迷ったら手始めに、こんな1冊はいかがでしょう。

 『ベスト・エッセイ 2020』日本文藝家協会編/光村図書/2020年
   
1年間に新聞や雑誌などで発表されたエッセイの中から毎年
   70~80篇ほどを選りすぐって収録。
   文筆家だけでなく、学者や俳優、宗教家などさまざまな
   立場の人が著したエッセイが集められています。








 
 掲載されている著者の一例を挙げると、生徒に人気の作家・辻村深月さんや森絵都さん、国語の教科書によく採り上げられている歌人の俵万智さん、テレビでおなじみの社会学者・古市憲寿さんや日本文学研究者のロバート・キャンベルさん、NEWSの加藤シゲアキさん…
 生徒たちにとってなじみの深い人物の文章を紹介すれば、見せる絵がなくても真剣に聞いてくれますし、タイムリーな話題に絡めて内容から選ぶのもいいかもしれません。1篇が5分程度、長くても10分はかからないで読める軽さなので、どの文章も短時間でまとまりよく読むことができます。
 
 味見のような感覚で、どこから取り出してよみきかせしても大丈夫ですし、生徒が気に入った文章を見つけてその人の他の本も読んでみる…そんな新たな読書へとつながることもあったりして、こちらとしては「しめしめ、かかったな」です。

 ところでこの『ベスト・エッセイ2020』には、数学者の秋山仁さんが信濃毎日新聞に寄せた「市原悦子さんの読み聞かせ」という文章が掲載されています。どんなエッセイかは、ぜひお手に取ってご覧ください。


* * * こちらでご紹介したエッセイストの書籍一例 * * *

『もものかんづめ』さくらももこ著/
  集英社/1991年





『あたらしいあたりまえ。ー暮らしのなかの工夫と発見ノートー』
  松浦弥太郎著/PHP研究所/2010年




『傷のあるリンゴ』外山滋比古著/
  東京書籍/2012年




         
            (東京学芸大学附属竹早中学校 司書 中村誠子)

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