今月の学校図書館

こんなことをやっています!

東京都目黒区立五本木小学校図書館

2020-07-01 13:21 | by 村上 |

   今月は、昨年度・今年度「持続可能な社会づくりに向けた教育推進校」に指定された目黒区立五本木小学校における図書館の取組について、学校図書館支援員の花川智子さんに執筆いただきました。6月号の『学校図書館』(学校図書館協議会発行)にも、実践報告が掲載されていますが、あわせてぜひお読みください。
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 目黒区立五本木小学校は、東急東横線の祐天寺駅と学芸大学駅の中間にあり、東横線に乗っていると鮮やかな緑色の校庭と3階建ての校舎が車窓に見えてきます。児童数約400名、学級数は12クラスの学校です。目黒区内の公立全小中学校の学校図書館には、目黒区教育委員会から有償ボランティアとして任命された学校図書館支援員が各1名配置されています。

 五本木小学校は、約15年前からユネスコスクール加盟校の一つであり、教育目標に「持続可能な社会の実現のために行動できる将来の担い手となる子どもを育てる」とあり、~命のバトンをつなぐユネスコスクールの子~を学校理念としています。

 平成31年度と令和2年度は、東京都教育委員会から「持続可能な社会づくりに向けた教育推進校」の指定を受け、従来からESD(持続可能な開発のための教育)の実践を通して「学びをつなげ広げ 深める児童の育成」を目標としていましたが、さらにSDGsの視点に立った主体的・対話的で深い学びを通して、持続可能な社会づくりに向けた教育を全教科にわたって推進しています。SDGsとは、2015年9月の国連で採択された2030年までの持続可能な開発目標で、世界を変革するための具体的な17の目標が掲げられています。ここでは、昨年度行った学校図書館の取組みをご紹介します。


1.毎月変わる図書館掲示は、SDGs特集に!

 この研究に対して、学校図書館でSDGsを理解できるような絵本の収集の依頼があり、学校図書館支援員としてどう連携していくのか迷い、東京都立多摩図書館の児童青少年資料担当からレファレンスサービスを受け、どのような本が適しているのか確認しました。また、ESDやSDGsの外部講師をお招きした校内研修会に共に出席したり、SDGsの一般イベントなどに参加して理解を深めるよう努めました。

 次に取組んだのは、SDGsの本の紹介方法の工夫です。1冊の本にSDGsのゴール1つを結び付けるという形で行うつもりでしたが、SDGsの特徴として、それぞれの目標は連鎖しているので、複数の目標を掲示で作ることにしました。するとSDGsの各目標はそれぞれ17色のアイコンがあり、掲示物が大変カラフルで目をひくものとなりました。毎月のテーマの設定は、時事的なことがらや各月の校内目標、食育、防災イベントなどから選び、図書館ボランティアの保護者の方たちと一緒に作成しました。
 (←写真1 図書館入口)


2.全校おはなしレストラン 2019年度のテーマは、“みんなで考えよう!今の地球、未来の地球”

 五本木小学校では、年に2回、教員が本の読み聞かせをする「おはなしレストラン」というイベントがあります。あらかじめ教員が選んだ本をメニュー表に見立てて作成し、子供たちは希望のところに聞きに行くことになっています。毎回、テーマを決め、選書しているのですが、昨年度は、「持続可能な開発(sustainable development)」をわかりやすくして、「みんなで考えよう!今の地球、未来の地球」としました。事前に、関連するSDGsの目標がわかるようにアイコンを付せんではさんだ絵本を数十冊用意し、ある程度テーマに沿った本を選びやすくしておきましたが、自分で本を探した先生もいました。


(←写真2 おはなしレストラン メニュー)

 

 

 







 

3.本の紹介、ブックトークにもSDGs

 SDGsは、一つの目標を考える時、おのずと他の目標がつながって見えてきて、それぞれが連鎖していることが特徴です。そして、各学年、各教科、各単元の学習でもSDGsの視点に立って目標を見つけることができます。例えば、4年生の「くらしをささえる水」の学習のためのブックトークでは、手渡しするブックリストと黒板には、SDGsの目標のアイコンをつけて行うなど、単元に対応しつつSDGsの視点を取り入れた選書で行いました。

 また、図書の時間に本を読み聞かせをして、読後にSDGsの目標と本の内容についてグループで話し合いを行いました。はじめは1つだけの目標に結び付けていても、話し合ううちに、多面的、多角的に考えをすすめ、多くの目標につなげることができたグループもありました。
五本木4年水 BT.pdf

 











4.研究発表に向けての連携


 令和2年1月の1回目の研究発表の際には、毎月の掲示に使った書影とおはなしレストランで使わなかった本の書影を図書館の入り口上部に貼り付け、校舎渡り廊下には、SDGsアイコンと並べて絵本を展示しました。また、各学級前には、当日の指導案にあわせてSDGs関連本を展示しました。
(↓写真3 渡り廊下の展示)
 


 
 
   

5.今後に向けて

 この1年で、SDGsという言葉のついた本や気候温暖化、海洋プラスチックごみなどの環境に関する本の出版数は増えてきています。SDGsの内容は将来の地球の深刻な問題ばかりですが、低学年には、明るい未来を連想できるような内容のものを手渡し、高学年には、学習したことをさらに探求できるような内容の資料をそろえていきたいと考えています。
 今年度は、コロナ禍で図書館の活動はまだ始まったばかりですが、常に情報にアンテナを張り、図書館内では季節やニュースが感じ取れる掲示やしかけを作る一方、図書館から出て、児童と本の橋渡しをしたいと思っています。 


(↓写真4 春休みに作った掲示)



















  

(文責 目黒区立五本木小学校 学校図書館支援員 花川 智子)


   (編集部より) 学校全体で取り組む研究テーマに、学校図書館支援員が教員とともに関わることができると、年間を通して、子どもたちの学びの場を提供できる強みがあります。ところで、目黒区に配置されているのは、有償ボランティアの学校図書館支援員とあったので、もう少し詳しく伺ってみました。小学校の場合は、有償ボラティアが活動できるのは週に1回程度のため、以前は行事や単元にあわせて対応するのは難しかったそうです。それが、花川さんの場合は、兼務でスクールサポートスタッフとしても週3回学校に来るようになったことで、より学校内の状況がわかり、図書館の活動にタイムリーに反映できるようになりました。今は子どもたちにも、図書館の先生と認識してもらえているそうです。

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