今月の学校図書館

こんなことをやっています!

愛媛県新居浜市立 浮島小学校・金子小学校

2021-07-01 09:55 | by 富澤(主担) |

 今月は、愛媛県新居浜市で学校司書をしている寺田章代さんに、市内の全小学校に司書を配置している新居浜市の取り組みと、実際に勤務されている2つの小学校での活動の様子を、沢山の写真とともにご紹介いただきました。
 市内の司書が集まる拠点が用意されているのは、一人職場で孤立しがちな司書にとって、とても良い拠り所になり、司書同士の情報交換が、市内全体の学校図書館サービス向上へも資する優れた仕組みだと思います。
 それぞれの学校についても、NIEの指定校となっている浮島小学校での取り組みを、金子小学校での活動に繋げるなど、2校兼務の利点も生かしながら、力を発揮されている様子が生き生きと伝わってきます。(編集部)


(1)

 愛媛県新居浜市の学校司書です。今日は、新居浜市としての取り組みと、担当校について紹介します。新居浜市は、小学校16校に学校司書が配置されています。大規模校1校は専任、他は2~3校の兼務で、私たち会計年度任用職員が、週4日勤務しています。 

 私たちの拠点は学校教育課にあり、そこには学校図書館を担当する指導主幹やチーフがいて、相談事や取りまとめなどをしてくださっています。共有とはいえ、自由に使えるデスクや資料を揃えてもらい、教科書や指導書をはじめ、学校図書館に関する資料も予算化していただいているので、毎年購入することができます。

 夕方になると、何人かはここに来て、事務処理をしたり、他校の学校司書と待ち合わせをして、情報交換などをしています。

 また、研修費や消耗品費も予算化され、コロナ禍以前は、研修に参加したり、講師の先生方にお越しいただいたりしました。

 一昨年は、予算をつけてもらって、念願の「学び方ノート」を作成し、昨年度から図書の時間を充実させるべく各校で利用しています。

 

 



(2)新居浜市立浮島小学校

 担当校を紹介します。1学年20名前後の小規模校です。昨年度より、NIEの指定校になっています。教室では様々な取り組みがなされているので、図書館からも仕掛けてみました。
 図書の時間に みんなで新聞記事を読んだり、子ども新聞を自由に持ち帰って、自分の考えや意見、感想を書いてきてもらいました。書いてきたものは、必ず掲示して、他の学年にも目に留まるようにします。














 また、単元によって図書館の資料を利用するということが定着しているので、資料の依頼があったときには、学び方ノートなどを利用して、資料の使い方、情報の探し方などを提案しています。 

 

2年国語「スイミー」(光村)

 梅雨入りのころ『せかいいちおおきなうち』と『ぼくのだ!わたしのよ!』(ともに、谷川俊太郎訳/好学社)を読み聞かせしました。レオ=レオニのかたつむりとカエルが出てくる話です。翌週、レオ=レオニの作品の紹介を依頼されました。紹介する本を一度に並べ、ごく簡単なあらすじを提示して、子どもたちにどの本かを当ててもらいました。理由も発表してもらいます。

「あらすじにも、本の題名にもひとあし、という言葉がでてきたからです。」とか「あらすじに、ぼんやり、と出てきたけど、表紙のねずみもぬいぐるみのねずみも目がぼんやりしているからフレデリックだと思います。」などと発表してくれました。

 その後、教室貸し出しになりますが、ここで、終わりではありません。教室でもていねいによんでもらうために読書クイズをつけました。   
 3番の答えの選択肢には、教科書の後ろに掲載されている「ことばのたからばこ(じんぶつをあらわすことば)」(光村図書『こくご二上 たんぽぽ』、153頁)を使いました。

 












クイズの問題用紙と解答用紙です。10冊の本それぞれに、3問ずつクイズがあり、3番目の問いは全て「しゅじんこうはどんなせいかくだと思う?」となっていて、解答用紙に用意されている言葉から3つを選択します。(編集部)

3年国語「秋の楽しみ」

 先生と流れを確認します。図書の時間に先生がホワイトボードに書いて説明。











 今回は司書がワークシートを作成しました。書き方の説明と資料をそろえます。子どもたちは、先生にワークシートを確認してもらったら、はがきサイズのカードに書いていきます。

 あとは、私が、掲示できるようにレイアウトして貼り出します。どの季節でもできますね。

 





3年国語「食べ物のひみつ 教えます」

 調べる資料は取り揃えていますが、それだけでは調べられません。興味付けと何を調べるのかを明確にする導入をしました。食べ物がどんな材料でできているのかが書かれた本を読み聞かせたりブックトークをします。そのあとはクイズです。パタパタと巻いた紙をほどきながら、この材料はどんな食べ物になるのかを当ててもらいます。

 クイズが終わった後並べると、「材料」「おいしく食べるくふう」「食べ物」の流れがわかり、これを調べるということを理解してもらえたら、と思いました。
 








(3)新居浜市立金子小学校

 学年3~4クラスの市内では比較的大きな学校です。2年前に担当になりました。

 棚を見ると、9類がとても多い印象だったので、子どもたちの要求なのかしばらく観察しつつ、バランスを見直しました。テーマ展示なども自然科学を多く取り入れたり、実物を展示してみたりしました。

 この学校は、学び方ノートを中心に利用してくれているので、「目次とさくいん」「百科事典の使い方」「年鑑の使い方」「考えを助ける図」などを図書の時間にしています。クラス数が多いので、いかに教科単元の中に滑り込ませていくかが今後の課題です。  また、利用の後では、先生方が成果物を持ってきてくれるので、必ず掲示するようにしています。


 また、浮島小学校の新聞記事を利用する取り組みなどを提案したら、こちらの学校でもよく利用してくれるようになり、クラスによっては、新聞記事のワークシートをいろいろ準備してほしいとか、毎週図書の時間のはじめにやりたい、などと広がりを見せてくれました。


 







(4)終わりに

 4月当初に、6年生にしていることがあります。『風をつかまえたウィリアム』の読み聞かせです。そして、その後、「図書館は、○○が△△になるところ」の言葉を考えてもらっています。

このキャッチコピーは、言わずと知れた「図書館は、?が!になるところ」ですよね。

 この言葉を掲示していたら、ある先生が、「司書さん、ここにはなんて言葉が入るの?」と言われたんです。なるほど、それもいいかも、と思ってこの本を読み聞かせし、図書館の可能性を考えてもらうきっかけにしました。この少年ウイリアムは、来日もされましたね。   
  
ウィリアム・カムクワンバ文、ブライアン・ミーラー文、エリザベス・ズーノン絵、さくまゆみこ訳/さ・え・ら書房)

 図書館で出会った1冊の本が、人々の命を救い、絶望の中の彼の人生も切り開けたのです。毎年、子どもたちから、素敵なキャッチコピーが生まれます。

 そして、あの質問をされた先生(当時)は、今、私たちを応援してくださっている教育長の奥様なのでした。

 あふれる情報の中から、よりよく生きるための情報を見つけられるように、学校図書館も手助けしていきたいと思います。




(文責:愛媛県新居浜市立浮島小学校・金子小学校兼任 学校司書 寺田章代)


 本記事を執筆くださった寺田章代さんが、202182日に病気のため急逝されました。体調が万全ではないなか、丁寧に対応くださり、充実した良い記事を書いてくださいました。ご活躍の様子や成果を、これから本データベースでたくさん紹介できるものと、期待し楽しみにしていた矢先のこと、残念でなりませんが、そのお仕事の一端でもこのような形で紹介することができ、光栄に思います。改めて、寺田さんに感謝申し上げるとともに、ご冥福をお祈りいたします。


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