手島圭三郎さんの仕事

2021-11-10 09:39 | by 松岡(主担) |

 先日テレビで木版画絵本作家の手島圭三郎さんの創作現場に密着したドキュメンタリー番組を見ました。
 本校図書館でも手島さんの絵本を所蔵しています。木版画独特の光と影、北の大地に生きる動物たちの生命力あふれた姿はどれも美しく、また、見開きいっぱいに描かれた自然の様子や、簡潔な言葉で綴られた文章は読み聞かせに適していて、私も折に触れて子どもたちへの読み聞かせに利用してきました。

 番組内で今年(2021年)の4月に刊行された作品が手島圭三郎さんの最後の絵本作品だということを知りました。40作目を機に創作活動に幕を下ろすことを決意されたそうです。

『きたきつねとはるのいのち』
手島圭三郎/著・文
絵本塾出版 2021年




 3月、まだ雪深い北海道の大地をきたきつねとともに春の訪れをたどっていく物語。様々な生き物の様子から春が近づいていることを感じられる作品です。

 すてきな絵本は1ページ1ページを額装して飾りたくなるような気持ちになります。作者が込めた魂がすべてのページから感じられます。手島さんの作品はまさにそのような気持ちになる絵本で、開くと一刀に込められた力強さと温かさがどのページからも伝わってきて、取り組まれる際の仕事のエネルギーは計り知れないものだということがうかがわれます。

 多くの絵本作品にも触れたいところですが、こちらでは手島圭三郎さんの歩みを知ることができる2冊をご紹介します。
〈左〉
『手島圭三郎全仕事』
「手島圭三郎全仕事」編集委員会/編
絵本塾出版 2017年

〈右〉
『北海道の大自然と野生動物の生態をモチーフに絵本創作法を語る』
手島圭三郎・川嶋康男
絵本塾出版 2019年



 どちらも作品づくりの舞台裏を垣間見ることができますが、『手島圭三郎全仕事』では絵本の表紙絵から作品そのものまで再掲されていて、作品集としても見ごたえのある一冊です。
 『北海道の大自然と野生動物の生態をモチーフに絵本創作法を語る』では絵本づくりの構想から仕上げまでの過程が丁寧に紹介されていて、手島さんの人物像や作品へかける思いなども知ることができます。

 作品が生まれる背景や、作者の思いを知ると、読み聞かせの時に何かしら深みが増すような気がします。絵本と一緒にお楽しみください。
(東京学芸大学附属小金井小学校 司書 松岡みどり)

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