風物詩(『かもさん おとおり』)

2021-06-09 12:27 | by 富澤(主担) |

毎年5月から6月ごろには、2年生に『かもさん おとおり』を読んでいます。東京都立の大きい公園も近い本校では、校内でも野鳥の姿を見かけることがあり、ちょうどこの時期は、学校のプールにカモが遊びに来るので、図書館の窓からその姿を見たり、鳴き声を聞いたりできます。


『かもさん おとおり』
(ロバート・マックロスキー∥ぶんとえ/わたなべ しげお∥やく、福音館書店、1965

巣をつくる場所をさがして、ボストンの町までやってきたカモのマラードさん夫婦。ようやく良い場所が見つかり、そこで8羽の子ガモが誕生します。やがて、一家は公園に引っ越すことに。マラードさんは一足先に行き、マラードおくさんは8羽の子ガモを連れ、一列で町を堂々と行進。交通整理にパトカーが出てくる騒ぎになります。


 言わずと知れた名作絵本ですが、飛んでいるカモの高さから町を見下ろす構図の絵などは、少し遠くから見たほうが立体的で迫力も伝わりますし、大判で集団への読み聞かせにもぴったりです。

子どもたちの反応は、マラードさんが自転車にひかれそうになる場面で息をのみ、8羽の子ガモの名前が出てくると、小声でくりかえしたり、クスクス笑ったり。おまわりさんとパトカーの登場に驚き、最後はほっと安堵のため息がもれます。少し長いので、2回にわけて半分ずつ読むことが多いのですが、「今日はここまで」と言うと、「えー、もっと読んでよ」と催促の声があがり、続きがとても気になる、と予約する子もでてきます。

 原書の初版年を改めて確認したところ、1941年とありましたので、今年で80歳!第二次世界大戦中に出版された本だったことに、初めて気づきました。日本語版の出版からも56年が経っていますが、その魅力は全く古びていないと、読むたび思わされます。先日も、休み時間に来館した2年生の子が窓から外を見て「カモさんいたよ!カモさん学校にくるの!?」と嬉しそうに報告してくれました。これからも、大事なレパートリーの一つとして読み継いでいきたいです。

(東京学芸大学附属大泉小学校 司書 富澤佳恵子)

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