パパ・ママのための絵本の会
2018-12-07 09:31 | by 松岡(主担) |
読みきかせの会
「パパママのための読みきかせ会〜大人も心のケアしませんか〜」
東京学芸大学の特別開発研究プロジェクトで活動している子育て支援の研究の一環(※プラットフォームプロジェクト)として附属小金井小学校で保護者の方々への読みきかせの会を実施しました。
日時:平成30年11月16日(火)
10:30〜12:00
12名(申し込み14名)の保護者の方々にご参加いただきました。
内 容
・アイスブレイク絵本紹介:養護教諭 佐藤
・BOOKトーク&絵本のある子育て:
スクールカウンセラー 迎
・パパママのための読み聞かせ:図書館司書 松岡
・おすすめ本の紹介:絵本の展示とリスト紹介
佐藤牧子教諭が紹介した本
『あなたがとってもかわいい』
みやにし たつや/作・絵 金の星社
子供が生まれたときは、健やかに育ってくれることを願い、日々の子供の成長に喜びやいとしさを感じる方は多いと思います。しかし子供の成長とともに、いつしか親の期待も膨らみ、もっと成長してほしい、もっと頑張ってほしいという気持ちが膨らんでしまいます。その期待は、ときに子供への過度なプレッシャーを与えてしまったり、自分が自分であることを肯定できる機会を奪ったりすることでもあります。
赤ちゃんが笑っても、泣いても、怒ってもどんなときも「かわいい」と思える瞬間があります。「小さい頃は可愛かったのに」というフレーズを日常会話で耳にしますが、小さい頃だけだったのでしょうか?
子供が成長して、大人顔負けの意見を言ったり、反抗的な態度をとったりしても、「あなたがかわいい」という想いは、ずっと変わらないのではないでしょうか。そしてその親の気持ちが時々、子供へ伝わらない時もあります。
この絵本を小学校の子供たちに読みきかせすると「お母さんは、もう自分のことをかわいいと思っていない」などという声が聞かれるときもあります。でも実際にはそうではありませんよね。毎日、一緒にいて心が通じ合っていると思っていても、伝わらない「想い」があるかもしれません。この絵本を通して家族への想いが素直に伝えられたら、きっと大切な時間になるのではないでしょうか。
この絵本は子供への普遍的な想いを気づかせてくれる一冊です。保護者の方々と、「あなたがいちばんかわいい」という気持ちを共有して、これからの子育へのパワーをチャージする時間にしたいと考えて選びました。
※PLATFORM プロジェクト
私たちの子育て環境は、核家族化、学力格差、経済的問題、ソーシャルネットワークを含む複雑ないじめなど、様々な問題があります。また、子育てを取り巻く様々な問題をどこへ相談していいかわからない方もいます。
PLATFORMプロジェクトは、附属学校園という特殊な環境で、子育ての悩みに対する改善に向け、多くの人(家庭・学校・大学・関係機関など)と共有し、ICTを活用した子育て支援を目的に活動しています。
迎美保SCが紹介した本
『14ひきのあさごはん』など14ひきのシリーズ
いわむらかずお
童心社
いわずと知れた名作です。14匹のねずみのきょうだいと両親、祖父母との美しい里山での生活を描いたこの絵本は、田舎暮らしをしたことのない人にとってもなぜか懐かしく感じられます。14ひきのきょうだいがそれぞれどこで何をしているのか子どもと探したり、何よりその美しく描きこまれたダイナミックな四季折々の自然の中のねずみたちの姿は、いつまで眺めていても飽きることはありません。まさに心豊かになる絵本の世界です。
『しろうさぎとりんごの木』
石井睦美/さく 酒井駒子/絵
文渓堂
『ビロードうさぎ』や『よるくま』で有名な酒井駒子さんの描くしろうさぎがとても愛らしい一冊です。さらっと読んでしまうとなんの変哲もない、子うさぎの一日です。けれども、愛らしいしろうさぎと、しろうさぎの小さな成長と冒険をそっと見守るお母さんの姿は、毎日の何気ない日常のなかで感じることができるはずの幸せを、ふつふつと思い出させてくれます。
『あんぱんまん』
やなせたかし
初版1979年版 フレーベル館
2013年に亡くなられた作者のやなせたかしさんが、トーク番組で語っておられたのを聞いて改めて手に取りました。子どもたちにおなじみのアニメのあの姿ではないあんぱんまんです。「ヒーローは決して格好のいいものではない、正義のために戦い深く傷つくものだ。現代のわれわれが戦わなくてはいけないものとはなになのだろう」という作者のあとがきの言葉が胸に染みます。筆者が以前小学校で5年生にこの本を読み聞かせた時に、最初は照れてふざけていた子どもたちが、最後のあとがきでしーんと静まり返ったことを思い出します。
幼稚園教諭の経験を経て心理学を学び直し、主に子どもとその親を対象とする仕事をしています。自分の幼い頃の様々な思いをたどるように、また図書館の子どものコーナーから目に付くものを手当たり次第に借りてきては、読み聞かせをしてきた我が子たちも、今はすっかり大人になりました。けれども、私の中の絵本への思いは終わることなく、時には形を変えながら私の中に豊かに流れています。
先日勤務先のひとつである小学校で、保護者の方々と共に絵本を楽しむ機会をいただきました。小学生になり、絵本の読み聞かせの機会はほとんどなくなっても、絵本はあなたの人生を彩り豊かにし、時には思うに任せぬ子育てをそっと助けてくれますよ、とお話しさせていただきました。参加してくださった方々が、絵本と再び出会い、心を温めてくださるようにと、何冊かの絵本をご紹介しました。有名な絵本ではありますが、心理士の視点からそのうちの数冊をここにもご紹介させていただきました。
ここに紹介できたのはほんの一部ですが、もっと深くお知りになりたいという方々のために、以下の2冊をご紹介します。絵本を選び、読み進めるための手助けとなる本です。
『絵本の力』
河合隼雄、松居直、柳田邦男
岩波書店 2001年
『絵本のよろこび』
松居直
NHK出版 2003年
心理学者の河合隼雄氏は、深層心理や子どものこころのことを絡めて絵本を語っておられます。ノンフィクション作家の柳田邦男氏はお子さんの死をきっかけに絵本の世界に出会い救われたといいます。松居直氏は、世界的にも評価の高い「日本の絵本」の礎を作られた方です。私自身もこれらの方々の絵本への思いに熱く共感しつつ絵本をひろげてきました。
絵本は、家事育児に忙しかったり、長い文を読むことさえできないほど疲れていても、その心をふわっと慰め、染み込む力を持っています。カウンセリングのように直接働きかけるものではなく、そういった形でのひとつの「なぐさめ」もまた大切にしていきたいと考えています。
(東京学芸大学附属小金井小学校 スクールカウンセラー 迎 美保)
司書・松岡が読み聞かせをした本
『はなのすきなうし』
マンロー・リーフ/作 ロバート・ローソン/絵
光吉夏弥/訳
岩波書店
司書の立場からどんな絵本を薦めたら良いか、なでしこ図書館の蔵書ともにらめっこをしてあれこれ絵本を選んでいるうちに「子どもの成長を応援する本」をテーマに紹介したいと思うようになりました。
小学校時代はついこの間まで手をつなぎ、目が離せなかった1年生から、大半のことは自分一人ですることができ、時には大人顔負けの言動や行動をする6年生と成長著しい時期です。親としても子どもとどう接して良いのか迷いながらの子育て期ではないかと思います。
少し距離を置きながらも大切に見守り、応援できる親でありたい。そんな思いのこもった本を選び紹介しました。
パパママへすすめる本.pdf