今月の学校図書館

こんなことをやっています!

千葉県袖ケ浦市立昭和小学校

2020-10-08 09:07 | by 村上 |

 千葉県袖ケ浦市は、市制施行の平成3年度(1991年)以来、読書教育に力を入れています。市立小中学校にはすべて1校専任の学校司書が配置され、学校図書館支援センターがあり、図書の流通システムも整っています。授業の中で、本を読んだり、調べたりすることは日常の風景です。このデータベースにも学校図書館を活用した実践事例を提供いただき、第4回文科省事業報告会では、学校司書の和田幸子さんが当時勤務していた昭和中学校のチーム・ザ・学校図書館の皆さんに報告いただいています。
 コロナ禍のなかで、学校図書館も密を避けるために、活動を縮小せざるを得ない学校も多かったと思いますが、様々な工夫を凝らして学校図書館を活用している袖ケ浦市立昭和小学校の取り組みを執筆いただきました。



コロナウイルス感染予防対策を行っての学校図書館活動

袖ケ浦市立昭和小学校図書館

 袖ケ浦市立昭和小学校図書館は、館内が教室の3倍ほどの広さがあるので、児童が距離を取って座ることが可能です。そのためコロナウイルス感染予防対策を行いながら図書の時間(各クラスに割り当てられている学校図書館と学校司書を優先して使える時間)を日課表通りに実施することができています。

 6月からの授業再開前に司書教諭と学校司書とで相談して、4人用・6人用の机も二人掛けとし、足りない机は長机や教室で使っている机を準備して、1クラス全員が同じ方向を向いて、間隔をあけて椅子に座ることができるようにしました。
 読み聞かせや活動の説明には、実物投影機を使ってスクリーンに大きく映して見せるように準備しました。(写真右上)

 館内では大きな声を出さないように、返却や貸出の際、これまでは「借ります。お願いします。」「ありがとうございました。」等あいさつを習慣づけてきましたが、あいさつの言葉のかわりに手続きをしてくれる先生の目を見て黙礼をするようにしました。(写真右下)
 また活動のはじめや終わりにはオルゴールを鳴らして、合図するようにしました。

 児童は学校図書館へ来る前に、石けんで手を洗います。館内に入る時は黙礼して入り、決められた席(1年間固定)に静かに座ります。あいさつの後各自が返却する本を出し、担任、学校司書が本の表面(保護用カバーをかけてある部分)を消毒していきます。

 指示された列から、カウンターに間をあけて5人まで並び(カウンターに1・2・3・4・5まで番号をつけています)、本を返却したら、決められた場所に本をしまい座ります。

 その後、低学年には本の読み聞かせを行い、静読タイムに続いて、本を借りる手続きを行っています。

 中学年・高学年は、本の返却・貸出を済ませた後、その時間に行う情報学習や活動について説明を行い、その後、図書を活用した活動を行っています。

次に3つの事例を紹介します。
【1】1、2年生に読み聞かせ・素話の実践

 実物投影機を使っての読み聞かせは集中して聞けるかと心配しましたが、電気を消して自立式のスクリーンを出すと、子どもたちは興味津々「今日のおはなしは何かな?」と楽しみに待ってくれています。(写真左上)

 1年生に読み聞かせした『ありこのおつかい』(いしいももこ 作 福音館書店)では、ありのありこがとても小さいので普段の読み聞かせでは絵が見えない
子もいますが、大きく写しだされた画面を見せると「ありこがあんなところにいるよ」と声が聞こえてきます。全員に絵がよく見えて、読み聞かせを楽しんでいる様子が感じられました。

 素話も透明マスクを使って実施しましたが、離れた距離でもお話を楽しめることがわかりました。

 次の静読タイムでは、列ごとに本を選んで席に戻り、各自本を読みます。オルゴールの合図で一列ごとに、順に本を借りる手続きを行います。借りた児童は、読書記録カードに借りた本の書名などを記入して待ちます。全員が本を借りたらあいさつをして図書の時間を終了します。

(写真左下 読書タイムは静かに読書)



 
【2】広島「原爆の日」(8月6日)前後にブックトークを行う

 4月・5月に休業が続いたので今年度は夏休みが8月8日からとなり、普段は夏休み中である8月6日広島「原爆の日」には学校も、図書の時間もありました。

 そこで8月4日から8月7日の図書の時間では、1・2・3年は戦争絵本の読み聞かせと戦争関連図書の読書を行いました。4・5・6年は袖ケ浦市郷土博物館からお借りした太平洋戦争
時の鉄かぶと・巻脚絆・軍服・雑誌などを紹介し、ブックトーク「日本に戦争があった・・・」を行いました。さらに広島・長崎での「原爆の日」の新聞記事を紹介し、75年前の8月6日広島に原爆が落とされたことを話し、原爆の恐ろしさ、平和の大切さを考える時間を持つことができました。
(写真右上 鉄カブトの紹介 右中 出征時の写真を見る 右下 戦争関連図書を読む)



読み聞かせした本
1年『えんぴつびな』(長崎 源之助 作 金の星社)
2年『かわいそうなぞう』(つちや ゆきお 文 金の星社)
3年『いわたくんちのおばあちゃん』(天野 夏美 作 主婦の友社)

ブックトークで紹介した本
 『目で見る戦争とくらし百科4』(早乙女 勝元 監修 日本図書センター)
『太平洋戦争とくらし道具事典 戦争の記録』(宮部 精一 監修 金の星社) 
 『ポプラディア情報館 アジア太平洋戦争』(森 武麿 監修 ポプラ社)
『広島・長崎 原子爆弾の記録』
(子どもたちに世界に!被爆の記録を贈る会 編集 平和のアトリエ)
 『はだしのゲン』(中沢 啓治 作 汐文社)
『ヒロシマ消えた家族』(指田 和 著 ポプラ社)





  
 
【3】5年 新聞を活用した活動 (小学生新聞と大人の新聞の読み比べ)
 5年生は国語との連携で、新聞記事をスクラップして情報ノートを作成し、2紙の一面記事の読み比べなどの活動を行ってきました。

 さらに学校図書館にある毎日小学生新聞と毎日新聞を1部ずつ児童に手渡し、それぞれの特徴をワークシートに記入する活動を行いました。

 大人の新聞は政治、経済、国際、社会、くらし、地方版、詩歌・短歌の欄、スポーツ、テレビ、ラジオ欄、広告など記事が多く、ページ数が多いことに驚く児童が多かったです。小学生新聞は、1年生でも読めるように漢字にカナがふってあることやカラー写真が多いこと、日によって特集記事があることなどに気がつきました。

 また、テレビやインターネットの情報と新聞の違いについても考えて気がついたことをワークシートに記入しました。

(写真左上 広いスペースに新聞を広げる 写真左下 気づいたことをワークシートに記入する)







コロナ禍の活動を振り返って

 コロナ感染予防対策のために、グループで相談したり、隣に座っている児童と同じ本を読み合ったりすることはできませんが、離れて同じ方向を向いて座るようになったので、読書に集中できるようになりました。
 また机を増やしているので、各自が新聞や資料をゆったりと広げてみることができるようにもなっています。
加えて、貸出した本は、消毒しているため本が以前よりきれいにもなるというよいこともありました。
 夏休みに調べ学習(宿題ではなく自由な取り組み)を行った児童の作品に戦争をテーマにしたものが数点あったことも、原爆の日前後に戦争を紹介できたことが影響しているのではないかとも考えています。
 まだ制約の多い中ですが、今後もできる事を工夫し、司書教諭・学級担任と協力して、学校図書館での活動を行っていきたいと思います。

文責 袖ケ浦市立昭和小学校司書 和田幸子

編集部より
 和田さんは、2020年8月に、少年写真新聞社より、『主体的な学びを支える学校図書館;小学校・中学校の授業サポート事例から』を出版されました。袖ケ浦市で21年間、小学校でも中学校でも勤務された経験から、学校図書館の支援によって可能となった充実した授業や活動を紹介しています。巻末にはワークシートもついていて、すぐに役立てることができます。学校全体、市全体で取り組む読書教育の成果が感じられる一冊です。




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