6年生への読み聞かせ

2019-06-10 20:54 | by 富澤(主担) |

様々な活動で忙しい高学年は、どうしても定期的なクラスでの来館、「図書の時間」の確保が困難になり、貸出冊数も目に見えて落ち込んでしまいます。

それでも、今年度は6年生の国語の先生が、月に一度は「図書の時間」を設けてくださることになりました
(当校では、4年生から専科制をとり、一人の教員が学年全ての国語を受け持っています)。

「内容は任せるので、何か6年生のスタート時期にあうものを読み聞かせしてください」との、ありがたくも難しいご依頼でしたので、それならば、と『からす たろう』を全クラスで読み聞かせしました。

 

『からすたろう』
やしま たろう文・絵 偕成社

小柄でちょっと変わった少年は、村の学校に入学以来、ちび、と呼ばれのけものにされてきた。けれども、雨でも嵐でも、休まず通い続け、6年生のとき、その才能を見抜く先生に出会う。学芸会で、ちびは自分にしかできない出し物を披露し・・・・・・。

 


 


この本は、紹介する者がいなければ、まず動かない本と言えるでしょう。
正直、私も、この表紙と題名の情報のみでは、自分から手を伸ばすことは考えられません。
しかし読めば、一歩間違えると感傷的で教訓臭い内容になってしまいそうな難しい題材を、実にうまく表現していて、深く心に残る作品です。
絵も、ほのかな明るさのなかにユーモアがにじみ、「ぴったりだ、これ以上はない」と読み返すほどに思えてきます。

 

題名に「なんだろう」とニヤニヤしていた子どもたちも、内容が明らかになるにつれ、神妙な顔つきとなり、久しぶりの読み聞かせにも、最後までしっかりとついてきてくれました。

すぐに何か反応があったり、盛り上がったり、といった本ではまったくありません。
最悪あきてザワついたり、変に茶化すようなことがあったり、といったことも少し覚悟していました。
しかし、読み聞かせの後記入してもらう読書ノートでも、★を3つ(最高評価!)つけてくれた子が少なからずいて、「本と子どもを信頼して良かった」と思える結果となりました。

 

第2回目は、日光への移動教室にからめ、『平家物語』から「那須与一」の登場する段を、原文の朗読を交えつつ紹介しました。

与一が一度辞退しようとしたのに、義経にプレッシャーをかけられ、やむなく条件の決して良くないなか、神に祈って・・・といった状況を語るうちに静まり返り、その空気にこちらがのまれそうになるほどでした。

最後に、『怪談』の「耳なし芳一」に言及して本を紹介すると、やはり「怖い話」の触れ込みに心惹かれてか貸出につながりました。
しかし、あるクラスでは、読書ノートへの記入の際、「著者」欄に「那須与一」と書く子が複数いて、「一体何を聞いていたの!?」と、国語の先生と顔を見合わせて苦笑してしまいました。

『怪談―小泉八雲怪奇短編集』(偕成社文庫)
小泉 八雲作 / 平井 呈一訳 偕成社

 







 
高学年への読み聞かせは、回数が少ないだけに、力が入りすぎて空回りする危険が大きく、まだ、どのレベルのものを、どう紹介すれば良いのか、試行錯誤を繰り返しているところです。
これからも、目の前の結果にこだわりすぎず、「これぞ」と思える作品を紹介していきたいと思っています。
                        
(学芸大学附属大泉小学校 司書 富澤佳恵子)
                                   


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