涼を求めて怖いお話

2021-07-01 11:14 | by 中村(主担) |

 「なにか怖い本ありませんか」
 きっとどこの学校でもよく聞かれる質問かと思います。
 子どもたちは怖いお話が大好き。たとえ読み終えてから後悔して、学校のトイレでつい個室ドアの上を見上げることになろうとも、お風呂で髪を洗っている時に何度も振り返ってしまうことになろうとも、怖いお話の磁力に抗えないのです。
 さてさて、もうすぐ夏休み。夏の暑さもスッと忘れる、怖~いを読んでみませんか。中学生の「もっと怖い本を!」という希望にも耐え得るであろう1冊をご紹介します。


  『鬼談百景』小野不由美著
    (メディアファクトリー 2012年/
     文庫:KADOKAWA 2015年)


  事故が続く校舎の窓を指さしている銅像。
  閉めても閉めても少しだけ開いてしまう
  クローゼット。誰もいないはずの障子の
  向こうから今まさに穴を開けている指…。
  ジワジワと背筋を這う怖さを味わえる、
  99話の短編集。 
 



一つひとつのお話はどれも短く、よみきかせにぴったりです。どのお話も、大きな事件やものすごい怪異が襲ってくるわけではなく、静かに淡々と語られます。違和感や恐怖の正体が解決されないまま物語が終わっていく・・・だからこそ余計に怖くてゾワッとした余韻が残ります。
 
 白状しましょう。怖くて私は全編は読めませんでした・・・。



 ほかにも、生徒に人気の辻村深月さんの短編怪異集『きのうの影踏み』、漱石の不気味かつ幻想的な短編集『夢十夜』など、短くてよみきかせ向きの、中学生にお薦めのお話で、暑い夏を涼やかに乗り切ってください。

 
 『きのうの影踏み』辻村深月著(KADOKAWA)2015年

   幼い息子が突然言い出した「だまだまマーク」の
   意味するものとは。(「だまだまマーク」)
   ナマハゲを見てみたいという友人を連れて秋田に
   帰省した私が味わった戦慄。(「ナマハゲと私」)
   日常に潜む得体の知れない何かが読み手の恐怖を
   煽ります。




 『夢十夜』夏目漱石著(集英社文庫:1992年)
   
   特に「第三夜」が怖い!
   夜道を歩く男が背負っているのは盲目の我が子。
   見えぬはずのものを次々と言い当てる子どもを
   恐ろしく感じた男は、子どもを置いて逃げようと
   考え始めるけれど…。
   文豪らしい、格調高い文でつづられた10話の
   短編小説です。





              (東京学芸大学附属竹早中学校 司書 中村誠子)

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