新しい門出に向けて
2016-05-02 23:33 | by 村上 |
3年前、一冊の本と出会いました。
『ぼくたちはなぜ、学校へ行くのか。』石井光太著 ポプラ社刊
この本を手にしたとき、ふと、数年前の学校図書館での出来事が思い出されました。当時勤務していた中学校で、ため息混じりに生徒が言うのです。
「何で勉強せんならんが?」(なぜ、勉強をしなければいけないのか?)
「何で学校にこんならんが?」(なぜ、学校に来なくてはいけないの?)
小学校時代より勉強は難しくなり、心の成長もあいまって、いろいろ考える事も増えてきてふと口をついた言葉だったのでしょう。そんな生徒の愚痴を聞き、はげまし、色々な本も紹介していたものでした。
この本は、当時私が色々言葉を尽くして言いたかった『自分の考えをしっかり持ち、生きていく大人になるために学校がある。』という事がきちんとまとまって表現されています。時間を巻き戻して、当時の生徒に読ませたく思いました。
かつての中学生には伝える事はできませんが、これからの中学生にはできる!そう思い、6年の担任に頼み込み、読み聞かせの時間を取ってもらいました。児童には、以前の中学校での生徒とのやり取りを話し、「なぜ?と思ったときには、この本を思い出してほしい。」というメッセージを添えて読み聞かせを行いました。
そして、今年もこの本を読み聞かせする予定を入れてもらった1月、偶然公共図書館で見つけたこの本も、長年私が子供たちに贈っていたメッセージにぴったりの本でした。
『たくさんのドア』アリスン・マギー著 主婦の友社刊
これも同じく中学校勤務のとき、子供から大人になりつつある生徒の危うい行動を牽制するために、「人生にはたくさんの扉がある。その扉は一度開いたら二度と閉じない。慎重にね!」というメッセージを発信していました。そして、私の思いを何かうまく表現されている本は無いものかとずっと思っていたものでした。まさしく、わが意を得たり! 私が、行動にブレーキをかける表現で使った扉を、未来への限りない可能性へのドアとみなしたこの本は、新しい門出を寿ぐにぴったりでした。
今年の卒業生には、この2冊を読み聞かせしました。
さて、この本の話には後日譚があります。
『たくさんのドア』は学校に所蔵しておらず、校長先生も絶賛され、学校を挙げて即購入しようという空気になりました。しかし、絶版。古書店にもなく、直接出版社の在庫を確認しましたが全く無し。こんな素敵な本がなぜ版を重ねることなく絶版になったのか、公共図書館でも所蔵している館は少なく、富山市内の小・中学校に確認しても所蔵している学校は10校を切った状態でした。
出版社のカラクリは分かりませんが、翻訳をしたなかがわちひろさんに問うたところ、なかがわさんも保存用の1冊しかもっておらず、「よい本が売れるとは、かぎらないのですよ。いやむしろ、へんな本が売れて、よい本は売れないかも。」というお返事が返ってきました。
素敵な本です。
是非に復刊を!ということで、復刊ドットコムにリクエストをあげました。
このサイトをごらんの皆さんにも、この本の存在を知っていただきたいと、記事を書かせていただきました。賛同いただけたら、ぜひ復刊ドットコムにリクエストをお願いします。