絵本で故事に触れる

2019-12-09 18:18 | by 富澤(主担) |

故事成語を学んでいる4年生に、

 『三国志絵本 空城の計』

 (羅 貫中原作/ 唐 亜明 / 于 大武絵) 
 岩波書店       






を読みきかせしました。
蜀の国に、「三顧の礼」をもって迎えられた軍師、諸葛亮(孔明)の活躍を描く『三国志絵本』のシリーズの一冊です。この本では、「泣いて馬謖(ばしょく)をきる」原因となった「街亭の戦い」と、わずかの手勢で魏の大軍と対峙しなければならなくなった孔明の見事な作戦が、時代の雰囲気を伝える絵とともに表現されています。

 この本の読み聞かせの前に、常連の4年生の女の子から、「こんど国語で故事成語をやるから、読み聞かせでも故事成語を取り上げたら?」と、こちらの作戦を見透かしたような提案をもらっていました。しかし、良いアイディアが浮かばず塩漬けにしていたところ、果たして、4年生の国語の先生から、「一人一つ故事成語を選んで、ポスターを書いて紹介する授業をするから、資料を用意してほしい」との依頼を受けました。用意した資料の実際の使われ方を見るために、授業を見学させてもらうと、故事成語と、その意味や使い方を調べるのみならず、故事成語のもととなった「故事」にも注目させよう、という意図のある授業であることがやっとわかりました。

 「なるほど、何か「故事」を紹介することを考えれば良いのか」とは思ったものの、『論語』や『史記』といった中国古典は、なかなか、小学4年生に馴染のあるものでもなければ、小学生向けの資料もあまりない分野です。『三国志』ならば何かあるのでは、と棚を見まわしていたところ、ちょうどよい本が見つかったのでした。シリーズの他の本も紹介したので、それぞれ借りてがつき、貴重な提案をしてくれた女の子は、読み聞かせのあとでシリーズの本に予約を入れてくれました。

 授業のために本を集めるなかで、故事成語と意味までは載せていても、「故事」をきちんと載せている資料が少ないこと、「ことわざ」や「四字熟語」、「慣用句」と一緒に一つの本にまとめられていて、子どもたちをミスリードしてしまう資料も多いこと、あまりにも本格的すぎることを懸念しながらも、大急ぎでお隣にある国際中等からお借りした『故事成語名言大事典』(鎌田正, 米山寅太郎著、大修館書店)が、授業の目的にかなう資料として重宝だったことも見え、授業を見学させてもらえたのは大変有意義でした。

【シリーズの他の本】
 『七たび孟獲をとらえる』
 (羅 貫中原作/ 唐 亜明 / 于 大武絵)    
 岩波書店

  


 『十万本の矢』
 (羅 貫中原作/ 唐 亜明 / 于 大武絵)    
 岩波書店



(東京学芸大学附属大泉小学校 司書 富澤佳恵子)

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