たまごの なかには あたらしいはじまり

2021-04-09 10:13 | by 松岡(主担) |

 4月は出会いの季節ですね。新学期の始まり、新入生の入学、新しい学年・クラス…特に学校と関わっていると新しいことの多い時期です。だけれど、新生活には不安もつきもの。そんな、どきどき・わくわく・ちょっぴり心配な気持ちに寄り添った絵本をご紹介します。











『ルナのたまごさがし』
たなか鮎子/作・絵 フレーベル館 2020年

  「あたらしい きょうしつも ともだちも ルナは なんだか すきになれない」
 ひっこしをして、新しい学校になじめないルナが教室を抜け出すと、ろうかで真っ白なたまごを見つけます。たまごに模様をつけると、突然卵から飛び出してきた
不思議なうさぎが「ぼくと たまごさがしに いかない?」とルナを誘います。
 この絵本はイースターのエッグハントが物語の素材となっています。新生活で不安な気持ちのルナが、たまごさがしをすることで新しいわくわくをたくさん見つけていく、というストーリーです。
 巻末にある「もっと知りたい!イースターエッグ」というページではイースターという行事や歴史、イースターエッグの作り方も紹介されています。
 温かみのある挿し絵とリズミカルな言葉が心地良い絵本です。記事のタイトル「たまごの なかには あたらしいはじまり」も、作品の中の一節を引用させていただきました。
 じっくりと一人で絵本の世界を楽しむのにも、読み聞かせでわくわくする気持ちを共有するのにも、どちらの読み方にも向いている一冊です。

 同じたまごを題材にした絵本でも対照的な一冊もご紹介します。











『たまご』
ガブリエル・バンサン ブックローン出版 1986年

 産み落とされた大きな大きな卵と、卵をめぐって描かれる人々の行動がモノクロで描かれ、そこには言葉は一つもありません。
 言葉がない分、1ページ1ページに何が描かれているのだろうと想像しながら読んでいく、奥の深い絵本です。

 コロナ禍での絵本の読み聞かせについて考えを巡らせた時に、文字のない絵本ならば言葉を発することがないので使えるのではないか、と思い浮かびました。ですが、言葉がない分絵をじっくり見せるためには、子どもとの距離だけでなくページのめくり方や間合いのとり方などを工夫する必要があることを考えるとなかなか難しく、未だ実施には至っていません。
 まだまだ対策が必要な学校図書館活動の中で、私たちも継続してより良いサービスの在り方を模索中です。
(東京学芸大学附属小金井小学校 司書 松岡みどり)

次の記事 前の記事