物語の冒頭を読む

2021-05-09 17:34 | by 宮崎(主担) |

 感染予防でぎゅっと集まってのよみきかせができないなか、絵を見せなくてもよい、物語の一部を読み聞かせることが増えました。一部分だけでもストーリーが面白く、さらに続きを読みたくなるような作品を選んで読みます。特に長編シリーズにつなげることができるものはお得感があります。以前ならブックトークの一部として、自分の言葉で紹介していたような作品ですが、そのままの文章をよみきかせることで、より作品そのもののよさを伝えられるような気がして、あらためて読み聞かせの可能性が広がったと感じています。子どもたちの反応がよかったものをいくつか紹介します。




『黒ねこサンゴロウ 旅のはじまり』竹下文子作 鈴木まもる絵 偕成社 1994

かっこいい船乗りの黒ねこサンゴロウシリーズの1冊目。一人旅に出かけた少年ケンが列車の中でサンゴロウと出会うシーンまで読みます。ひとりで特急列車に乗っていく少年のドキドキ感に共感しながら、急にファンタジーの世界に入っていく不思議な感じを味わえます。少し古くなりましたが、読み聞かせるとシリーズ全体が動き出します。4年生に読みました。





『精霊の守り人』上橋菜穂子 偕成社 1996

女用心棒バルサが、皇子チャグムを救出する場面=序章を読みます。短槍など耳で聞いてわからない言葉は「短い槍ね」など説明を加えますが、ほぼそのまま読んでも場面が絵で浮かぶような、名シーンです。読み終わった直後、6年男子から「カッコよ!」とつぶやきがもれました。その後の展開やシリーズ全体の紹介を少し加えて、これもシリーズが動き出した作品です。







『うさぎ屋のひみつ』安房直子作 南塚直子絵 岩崎書店 1988

4年生が国語で「初雪のふる日」を勉強するときにほかの作品も、ということで読みました。なまけものの奥さんがおいしい夕飯を宅配してくれるうさぎ屋のとりこになっていく様子を、子どもたちは心配でドキドキしながら聞いてくれます。ちょっと今どきの依存症や詐欺やらのお話のようで、身につまされるところもありますが、途中でやめるので、続きが読みたい! と手がのびる作品です。


ほかには、定番として『ナルニア国物語 ライオンと魔女』(C・S・ルイス 岩波書店)の、ルーシーが衣装だんすからナルニア国へ踏み出してタムナスさんに出会うシーンは、みんなで味わう喜びが感じられる作品ですし、『ほらふき男爵の冒険』(ビュルガー編 偕成社)なども聞いて楽しいおはなしです。これからもよみきかせに向く名シーンを発掘していきたいなと思っています。

東京学芸大学附属竹早小学校司書 宮崎伊豆美

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